9月に入り、鹿児島県大崎町の焼酎蔵で芋焼酎の仕込みが始まった。一方、同じ焼酎蔵で仕込みが終わろうとしていたのがウイスキーだ。焼酎どころ、鹿児島でウイスキーと焼酎の製造が交錯する貴重な時期、その作業風景をのぞいてみた。
ウイスキー仕込みの最終盤

大隅半島の大崎町にある天星酒造では2022年11月からウイスキーの製造を開始。「菱田蒸留所」というブランド名でウイスキー生産に取り組んでいて、芋焼酎の仕込みと重ならないよう、前年の12月から9月にかけてウイスキーの仕込みを行うという工夫をしている。訪問した時はまさにその最終盤で、独特の色をした蒸留器でウイスキーの原酒を蒸留している最中だった。

原料となる大麦や麦芽の発酵も進み、発酵タンクも残りはあと2つとなっていた。この発酵液を銅でできた蒸留器にかけ、蒸留させると透明な原酒が出てくる。杜氏は出来上がったばかりの原酒について「いい原料とクセの味わいが出て、香りも立っている」と自信を覗かせる。
ウイスキーの蒸留作業は取材後の9月11日に終了、出来上がった原酒は樽に詰めて熟成させる。熟成期間は3年だ。

並行して芋焼酎の仕込みが始動

一方、ウイスキーを仕込む隣の建物では、既に焼酎の仕込みが始まっていた。この日も芋焼酎はタンクの中でブクブクと発酵が進んでいた。
天星酒造の中原優さんは「きのう仕込んだばかり。今、転換期。ウイスキーは9月までに仕込んで、芋が入る9~11月に芋焼酎を仕込む」と説明する。


ウイスキーと焼酎という2つの蒸留酒を製造するこのメーカーでは、9月はまさに転換期、
両方の製造工程が交錯する特別な時期だ。これから11月までは芋焼酎の仕込みが最盛期を迎える。
夏から秋へ。季節のうつろいは、お酒の仕込み作業からも感じることができた。