かぐや姫の物語の舞台は、実は静岡・富士市だったという説をご存知だろうか。 しかも富士市に伝わる物語は、全国的に知られる「竹取物語」とは異なる結末なのだ。 「かぐや姫が帰っていったのは、月ではなかった」。この謎を解き明かす!
富士市中央公園にかぐや姫の壁画
富士市で語り継がれているという「かぐや姫伝説」。それは一般的な「竹取物語」とは異なる結末だ。謎を解き明かすため、まず富士市中央公園へと足を運んだ。地元の人から情報収集だ。
公園内には、かぐや姫が描かれた壁画のある一画がある。この地が「竹取物語」と関わりが深いことがうかがわれる。

公園を散歩する地元の人に、竹取物語は富士市が舞台という説を知っているか聞いてみた。
富士市在住の人:
なんとなく知っています。小学生の頃に配布された、富士市の歴史について書かれた配布物で読みました

さらに富士市の比奈に「竹採公園」という場所がある、と貴重な情報も教えてくれた。
■スポット名 富士市中央公園
■住所 静岡県富士市永田町2丁目112
■問合せ 0545-55-3553
「竹採塚」はかぐや姫の住まい?!
情報をもとに、次に向かったのは、JR富士駅から車で北東に25分。「竹採公園」だ。

竹取物語の「取」ではなく「採」の漢字が使われているが、関連はあるのだろうか。公園入口の案内図には、かわいらしいかぐや姫のイラストが描かれている。さらに園内マップには「竹採塚」があるという案内文を発見した。
「竹取塚 高さ1.14m程の石塚。富士溶岩の上の自然石に『竹採姫』と刻まれている。富士市指定文化財。」
これは貴重な手がかりの予感。さっそく竹採塚へ向かう。

公園内を進むと、そこには息をのむほど立派なタケノコが顔を出していた。美しい竹林も広がっている。
物語の中で、おきながかぐや姫を見つけた光る竹が、今にも現れそうな雰囲気だ。その奥に、ついに竹採塚を見つけた。

富士市の指定文化財である竹採塚は、一番上に丸い石が乗せられていた。
その石をよく見ると、風雪に耐えた「竹採姫」の文字が、かろうじて読み取れる状態だった。
この場所は、かぐや姫と老夫婦が暮らしていた屋敷の跡地だと伝えられている。

富士市が「竹取物語」の舞台であったことを示す、歴史的な場所であることは間違いないだろう。
■スポット名 竹採公園
■住所 静岡県富士市比奈2085-4
■営業時間 3~9月 8:30~18:00 10~2月 8:30~17:00
■休園 木 年末年始(12月29日~1月3日)
富士山かぐや姫ミュージアムでさらに深掘り
そして、富士市には竹取物語をテーマとした博物館まであるのだ。さらなる詳しい情報を求めて訪れたのは、「富士山かぐや姫ミュージアム」だ。

竹取物語と富士市とのつながりについて話を聞いた。
富士山かぐや姫ミュージアム・杉本寛郎さん:
竹取物語は、日本最古の物語と言われていて、今から1000年から1200年ぐらい前に成立したと言われています

一般的なかぐや姫の話では、帝に求婚されたかぐや姫は、最後に月へと帰ってしまい、帝とは離れ離れになってしまうという筋書き。
しかし富士山かぐや姫ミュージアム・杉本寛郎さんは、富士市に伝わる「かぐや姫伝説」は、全国的に知られる竹取物語とは結末が大きく異なるという。
「月」ではなく「富士山」に帰ったかぐや姫
その物語は、富士山や浅間神社にまつわる伝説などを記した「富士山大縁起」に記されている。

富士山かぐや姫ミュージアム・杉本寛郎さん:
冒頭部分は竹取物語とかなり似ていて、竹から生まれたお姫様をおじいさん、おばあさんが育てると、とても美しいお姫様になりました
しかし、ここから富士市に伝わる竹取物語は、一般的なものとは異なる独自の展開を見せ始める。
ある時、都から来た帝の家来という人物が、おじいさんの屋敷に泊まることになった。

この家来は都に帰り、「かぐや姫という大変美しいお姫様がいました。ぜひ、帝のお后にされてはいかがでしょうか」と帝に報告する。
その知らせが富士市のかぐや姫の元に届くか届かないかの頃、かぐや姫はおじいさん、おばあさんとお別れをする。

なんと、かぐや姫は「私は帝の元に行くことはできません。私は富士山に帰らなければいけません」と告げたというのだ。
かぐや姫との別れを悲しんだ老夫婦や村人たちの涙は、やがて流れる川となり「憂涙川(うるいがわ)」と呼ばれるようになったと伝えられている。

現在でも富士市の中心部には、同じ読み方をする「潤井川(うるいがわ)」が流れ、「かぐや姫伝説ゆかりの地」の一つとなっている。
富士山かぐや姫ミュージアム・杉本寛郎さん:
富士山に帰ることになったかぐや姫なんですが、最後おじいさん、おばあさんに「私に会いたくなったらいつでも富士山に登ってきてくださいね。そこで私に会えますよ」と伝えたとされています
そして、かぐや姫は富士山頂の洞窟で神様の姿になった。浅間大菩薩が、人の姿になったのがかぐや姫だったと言われているそうだ。

かぐや姫と帝が迎える驚きの結末
富士市に伝わるかぐや姫伝説には、さらなる幸福な結末が用意されていました。
富士山かぐや姫ミュージアム・杉本寛郎さん:
この話には最後の結末がありまして、帝はかぐや姫を追いかけて富士山に登ります。山頂でかぐや姫と会うことができまして、2人は結ばれまして、2人とも洞窟の中に入っていって神様仏様になったというお話でございます

つまり、富士市に伝わるかぐや姫伝説は、月ではなく富士山が舞台となり、かぐや姫と帝は離れ離れになることなく、幸せに結ばれるという結末を迎えるのだ。
全国的に知られる竹取物語とは全く異なる展開に、初めての昔話を聞かされたような新鮮な驚きを感じた。月に帰るのではなく富士山に帰ったかぐや姫。その伝説は今もこの富士市で大切に語り継がれている。富士市を訪れた際には、ぜひこれらのかぐや姫伝説ゆかりの地を巡ってみてはいかがだろうか。
■スポット名 富士山かぐや姫ミュージアム
■住所 静岡県富士市伝法66番地の2
■問合せ 0545-21-3380
■営業時間 9:00~17:00
■定休 月 (祝日の場合は開館)
(テレビ静岡)