全国に9000キロ以上にわたって走る高速道路。そこで今、問題となっているのが重量オーバーの車両です。

重量オーバーの車両が高速道路に大きなダメージを与えるため、高速道路各社は取り締まりを強化していますが、違反する事業者は後を絶ちません。

8月、高速道路各社が事業者名を公表したことを受け、「newsランナー」が違反を繰り返していた複数の事業者に話を聞くと。

【違反業者】「『捕まらなければいいな』じゃないけど、荷物もあるし、行かないとしゃあない」

なぜルールを守らないのか今、日本の高速道路に迫る危機を取材しました。

■車の総重量は原則20トン

兵庫県宝塚市にある運送会社。出発前に確認するのは、トラックに積む荷物の重さです。

【有限会社アキライン22営業部 曽我渚さん】「ここに今、積載量(が出ている)、0か~5トン、10トン、15トンなんですけど、真ん中くらいなので、3トン、4トンくらいですね」

車両に設置された重量計や、測りのついたフォークリフトで、念入りに積荷の重さを確認する、そのわけは…。

【有限会社アキライン22営業部 曽我渚さん】「過積載しないように、法律を遵守するためですね」

(Q.毎回出発の前はやっている?)
【有限会社アキライン22営業部 曽我渚さん】「基本的には確認して、出発するようにしています」

実は、道路の構造を保全するために、道路法で車の総重量は原則20トン以下と定められているのです。
(※一部25トン以下など例外あり)

しかし今、この法律を守らずに、制限を超える重さで走行する車が問題となっています。

■高速道路各社が重量オーバーの車の取り締まりを強化

その実態を調べるため、newsランナーが向かったのは、高速道路。

27日朝、阪神高速守口料金所で行われていたのは、重さなどの制限を違反した車の取り締まりです。

違反していそうな車を目視で確認し、高速道路わきに重量を計測する装置を置いて、実際に重さを計測します。

【高速道路の取り締まり】「こちらで重量を測定している。それぞれにタイヤを乗せて計る形になっています」

高速道路各社が、重量オーバーなどの車の取り締まりに力を入れているのには、わけがあります。

【阪神高速道路交通管理課 松谷有也さん】「見えない所でひびが割れてしまったり、少しずつダメージが蓄積していく。道路の老朽化を進めてしまう原因になるので、ルールの遵守をお願いしている」

例えば、21トンの車は20トンの車と比べて、およそ1.8倍のダメージを道路に与えるという試算もあります。

実際に、アスファルトが割れたり、橋げたがV字状に沈下したりする高速道路も。

重量オーバーの車は、こうした道路の劣化を早める1つの要因となっているのです。

■何度も重量オーバーを繰り返す会社を直接取材

違反する車はあとを絶たず、ネクスコ西日本は重さ50トン以上の車を許可なく走行させた疑いで、香川県の運送会社2社を刑事告発。それぞれ書類送検されました。

またネクスコなどは、何度も重量オーバーを繰り返す“悪質”な運送会社を公表していて、newsランナーは、その会社を直接取材。

去年からことしにかけて、複数回の違反をしていた会社が、電話取材に答えました。

【違反を繰り返した会社の会長】「申し訳ないと思ってますけど、すみませんとしか言えませんね」

(Q.会社側は違反は知っていた?)
【違反を繰り返した会社の会長】「知ってる。だって(運行許可の)申請は出してるもん。違反は分かってても、(車を)引っ張ってるというのがある」

「違反と知りつつ運行させていた」という会社ですが、何やら言い分もあるようで…。

【違反を繰り返した会社の会長】「こっち来るんなら、来てくれますか?」

■「反省はしている」が「どうしても積んで走らないといけない」と言い分

会社の社長が取材に応じてくれることに。

【違反を繰り返した会社の社長】「悪質と捉えられている部分なので、甘んじて受け入れないといけないところ。弊社も反省はすごくしている」

反省はしつつも、違反していた理由については…。

【違反を繰り返した会社の社長】「(許可がでるまで)仕事ができない。できないわけでもないけど、予定通りの仕事ができなくなって、そこはお客さん離れにつながっていく。『あそこは仕事してくれない』、『できない』となってくる。やっぱり荷物がある。これだけ世間的にドライバーが少ないという状況で、それでも荷物は運ばないといけない。日にちが延ばせない状況で、どうしても積んで走らないといけない」

