阪神優勝の裏で大阪・道頓堀川への飛び込み行為が横行した。大阪府警によると今回は29人が飛び込んだという。
飛び込んだ人は「“飛び込め”って感じになっていて」「阪神ファンではないです」と語るなど、阪神の優勝とは“縁遠い”と思われる人も。
川は大腸菌が多く「便器の水」に例えられる危険な環境で、市も自粛を要請している。
そして1985年に阪神が日本一になったときに初めて飛び込んだという落語家が取材に応じた。
「飛び込みは巨人ファンの自分への“罰ゲーム”だった」と明かし、「飛び込んだら危険です。絶対にやめてください」と呼び掛けた。

■道頓堀川に29人が飛び込み 阪神優勝と関係なさそうな人も…
2年ぶりのリーグ優勝を果たした阪神タイガース。
“史上最速での優勝”という快挙に関西の街は大盛り上がり!しかし、道頓堀川では危険な飛び込み行為が今回も横行してしまった。
カメラマンリポート:警察の制止を振り切って飛び込みました」「一回転して飛び込みました、危ない。
大阪府警によると29人が川に飛び込んだという。

警戒態勢が敷かれる中で一体、なぜ飛び込むのでしょうか。道頓堀川に飛び込んだ人たちの言い分はこうだ。
飛び込んだ人:やっぱね大阪盛り上げたいじゃないですか。
飛び込んだ人:せっかくやなと思って、危険意識はなかったですね。臭いっすけど、それだけっす。
飛び込んだ人:安全じゃないですか?みんな見守ってくれてるし。
(Q.阪神のファン?)
飛び込んだ人:ではないです。野球よくわからなくて。

■横山市長は日本シリーズに向け「やめて」 分析調査する専門学校の人は「便器の水」
飛び込まないよう求めてきた大阪市の横山市長は9日、日本シリーズで優勝した時に向けて再度注意を呼びかけた。
大阪市・横山市長:飛び込まないように措置も色々やって注意喚起しても、29名飛び込まれたのは本当に残念です。本当に危険な行為なのでやめていただきたいと思います。

■道頓堀ダイブは「便器の水の中に飛び込むようなイメージをしていただいたら」
道頓堀川への飛び込みはどのような危険が潜んでいるのか。20年以上前から毎年、道頓堀川周辺の水質調査を実施している日本分析化学専門学校の宮道隆教務部長に聞きいた。
日本分析化学専門学校 宮道隆教務部長:飛び込むということは当然水を飲んでしまったりとかいうことは普通に起こってしまうと思いますので。お腹を壊したりというような健康へのリスクが十分に考えられる。
先月の調査では100ミリリットルあたり200から5000個の大腸菌が検出されたということだ。
日本分析化学専門学校 宮道隆教務部長:例えば皆さんがプールで遊ぶとき、遊泳基準は大腸菌が検出されない、つまりゼロっていうことが基準になっているんですね。お手洗いの便器の水の中に飛び込むようなイメージをしていただいたらいいと思います。

■1985年の日本一の際は「飛び込み」確認できず
健康被害、そして事故にもつながりかねない危険な飛び込み行為。
2年前のリーグ優勝時にも26人。
そして2003年には、なんとおよそ5300人が。
1985年の日本一の際の関西テレビに残る映像では「道頓堀ダイブ」は確認できませんが、この時に飛び込みが起きたとされている。
あのカーネル・サンダースの人形も川に投げ込まれた。

■「誰が最初に?」調べてみると…
一体誰が最初に道頓堀川へ飛び込んだのか。この人なら何か知っているはず、と訪ねたのが、道頓堀商店会会長で、「串かつだるま」の代表・上山勝也さんだ。
道頓堀商店会会長「串かつだるま」代表 上山勝也さん:(初めての飛び込みは)1985年のタイガースの優勝、その時と思います。
(Q.一番最初に飛び込みを始めた人はご存じですか?)
道頓堀商店会会長「串かつだるま」代表 上山勝也さん:知らん、そんなん知らんわ。
しかし、上山会長が「この人なら知っているのでは」と、お好み焼き千房の中井政嗣会長に電話で聞いてくれることになった。
上山会長:関西テレビから依頼がありましてね。1985年に阪神タイガースが優勝した時に初めて道頓堀に誰かが飛び込んだ。誰が飛び込んだか中井さんご存じじゃないですよね?え!知ってんの?マジですか!
(Q.最初に飛び込んだのは?)
「お好み焼き千房」中井政嗣会長:桂福團治師匠の息子さんで、桂福若いうんですけど。

■“最初に飛び込み”桂福若さんとは
最初に飛び込んだとされる桂福若さんはどのような人物なのだろうか。
取材班はさっそく岐阜県に桂福若さんを訪ねた。
この日は、およそ40人の客の前で落語を披露していた。
桂福若さん(56):道頓堀の川あるんですよね。ほんまバンジージャンプと同じような気持ちですよ。(飛び込んだら)真っ暗で何も見えへん。顔に“べちょー”ってなんかついたと思ったら、それが『かっぱえびせん』の袋やったりしましてね…」
道頓堀ダイブの小噺で“ややウケ”している、この人が最初に飛び込んだとされる人物なのか。

■飛び込んだワケは“高校生同士の罰ゲーム”
(Q.道頓堀川に一番最初に飛び込んだと聞いたのですが本当ですか?)
桂福若さん(56):それはホンマのことなんですよ。
実はその時の写真が残っていた。1985年、阪神が日本一を果たした後に発売された週刊誌。
そこには大勢の阪神ファンが見守る中、手を広げパンツ1枚で道頓堀川に飛び込む当時高校生だった桂福若さんの写真が掲載されていた。
そもそもなぜ道頓堀川に飛び込もうと思ったのか。
桂福若さん(56):友達が『絶対に阪神優勝する』と。俺は『絶対に優勝するわけない』と。(友人が)『ほな優勝したらどうする?』と。『ほな俺は道頓堀川に飛び込んだるわ!』って言うたんです。日本一なったんですよ!ほんで、(友人が)『飛び込め!飛び込め!男に二言ないやろう』言うて。
飛び込んだワケは、高校生同士の罰ゲームだったのだ。
そして道頓堀川を訪れた桂福若さんは、橋の上に立ち、自分が飛び込んだという場所を教えてくれた。
桂福若さん(56):ここからなんです、ここ。ちょうど場所はここ、橋はかわってますよ。

■最初に飛び込んだのは「巨人ファン」だった
そして気になったことを聞いてみた。
(Q.阪神ファンじゃない?)
桂福若さん(56):ちゃいますよ!そやから『阪神が優勝するわけないがな』と。私が好きな選手は王貞治です。一番最初に飛び込んだ人間は、巨人ファンっていうことです。
その後、阪神が優勝する度、飛び込みが横行している現状について、いま何を思うのか。
桂福若さん(56):何も考えずに飛びこみましたけど、あれかて人に迷惑かけてたかもわかれへん。時代が進むにつれて、やはり罪悪感感じるようになりましたね。飛び込んだら危険です。絶対にやめてください。
品のある応援をするためにも、飛び込みのない道頓堀川にしていきたい。
(関西テレビ「newsランナー」2025年9月10日放送)
