ストーカー被害が深刻化することを受け、警察庁はこれまで必要だった被害者からの申告なしに、警察の職権で被害者に接近しないよう加害者に警告できる制度の導入を検討していることがわかりました。
現行のストーカー規制法で加害者に警告を出すには、被害者からの申告を必要としていますが、被害者が報復を恐れ警察の介入を望まないケースがあることが課題となっています。
2025年4月、神奈川・川崎市で岡﨑彩咲陽さん(20)の遺体が見つかった事件では、元交際相手の男からのストーカー被害を岡﨑さんが神奈川県警に訴えていましたが、県警は警告を出していませんでした。
こうした事態を受け、警察庁はストーカー規制法を改正し、被害者からの申告がなくても、警察の職権で加害者に警告できる制度の導入を検討しているということです。
違法行為を速やかに抑止し、重大な被害の未然防止に向け対策を強化する方針です。
このニュースについて、フジテレビ・上法玄解説委員と見ていきます。
警察庁がストーカー規制法の改正を検討しているということですが、実際、どのように変わる可能性があるのか詳しく見ていきます。
新制度の導入が検討されているのは、ストーカー規制法に基づく警告の出し方についてです。
現在は、ストーカー被害に遭った被害者が相談に訪れた際に、被害者が警告してほしいと「申告」をすれば、初めて警察はストーカーの加害者に「警告」を出すことができます。
では、これが検討中の制度ではどのように変わるのでしょうか。
被害者からの申告がなくても、警察の職権、つまり警察だけの判断で加害者に「警告」ができるようになるということです。
こういったことによって違法行為を速やかに抑止して、重大な被害の未然防止につなげたいという狙いがあります。
遠藤玲子キャスター:
申告がなくてもいいということになった場合、これでストーカーの被害が実際に減っていく効果はあるとみられているんですか?
フジテレビ・上法玄解説委員:
これまで以上に警察がストーカー事案に積極的に関与してくことにつながると思いますので、被害が減る効果は期待できると思います。
また、被害者の申告なしに警告できるのであれば、警告を発していくスピード感が上がっていく可能性があると思うので、重大事案の芽を早期に摘むことが期待されます。ただ、どういったケースで、どのタイミングで警告を行っていくのか。警察署長の決定で行っている今の警告措置をどういう判断で今後行っていくのか、難しい課題は残されていると思います。
ストーカーに関する事件で思い起こされるのは、2025年4月の岡崎彩咲陽さんの事件ですが、経緯を改めて見ていきます。
2024年2月から白井秀征被告と交際を始めた岡崎さん。
その後、白井被告によるストーカー行為や暴力を受けるようになりました。
そして2024年9月に、岡崎さんは警察に「暴力を受けた」ということで被害届を出しています。
ただ、この被害届は翌月に取り下げられています。
その後、白井被告によるストーカー行為や暴力が激しくなり、12月に入ると、岡崎さんは「白井被告が周りをうろうろしている」などと警察署に9回にわたって電話をしました。
しかしその後、12月20日に岡崎さんは行方不明となり、2025年4月に遺体で発見されました。
青井実キャスター:
上法さん、一連の経緯の中で、白井被告に対し警察からストーカー規制法に基づく「警告」は出されていないわけですが、仮に検討中の制度では、9月とか12月のタイミングで警察が自分たちの判断で加害者に接触して警告を出すことはできるということなんでしょうか。
フジテレビ・上法玄解説委員:
そうですね、被害者の申告なしにということになるので、去年9月の段階であっても、今後は警告を発することができることになります。被害者本人の申告なしにということであれば、本人が望んでいなくても家族や友人の通報で事案が発覚して、警察が危険だと判断すれば、加害者に接触して警告を行うことができます。川崎市の事件で、少なくとも12月の時点で警告できていなかったのは何でだったのか、大変悔やまれるわけですが、近く結果が出されるといわれる神奈川県警の検証結果が待たれるところです。
青井実キャスター:
柳澤さん、申告なしの効果というのは期待できますか?
SPキャスター・柳澤秀夫氏:
非常に僕は限定的なような気がするんです。川崎の事件考えても、直近に「被告が周辺をうろうろしている」と警察に連絡してるんですよね。そこで警告をしようがしまいが、警察が被害者を守るという行為に出ていれば、この事件は防げたはずなんです。警告を出す、出さないよりも、被害者を守るということにつながっていなかったことが一番問題だと思うので、手続き上の話だけでは本当の事件を抑えていくことはなかなか難しいような気がするんですけどね。
遠藤玲子キャスター:
この川崎の事件では「警告」は出せなかったというか出さなかったわけなんですが、今回の改正で出せることになったとしても、警察は警察で難しい判断になってきますよね。
フジテレビ・上法玄解説委員:
私は課題が3つあると考えます。一方的なストーカーは別として、多くの事例は交際のもつれからストーカーに発展します。最初は怒っていた被害者が相手からほだされて被害感情が収まってしまうというケースがあります。そういうことが予想されても、「この2人は今引き離さないと危ない」と客観的に判断できるかどうか。要は被害者本人が本当に望んでいない場合でも警告を本当に出していけるかが、第1の課題です。
そうなった場合、加害者が逆上して、加害者が被害者に報復行為に出て事態がエスカレートしてしまうケースも予想されると。そういった事態をどう防いでいくか、これが第2の課題。
そして第3の課題は、そういう最悪の事態が想像されるわけですが、被害者がさらに委縮して、被害そのものを申告しづらくなってしまうことです。そんなことがあれば本末転倒なんですけれども、そういうことをどう防いでいくか。
被害者がちゃんと相談しやすい環境を整えるということが大事だと思います。
青井実キャスター:
柳澤さん、課題はいろいろあるわけですが、このあとどういうふうに見ていきますか?
SPキャスター・柳澤秀夫氏:
頭の中をよぎるのは、神戸の事件がありましたよね。あれは本人が気が付かないうちに付きまといのストーカー行為になっていたわけで、こういった事件に対しては、今回の「警告」を出す出さないというのは、非常に効果という意味では疑問になりますよね。そういうところも含めて考える必要が出てくると思います。
青井実キャスター:
課題も指摘されていますが、命に関わる話でもあるため、ストーカーによる被害が少しでも減るような法改正が進んでほしいと思います。