ガンダム音楽の名曲と“幻の楽譜発見”のドラマ

2025年8月9日、仙台市泉区で「宇宙世紀コンサート」が開かれた。
仙台フィルハーモニー管弦楽団が人気アニメ『機動戦士ガンダム』シリーズの名曲の数々をオーケストラで奏で、全国から集まったファンを熱狂させた。

注目は“幻の交響詩”ガンダムF91

今回のコンサートで最も注目を集めたのは、1991年に公開された映画『機動戦士ガンダムF91』で作曲された「交響詩ガンダムF91」だ。
「30年前に聞けなかった曲を、時を超えてようやく聴ける」
「楽譜が30年ぶりに復活したと聞いて、楽しみにして来た」
ファンの声が、再演への期待の高さを物語っていた。

1991年劇場公開「機動戦士ガンダムF91」
1991年劇場公開「機動戦士ガンダムF91」
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ガンダムF91とは?

『ガンダムF91』は初代ガンダムから半世紀後の「宇宙世紀0123年」を舞台に、人類の未来と戦争・平和を描いた劇場作品。物語を支えたのが、作曲家・門倉聡氏による壮大なオーケストラ音楽だった。
映画公開後に「交響詩F91」が制作され、CDに収録された。しかし、収録のため一度だけ演奏されたのち、楽譜は所在不明となり“幻の作品”とされてきた。

劇場公開後に制作された「交響詩」アニメ音楽をもとに再構成された組曲
劇場公開後に制作された「交響詩」アニメ音楽をもとに再構成された組曲

幻の楽譜、奇跡の発見

転機となったのは昨年。門倉氏が自宅の引っ越し作業で使った段ボールの奥から、当時の手書き総譜を偶然発見したのだ。
「まさか残っているとは思わなかった。本当に奇跡の発見でした」
「聞き直すと“若書き”で恥ずかしい部分も多い。でも直してしまえば別の曲になる。当時のまま蘇らせることにしました」
門倉氏は一部失われたパート譜を新たに書き起こし、若き日の楽譜をそのままステージに乗せた。

作曲家・門倉聡氏(1959年生まれ) 富野由悠季監督の目に留まり作曲の制作依頼を受けたという
作曲家・門倉聡氏(1959年生まれ) 富野由悠季監督の目に留まり作曲の制作依頼を受けたという

仙台フィルの挑戦と“宇宙世紀コンサート”

再演を支えたのは仙台フィルだ。バンダイナムコグループと協力し、2024年度からアニメ音楽に特化した「エンターテインメント定期演奏会」を始動。
昨年は『機動戦士Zガンダム』の幻の楽譜がバンダイナムコグループの倉庫から発見され、約40年ぶりに演奏され大きな話題となった。

「楽譜の発見は私たちにとっても大きな喜び。アニメ音楽を文化として後世に伝えていきたい」と、プロジェクトマネージャーの美濃部敦チーフインスペクターは語る。

仙台フィルハーモニー管弦楽団 2024年夏「交響組曲Zガンダム」(作曲:三枝成彰)の楽譜をもとに再演した
仙台フィルハーモニー管弦楽団 2024年夏「交響組曲Zガンダム」(作曲:三枝成彰)の楽譜をもとに再演した

ファンの胸に刻まれた“ガンダムの鼓動”

本番では『交響詩F91』の第一楽章がホールに響き渡り、観客は映画の名場面を思い出した。
「“質量を持った残像”のシーンがよみがえった」
「すべての曲でワンシーンが浮かんだ。来た甲斐があった」
「感動して泣いてしまった」
ステージと客席をつなぐのは、まさに“ガンダムの魂”そのものだった。

シーブック・アノーの出撃シーンを思い出したファンも
シーブック・アノーの出撃シーンを思い出したファンも

主題歌「ETERNAL WIND」も披露

フィナーレを飾ったのは、森口博子さんが歌った主題歌「ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~」のオーケストラ版。ファンにとって特別な一曲が壮大な響きでホールを包み、割れんばかりの拍手が続いた。
偶然の発見からよみがえった“幻の交響詩”。
仙台フィルの挑戦は、ガンダム音楽をクラシックの舞台に引き上げ、アニメ音楽の新たな歴史を刻んでいる。

鼓動だけが確かに生きている 熱い瞳にやきつけて
鼓動だけが確かに生きている 熱い瞳にやきつけて
仙台放送
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