「人手不足を背景に、多くの荷物を運ぶ必要があった」と話しました。

■「2024年問題」も影響か

さらに別の会社に違反した理由を聞くと…。

【違反を繰り返した会社の代表】「荷主が強要した。『こんだけ積んで持って行ってくれ』と。労働基準法を守ろうと思ったら、高速道路に乗せないといけないから、高速乗ったら、たまたま引っかかった」

(Q.労働時間内で運ぶには重さがあっても乗らざるを得ない?)
【違反を繰り返した会社の代表】「そういう背景があった」

違反を繰り返した背景にあったのは、いわゆる「2024年問題」。

この会社は荷主から、「多くの荷物を運んでほしい」と要望がある一方で、去年4月からドライバーの時間外労働が制限され、人員の確保が難しくなっていることから、「1台の車に多くの荷物を載せざるをえなくなっている」と話します。

■道路劣化については「傷まないと思う」 一方で「与える影響は大きい」と専門家

一方、重量オーバーの車両が、道路の劣化につながる恐れがあることについてたずねると…。

【違反を繰り返した会社の代表】「傷まないと思う。うちは車100台あるけど、重量税で何百万も収めている。乗用車は重量税も高くないから、微々たるものしか収めていないけど、運送屋は道路作るのに貢献している」

(Q.“ルール違反を見逃して”との思いも?)
【違反を繰り返した会社の代表】「見逃してとは思わないけど、もうちょっと緩和した方がいい」

重量オーバーでも「道路への影響はない」と話す事業者。

しかし、専門家は「今後、こうした違反車両が高速道路に与える影響は大きくなる」と指摘します。

【高知工科大学 小濱健吾准教授】「(高速道路は)大体今30年以上のものが非常に多くなっている。ここから先、将来的に老朽化が進んでいきますので、重量オーバーの車が通って高速道路が傷んでしまって、寿命が短くなってしまう。早く更新、補修しないといけなくなる」

老朽化が進む高速道路に大きなダメージを与える重量オーバーの車両。

■重量オーバーは重大事故につながるリスクが増す可能性も

取材を進めると、重量オーバーは事故につながる恐れがあることがわかりました。

【JAF大阪支部 上原伸公さん】「停まりきれなくて、て追突される恐れも考えられる」

国土交通省の資料などによると、積載量が4トンのトラックが時速80キロ出して急ブレーキをかけた場合、止まるまでに43.8メートルの距離が必要です。重量オーバーして、積載量が10トンの場合は、止まるまでの距離が99メートルとなり、50m以上の差が出てしまいます。

高速道路ですから、重大事故につながるリスクがこれで増すということになるわけです。

こうした問題について番組コメンテーターのジャーナリスト岸田雪子さんは「運送業者にかかる負荷を消費者も理解して、ルールが守られる範囲のサービスにすべき」と話します。

【岸田雪子さん】「物流の『2024年問題』と言われて、もう1年経っているけれども、実際にネット注文などで『配達が遅いな』って。『変わったな』っていう印象はあんまりないんですよ。

ということは、こういった負荷が、運送業者の皆さんの現場に歪みがいってしまっているのかな、それが背景にあるのかなという気もするんですよね。

インタビューの中で、『荷主側が強要している』というのは、非常に重大な問題だと思うんです。ルールが守られる範囲のサービスの提供を、荷主側も意識して制限を設けてきたり、サービス内容の変更して、消費者にも理解を求める。そこのサイクルこそが必要なのかなと思いますよね」

(関西テレビ「newsランナー」2025年8月27日放送)

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