今年5月、愛知県一宮市で妊娠中の女性が車にはねられ死亡した事故で、車を運転していた被告の初公判が9月2日に行われました。生まれた子供には重い障害が残ったもの「被害者」として認められておらず、女性の夫は、娘も被害者として認めてほしいと訴えます。
夫・研谷友太さん:
「起訴状を見た時に、本当に一切名前が入っていない。これだと娘が何もなかったかのような形にされてしまう」
愛する妻を事故で失った研谷友太さん(33)。会見で口にした『娘がいなかったことにされる』とは…。

事故は今年5月、愛知県一宮市木曽川町の市道で起きました。
センターラインのない道路の路側帯を歩いていた妻の沙也香さん(当時31)に、後ろから車が突っ込んできました。

沙也香さんは頭などを強く打ち、2日後に亡くなりましたが、実は出産を2カ月後に控え、里帰り中だったのです。

(リポート)
「現場には多くのお花が供えられています。妊婦さんが身につけるマタニティマークもあります」
夫婦がその手で抱く日を楽しみにしていた女の子は帝王切開で生まれ、日七未ちゃんという名前をもらいました。しかし、事故の影響で重い脳障害が残り、今も意識がなく、人工呼吸器が外せません。

車を運転していた一宮市の無職・児野尚子被告(50)は、沙也香さんを死亡させた過失運転致死の罪だけで起訴されました。
お腹の中にいた日七未ちゃんは、法律上『母体の一部』とみなされ、立件されなかったとみられます。
迎えた9月2日の初公判で、児野被告は「事故の責任は私にあります」と起訴内容を認め、「謝って済むことではありませんが、本当に申し訳ございませんでした」などと涙ながらに述べました。
被害者参加制度で、友太さんと、沙也香さんの父・水川淳史さん(62)が法廷に立ちました。
沙也香さんの父・水川淳史さん:
「明るく活発で優しい子でした。なんで沙也香が犠牲になってしまったんだろう」

遺族は、日七未ちゃんに対する過失運転致傷罪も含めるよう、検察に求めています。
夫・研谷友太さん:
「頑張っている娘がいることを伝えたい。被害者として扱ってもらうには、どういったことができるのか」
友太さんらは2日、日七未ちゃんへの過失運転致傷罪も裁判で扱うよう求める、11万2000筆以上のオンライン署名を検察に提出しました。

夫・研谷友太さん:
「娘に関しましては、スタートラインに立てていない状態ですので、起訴してもらわないと何も始まらない状況ですから。皆さまからいただいている声が、確実に届いているのかなと思います」