製造業の新たな挑戦です。電子部品製造の企業が一度閉店した長野県木曽町の宿場町の飲食店を復活させました。「ものづくり」から「まちづくり」へ。初めて飲食業に参入し地域を盛り上げたいと意気込んでいます。


旧中山道の福島宿。8月1日、風情ある街並みの一角に和食料理店「和庵 肥田亭」が復活しました。

手の込んだ品々が並ぶランチコースです。

スリランカ出身の客:
「20年間、日本に住んでるんですけど、見た目も香りも味も最高です」

客:
「地元のものにこだわって作られてるんだなって、『おもてなし』って感じ」

築200年近い古民家の店。もともと町の第三セクターが運営していましたが、2024年11月に閉店。空き店舗になっていました。


再オープンさせたのが手塚良太さん(39)です。

手塚良太さん:
「本当にこの建物はすごい建物なので、今回はまた料理のテイストもちょっと変えて、新しく挑戦ってところなんで非常にワクワクしてる状態です」

手塚さん、実は地元企業「テヅカ精機」の社長です。

テヅカ精機は、木曽町で電子部品の製造、組み立てを主力とする企業です。近年は、新規事業の立ち上げにも力を入れ、建設業やクリーニング業などに進出。従業員はここ10年で10倍に増え、今はグループ全体で150人が働いています。

飲食業界はまったくの「畑違い」でしたが、町からの声掛けもあり決断。2025年6月に飲食事業部を立ち上げ、準備してきました。

テヅカ精機・手塚良太社長:
「会社の理念として『ものづくりからまちづくりへ』っていうのを掲げていて、木曽の地域に雇用を見出すっていうのが1点。あとは木曽地域、かなりインバウンドが増えてるんですけれども、飲食店ももっと増えていかなきゃいけないんじゃないかなっていうのと、地元の人が気軽に来やすい、とか」


手塚社長:
「一番見ていただきたいのはヒノキの一枚板、自社製品で。とにかく木曽らしさを感じてもらいたいので、入り口にどんと置かせてもらいました。囲炉裏も昔のままの囲炉裏が残っています。上の梁もすごく立派な梁を使っていて。今回のポイントとしては、今まで壁だったんですけど、全部開きまして、オープンキッチンに」

歴史と情緒はそのままに、より一体感のある店に改装しました。


料理長を任された小園希美さん(36)。大阪出身で帝国ホテルなどで10年以上フレンチの腕を磨き、少し前までは白馬村で料理人として働いてきました。

肥田亭 料理長・小園希美さん:
「かわいがってもらって皆さんに成長させていただく、地域の愛される店を目指していきたい」

ランチコースのメインは信州牛のサーロインステーキ。

客:
「ひとつひとつがいいお味」


フロアを切り盛りする「若女将」は手塚社長の妻・百花さん。

肥田亭 若女将・手塚百花さん:
「また来たい、来てよかったと思っていただける店づくりを頑張っていきたい」

この日はクリーニング部門の従業員も厨房の手伝いに。

テヅカ精機の従業員:
「グループ会社が増えて、ついに飲食店がきて従業員としてはすごく楽しみ。皆さんの熱意に押されながら」


再オープン初日は手塚社長の経営者仲間も県外から駆けつけました。

北海道から:
「(手塚社長は)いろんなことにチャレンジして地域貢献、に尽きるんじゃないかな」

広島から:
「こういう人(手塚社長)がいるのを見て、他の人も、自分でもできるかなって思って(地域が)盛り上がっていったらいい」

午後5時、夜営業開始。

ディナーコースも自慢です。「先付け」は木曽ヒノキの弁当箱を活用。地元の商店がその日、仕入れた新鮮なお造りに、彩り豊かな旬の地元野菜、県内の工房で作られた生ハムなど。

(記者リポート)
「目にも楽しい前菜の中から一品、地場産のズッキーニの料理をいただきます。ズッキーニの甘みとアンチョビのアレンジがとても合っていておいしいです」

「季節の焼き魚」は、信州サーモン。

ステーキには「信州みそ」の薬味を添えて―。

和食店ですが、フレンチなどの要素も取り入れつつ、木曽地域や県産の食材を生かす料理を提供します。

肥田亭 料理長・小園希美さん:
「本当に『食材』にフォーカスをあてるというか、シンプルに『おいしいね』って言ってもらえるような料理をしようと思ってます」

地元住民は―。

町内在住:
「こういった形でいろんなお店ができてくれると町民としてもうれしい。長く続いていってくれればと思います」


肥田亭 若女将・手塚百花さん:
「ファースト タイム ナガノ?」

スイスから旅行中の家族も訪れ、刺身やステーキなどを注文しました。

スイスから:
「ベリーナイス!」
「オイシイ」
「木曽は『日本で訪れるべき場所トップ10』だとウェブサイトで見てきました。私は街道が気に入りました。静かで、とてもすてきな伝統的な建物があります」

「肥田亭」の建物にも興味津々―。

スイスから:
「本当にすてきです。スイスとは全然違います」


「ものづくり」から「まちづくり」へ。

手塚社長は、木曽ならではのおもてなしで企業も地域も元気にしたいと考えています。

テヅカ精機・手塚良太社長:
「木曽っていう地域が、自然と歴史と文化、この3拍子そろった地域ってなかなかない。飲食っていうのが、またグループを引っ張るきっかけの事業になると思うので、お客さまに愛されるお店づくりっていうのを、まず最初に目指していけたら」

長野放送
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