アツアツの鉄板にだしの効いた生地を流し込み、外はカリッと、中はトロトロに焼き上げた「たこ焼き」。
そんな庶民の味として親しまれる“粉もん”が今、物価高で危機に直面しています。

東京・中野区にある「NAKANO DEGE」。
この店のセールスポイントは、自慢のたこ焼きとオーナーの人柄です。

常連客は「おいしいです!関西くらい味が濃いのが好きです。好きな味に近いたこ焼きです」「あつ!つけだれは僕はここでしか食べたことない。このたれ自体も結構おいしい」と話します。

NAKANO DEGE・谷田真吾オーナー:
たこ焼きみたいな人がたこ焼き焼いてると言われるために僕わざと太ったから。「うま」みたいなのが聞こえたら(自分は)会話に入ってないですけど、「ありがとうございます」っていっちゃいます。

常連客でにぎわう店内ですが、店は11月に営業を終えることが決まっています。

NAKANO DEGE・谷田真吾オーナー:
いっぱいいろんな人に来てもらったけど、それと営業を続けることはまたちょっと違う。その矛盾、大変さがありますね。好きで楽しいだけじゃ営業はできないなって…。

東京商工リサーチによると、お好み焼き店やたこ焼き店といった“粉もん”の倒産件数は、コロナ禍で増えたあといったん減少。
しかし、2025年の倒産件数は2024年の同じ時期に比べ3割増加し、過去最多ペースとなっています。

店側の負担要因として、オーナーは物価高の影響を挙げました。

NAKANO DEGE・谷田真吾オーナー:
この粉自体も値上がりしてますね、6年間で1kg1000円くらい。タコも(1kg)1000円くらいあがってます。紅しょうがもそうですけど、安いものを見つけないと。(価格が)全然違うので。

値上がり幅が特に大きいのが、たこ焼きの命ともいえる粉やタコ。
店がオープンした6年前と比べると、仕入れ値は1kgあたり、それぞれ1000円ほど上がっているといいます。

さらに他の食材も軒並み値上がりし、2024年と比べると食材費は6割もアップ。
しかし、今の価格以上での提供は考えられず、やむを得ず閉店を決めたといいます。

NAKANO DEGE・谷田真吾オーナー:
もちろん味で勝負してるんですけど、狭い店で安く、中野がそういう街なので。気軽に楽しんで飲めてというので、値段が上がるとやりたかったものと違うし…。

約3カ月後に迫る閉店。
常連客も慣れ親しんだ店の味をかみしめつつ、「ふらっと立ち寄れる場所がなくなるので割とさみしい」と寂しさを口にします。

閉店後は2階のカラオケバーでたこ焼きの提供を続けるとしていますが、物価高の影響は続きそうです。