岩手県花巻市では2025年夏の記録的な水不足により、実りの秋を迎えたものの稲穂に影響が出ている。農家からは「白い稲穂」「実が入っていない」との声が上がっている。収穫が始まった地域では、収量の減少と品質低下が懸念されている。一方で概算金は引き上げられたが、生産者は複雑な心境だ。コメどころとして知られる花巻市で2025年の作柄と農家の現状を取材した。

水不足の影響が顕著に

岩手県内各地ではコメの収穫が始まっている。花巻市の農業法人フロンティア上根子上では、9月4日から銀河のしずくやひとめぼれなどの収穫を開始した。しかし、水不足の影響を強く実感しているという。

コメの収穫が始まった岩手県内
コメの収穫が始まった岩手県内
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「出穂の一番欲しい時期に水が供給されなかった影響で、収量は取れていないし品質も昨年より良くないのが現状」と同法人の畠山拓也さんは語る。

花巻市・豊沢ダム
花巻市・豊沢ダム

県内有数のコメどころ・花巻市だが、2025年の夏は雨が少なく、農業用水を供給する豊沢ダムでは貯水率が1ケタ台の状況が続いた。7月から8月にかけては合計で14日間も断水が実施された。

「白い稲穂」に不安の声

農事組合法人「リアル」を営む新渕伸彦さんは、ひとめぼれ40haを栽培しており、9月20日ごろから収穫する予定だ。新渕さんも不順な生育に頭を痛めている。

稲穂の一部が白く身が入っていない
稲穂の一部が白く身が入っていない

「白いじゃないですか、これ実が入ってないです。これは水不足が明らか。今年はお盆のあたり降らなかったので、花が咲いたり実が入ったりする頃に水が一番欲しいが、雨も降らなかったが、ダムも水がなかった」と新渕さんは稲の状態を示しながら説明した。

概算金引き上げでも複雑な心境

2025年、JA全農いわてでは、農家に支払う前払い金である「概算金」を60kg当たり2万8000円と、2024年より9000円高く設定している。(2025年9月8日時点)

しかし、生産者の心境は複雑だ。

白い稲穂
白い稲穂

フロンティア上根子上の畠山拓也さんは「こういう概算金引き上げの時に、こういう天候で取れないのは非常に残念」と語る。

県南部に降りかかった記録的な水不足。稲の生育に大きな影響を与えたこの事態が、最終的な収量や価格にどれほどの影響が及ぶのか、今後も懸念が続く。

岩手めんこいテレビ
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