今、日本で働く外国人労働者が過去最多となっている。
国内の外国人労働者が過去最多となる中、不法就労が相次いでいる。
外国人を違法に働かせる“悪質ブローカー”や職場のいじめなどで逃げ出す外国人も。日本で働きたいと来日するも去年、失踪した外国人は6500人以上。
外国人労働者の闇を緊急取材した。

■「家族のためお金稼ぎたい」ベトナム人の労働者は57万人と最も多い
8月30日、夜明け前に取材班が向かったのは徳島県。
午前6時前、日が昇ると同時に続々とやってくる女性たちが。
仕事着に着替え、向かった先はネギ畑。彼女たちはベトナムやミャンマーからやってきた技能実習生や特定技能外国人だ。
青ネギの生産・販売を行うこの会社はおよそ40人の従業員のうち、17人が外国人だ。
日本で働く外国人労働者は、去年過去最多の230万人以上にのぼり、その中でベトナム人がおよそ57万人と最も多くなっている。
(Q:なぜ日本に来た?)
ベトナムからの特定技能外国人:家族のためお金稼ぎたい。ベトナムの給料は日本の3倍くらい低い。日本は高い。
(Q:仕事しんどくない?)
ベトナムからの特定技能外国人:ちょっとしんどいけど楽しい。日本人も楽しいからここは安全。

■徳島の企業でも過去に「失踪」した外国人がいたという
外国人労働者を雇用する狙いを聞くと…
アイ・エス・フーズ徳島 酒井貴弘代表:雇用するきっかけは人手不足、人員確保。なかなか農業って職業が日本人にとって好まれない、働きにいこうという職業になれていないいなくては会社が回らないっていう現状はある。
(Q:給料は安い?)
アイ・エス・フーズ徳島 酒井貴弘代表:そんなことないですよ。日本人のパートさんよりも高い子もいます。
この会社では能力が高いと評価した外国人には時給1400円ほどを払っている場合もあるということだ。
人材は管理団体からの紹介ですが、採用後のミスマッチを防ぐため、社長自ら現地を視察することも。
また、採用後の暮らしもサポートし、住居を国別で分ける配慮も行っていますが、過去には…
アイ・エス・フーズ徳島 酒井貴弘代表:大きなトラブルでいうと一人が失踪したことはありますね。突然急にいなくなって、おそらくブローカー的な人にひっぱられたと思うんですけど、こっちに来たらいっぱい給料もらえるよと。

■外国人労働者をめぐる違法ブローカーの存在
外国人労働者をめぐり暗躍する違法ブローカーの存在。
記者リポート:資格のないベトナム人らを違法に働かせた疑いで逮捕された男が警察署に入ります。
出入国管理法違反(不法就労助長)の疑いで逮捕されたのは、奈良県の人材派遣会社の実質経営者の男と従業員の男ら2人。
ベトナム国籍の技能実習生ら3人に対し、就労資格が無いことなどを知りながら、大阪府八尾市にあるごみ収集会社で違法に働かせた疑いが持たれている。
記者リポート:こちらベトナム人たちが働いていた会社の近くなんですが、こちらにゴミ収集車が3台あります。
警察によると、3人はもともと鉄鋼会社やパン工場などで働いていたと話していて、辞めた理由については「給料が安く逃げ出した」ということだ。
警察は、男らが“ブローカー”の役割を担い、ほかにも複数のベトナム人を違法に働かせていたとみて捜査している。
また、神戸市でも先週、ベトナム人に資格外の美容師業務をさせた不法就労の疑いなどで男女3人が逮捕された。

■なぜ外国人の不法就労が相次いでいるのか
なぜ外国人の不法就労が相次いでいるのかー。
取材班は、ベトナム人の支援をする団体を訪ねた。まさに今、来日3カ月のベトナム人男性が相談に。
男性は実習先の板金会社で働き始めて1週間が経ったころ、上司から暴力を受けるようになったという。
タインさん:1回目は足をけられて青たんができました。他の場所にも青たんができました。トタンを切る用のハサミを私の顔に投げつけ歯が欠けて、目にもあざができた」
日越ともいき支援会吉水慈豊さん:何がダメなときに殴られたり蹴られたり?
タインさん:道具をとれと言われたときに、間違えた道具を持っていったので殴られた。

■日本人に蹴られたと訴えるベトナム人に「帰れ!ベトナムに」と罵声
この支援団体に寄せられる相談メッセージは、1日10件から20件ほど。
相談メッセージ:解雇されました。先生助けてください。
中にはこんな動画も。日本人の上司に蹴られたと、痛みを訴えるベトナム人。同僚が上司に抗議するが―。
上司:帰れ!お前ベトナムに!日本語わかんねぇんだったら。お前もやるか?けがするか?
日越ともいき支援会代表の吉水慈豊さんは、不法就労が相次ぐ背景には、安い賃金や、雇用先のハラスメントなどが原因の一つと指摘。
その結果、本来の雇用先から失踪し、違法に別の仕事をすることも。さらに、人材確保のため、高い賃金をちらつかせて違法に勧誘するブローカーも横行しているそうだ。

■去年の技能実習生の失踪者は6510人にも
去年の技能実習生の失踪者はなんと6510人。
かつて団体の支援を受けていたこちらの男性も、会社と合わず、失踪しまったという。
過去に失踪したフィさん:失踪してお金をもっと稼ごうと思っていた。収入を増やすため仕方がなく失踪して、稼いだお金を仕送りした。日本に来るために借金していたので、返済のために失踪して稼ぎのいい仕事をした。
工場などほかの仕事を転々としていた矢先、いわゆる在留許可が得られていない状態だとして、不法滞在の疑いで警察に逮捕。その後、帰国した。
吉水さんは、技能実習制度が正しく運用されていないと話す。
日越ともいき支援会・吉水慈豊さん:日本側で制度のことを理解できていなかったり勘違いをしている受け入れ企業にトラブルがある。失踪した子達に働くのを助長するような企業を取り締まっていかないと不法滞在や不法就労をする子は減らないと思っています。
いまや日本に欠かせない外国人労働者。働きやすい制度のあり方が求められている。

■「技能実習制度」は2027年に「育成就労制度」に変更し
さまざまなトラブルが相次いでいる「技能実習制度」は、2027年に「育成就労制度」に制度が変わる。2027年に、要件を満たせば、実習生本人が望んだ場合も別の企業へ移ることができるようになるなど制度が変更される。
ジャーナリスト青山和弘さん:今の技能実習制度は実習先を変えることができないんですね。非常に悪い業者に当たってしまった時に不満がたまりますし、いい業者でも、自分と合ってないとか、もっと都会で働きたいとかいろんな事情で失踪につながりやすいことは間違いないと思います。
この制度変更について、ベトナム人労働者を支援する団体の代表の吉水慈豊さんは、「名前が変わっただけ。困った若者の支援をどうするかが表に出ていない」と指摘する。
ジャーナリスト青山和弘さん:技能実習制度よりは、企業を変えられたり、技能実習生は技能実習が終わると帰国しなければいけなかったが、グレードが上がっていくと日本に滞在ができるようになるなど、一歩前進であるとは思うんですね。
ただ、何か不満があった時にちゃんと訴えられるような窓口がやはり整備されていなかったり 、働いてる人の権利をどこまで守るか、全体的な整備をしていかないと根本的な解決にはならないということは忘れではいけない。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年9月1日放送)
