2011年の福島第一原子力発電所事故後の除染で出た土をめぐり、政府は8月26日に閣僚会議を開き、福島県外最終処分の実現に向けて“今後5年程度”の政府の取り組みを整理した工程表を示した。
2030年度ごろから候補地の選定や調査を開始し、2035年を目途に候補地を選定、その後、用地取得や処分場の建設などを実施し、2045年3月までの最終処分を実現する計画としている。

原発事故後の除染で出た土をめぐっては、当初、それぞれの自治体に仮置きされていたが、事故から約3年後の2014年9月に福島県が「苦渋の決断」として“中間貯蔵施設”の建設受入を容認。2015年3月からは除染で出た土など(以下「除染土」)の施設への搬入がはじまった。施設は、福島第一原発が立地する双葉町と大熊町のなかの、原発の周辺のエリアに整備されている。

2025年7月末時点で、中間貯蔵施設に搬入された除染土は約1,411万立方メートル。東京ドーム約11個分に相当する除染土の行方は、大きく分けると「福島県外最終処分」と「公共工事などでの再生利用」となる。


【福島県外最終処分】
1kgあたり8,000ベクレルを超える、放射能濃度の高いものについては、熱処理などで量を減らしたうえで「県外最終処分」する方針。これは中間貯蔵施設に保管されている除染土の約4分の1にあたる。法律(中間貯蔵・環境安全事業株式会社法)において「中間貯蔵開始後30年以内に福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずる」ことが国の責務として明記されているため、2045年3月までの県外最終処分実現が“約束”となっている。
環境省は、減容化についていくつかシナリオを示していて、焼却した後に灰を洗うなど最も処分量を減らせるシナリオだと処分場に必要な面積は約2~3ヘクタールにまで減らせるとしているが、放射能濃度の濃縮の度合いなどを軽くすると、そのぶん面積は広くなるシナリオになる。

8月26日に示された工程表では、
■2030年ごろ:候補地の選定・調査を開始
■2035年を目途:最終処分場の仕様の具体化、候補地の選定
■その後:用地取得、建設、運搬等
■2045年3月まで:県外最終処分
の取り組みを着実に進めていく、と示された。


【公共工事などでの再生利用】
除染土のうち、県外最終処分以外の残りの約4分の3は「公共工事などでの再生利用」が計画されている。放射能濃度の低いものについては再生利用を推進することで、貯蔵されている除染土の量を晴らしていきたい考え。
福島県内での実証事業も進められているが、新宿御苑の花壇や埼玉県所沢市の芝生広場で利用する計画は、近隣住民の理解が得られず進んでいない。
政府は率先して理解醸成をはかろうと、2025年7月、トラック1台分に相当する除染土を首相官邸に運び込み、初の「再生利用」の事例とした。

8月26日に示された工程表では、
■2025年9月から:経済産業省など中央省庁9か所の花壇等で、利用のための施工を順次開始
■その後:地方の分庁舎や所管法人へ拡大を検討し、さらに、継続的かつ安定的に事業が実施できる民間企業が行う土地造成等への利用など「実用途」における先行事例を創出
■2030年ごろ:「実用途」における再生利用の目途を立てる
としている。


【福島県・双葉町・大熊町の受け止め】
8月26日に示された“今後5年程度”の工程表をめぐり、福島県、双葉町、大熊町はコメントを発表している(一部抜粋)。

<福島県>
おおむね2035年を目途に県外最終処分場の候補地選定等を行うことが明記されたことは、一定の前進であると 受け止めている。一方で、候補地選定後の最終処分場の用地取得、建設、運搬等について、具体的なプロセスやスケジュールが明確に示されておらず、依然として、中間貯蔵施設の立地町を始め、県民の皆さんが県外最終処分実現の見通しを実感できない状況にある。県としては、引き続き、国に対し、県外最終処分に向けた2045年3月までの具体的な工程を速やかに明示し、政府一丸となって最後まで責任を持って対応していただくよう求めていく。

<双葉町>
今般、県外最終処分の実現に向けた今後5年程度のロードマップが取りまとめられたことは、一定の前進と受け止めている。一方で、最終処分地を選定した後の用地取得や建設、運搬等について具体的な時間軸が示されておらず、立地町としては2045年3月までの県外最終処分が本当に実現するのか危機感を拭えない。町としては今後20年間の具体的な道筋を早期に示すよう求めてまいりたい。

<大熊町>
2035年を目途に、最終処分場の仕様の具体化、候補地の選定等を実施するという目標が示されたことについて評価する。工程の実現に向けた今後10年の事業進ちょくを注視したい。
2045年3月までの県外最終処分を実現するために、残された時間は決して多くはない。このロードマップ策定を機に、政府内の議論がさらに進み、より具体的にスピード感を持って事業が進められることを強く要望する。

福島テレビ
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