国土交通省福島河川国道事務所は、福島県の矢吹町・玉川村・鏡石町に計画している遊水地について、これまで2028年度としていた完成時期を5年後ろ倒しし、2033年度とした。
阿武隈川は2019年に発生した東日本台風により、堤防の決壊や越水が発生。周辺の家屋が浸水するなど甚大な被害が発生した。これを受け、堤防の整備や河道掘削など「阿武隈川緊急治水対策プロジェクト」が進められていて、このうちの一つとして遊水地の整備がある。遊水地は、“増水した場合に、低くしておいた堤防から川の水を溢れさせ、この場所に一時的に水をためることで市街地に流れ込む水を減らす”というもの。
福島河川国道事務所によると、当初2028年度の完成を目指していたが、現地で地下水の調査を行っていたところ、想定よりも水位が高い場所があることが判明。この部分を“深く”掘削することができないため、計画の貯水量を確保するために“広く”する必要が発生したという。また、土壌が軟弱でこのままでは堤防として使えず、対策を施す必要も出てきたなどとして、完成を5年後ろ倒しし「2033年度」に改めた。
プロジェクト全体の事業費も、当初の999億円から1,800億円に見直す。
遊水地の用地の取得は、2025年6月20日現在で49%の契約が完了していて、福島河川国道事務所は「当初の計画通り2028年度までの契約完了を目指す」としている。
福島河川国道事務所は「遊水地の完成が遅れるが、河道掘削や家屋の高台移転により、浸水リスクの低減は進んでいる」としている。