石破総理がきのう=7日、退陣を表明したウラには、「石破総理の話を1時間半聞いて『頑なな心』をほぐした」小泉農水相の存在がありました。
関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」に出演した政治ジャーナリストの青山和弘さんが解説しました。
【政治ジャーナリスト 青山和弘さん】
きょう=8日は総裁選の前倒しを求めるかどうかの署名が提出される日で、(「前倒しを求める」という意見が)過半数を超える勢いでした。
総裁選が前倒しになれば、(石破総理が)自民党総裁から降りることが決まる。つまり、引きずり降ろされることがほぼ確実になっていました。
石破総理は『衆議院解散』という手も相当真剣に考えたのですが、これは『難しい』ということになって、追い込まれた末、自分から身を引くしかないという決断に、ぎりぎりで至ったということだと思います。
(衆議院を)解散すると(政治に)空白を招くことになります。また何よりも、誰と戦うのかということが疑問です。衆議院を解散するわけですから『自民党か野党かを選んでくれ』というのが普通の選挙です。しかし自民党内の対立で、自民党の候補も出て…となると投票する人は誰に入れたらいいのかわからない。“大義がない”と言われた。
石破さんはそれでも(衆院解散を)模索したのですが、周りからの反対が強くて、結局、『選挙の実務を取り仕切れない』という判断が解散を断念する理由として最後は大きかったと思います。
■石破総理 『自分が生き残るためには(衆院)解散しかない』考えたか
自民党内の“重鎮”など周りはみんな阻止したいと思っていました。ただ石破さんが『自分が生き残るためには解散しかない』と。
そうすると、例えば自民党で『石破おろし』に賛成した人に“刺客”を立てる。つまり、対立候補を立てるとなると100人ぐらい立てないといけない。もはや自民党ではなくなってしまいます。
だから『政界再編含み』の選挙になる、自民党が”ぶっ壊れる”ような選挙になるので、周りの人たちは自民党の分裂を避けたいと、止めに入ったということです。
総裁選前倒しに賛成した人全員に“刺客”は立てられませんから、例えば“裏金”議員や旧統一教会と関わった議員たちに立てるとすると、ますます何のための選挙だかわからなくなってしまう。『保身のためだけ』と見られてしまいます。
そうなると今度は野党が圧勝する可能性もあるということで、『これだけはダメだ』ということで最後、小泉さんと菅さんが止めに入ったという形になりました。
■小泉農水相「何で私がこの役目を…」“自民党の人材不足”と青山氏
(小泉農水相、菅元総理の面会は)『石破さんに辞任してもらうために行った』ということです。
ただこれまで、なんとか自発的な辞任をしてくれという声はあったのですが、石破さんの側近は、みんな『主戦論者』なんです。『(衆院)解散もやったらいいじゃないか』、『何とか粘れ』っていう人たちばかりで、結局誰も(石破総理に)鈴を付けられない。
森山幹事長も、林官房長官もそういうこと(説得)をしない。石破さんの周辺は誰もやらない。そういう中で決して小泉さんは石破さんの側近ではありませんが、一定程度話せるということで、最後はこの菅元総理と小泉農水相に頼らざるを得なくなった。
これは自民党の人材不足がはっきりと顕著に現れたと言っていいと思います。
小泉さんは私に対して『何でまた私がこういう役回りなのか』と。嫌な役回りなんていうことは正直漏らしていましたけれど、『功労者』という見方にも繋がっているとは思います。
■菅元総理は滞在「約30分」小泉農水相は滞在「約2時間」その中身は…
<石破総理は菅元総理と小泉農水相との3者会談の中身について>
辞任表明の会見で、小泉農水大臣については、『多く発言をされたわけではございません』としていますが、滞在時間はおよそ2時間という長い時間でした。
一方、菅元総理については、滞在時間およそ30分の中で、『党の分断などあってはならないということは、歴代総理経験者と話したときから菅副総裁(元総理)が強くおっしゃっていた』と石破総理が述べています。
■小泉農水相は「石破総理の話を1時間半聞いた」「心をほぐした」
【政治ジャーナリスト 青山和弘さん】
この1時間半の2人きりの時間は、(小泉農水相が)ほとんど石破さんの話を聞いたんです。石破さんは、今回の『石破おろし』の動きは、『誰かが俺を追い落とそうとしている』、『誰かが辞めさせようとしているんだ。負けちゃいけないんだ』っていうことで、非常に意固地になっていたんです。
『参議院選挙の敗戦の責任を取る』というところが、『とにかく俺を引きずり降ろそうとする人に負けられない』っていう、ちょっと違う論理にすり替わって、頑なになっていた。その心をほぐす必要がありました。
だから(小泉農水相は)石破さんの思い、『ここまで頑張ってやってきた』、『こういうこともやりたかった。やれなかった』、『何でなんだ』こういう話を聞いて、石破さんの心をほぐした。
『石破さんの気持ちはわかるけれども、党の分裂をしてしまったら、日本の政治がおかしくなっちゃうから、何とか辞任してくれ』。
こういう話をして、石破さんからはっきりした言質は取れなかったけれども、『自分はやれることは全部やった』と言って公邸を後にした。その結果が、昨日(7日)の退陣会見に繋がったということだと思います。
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2025年9月8日放送)