連日クマによる家庭菜園の被害が続く北海道南部の江差町。
住宅地に悠々と入り込む人慣れしたクマに、危機感が高まっている。
知床での致命的事故
知床半島の羅臼岳で、26歳の男性がクマに襲われ死亡した事故。
男性を襲ったのは、事故の4日前に登山道で人に近づいていた親子グマと同一個体である可能性が高いと、8月21日に知床財団が発表。
人を避けず、逃げないなど、人慣れをしたクマだったとみられている。

福島町でも配達員が犠牲に…
7月、北海道南部の福島町で新聞配達中の男性を襲ったクマも、住宅地で繰り返し目撃されていた。
死亡した男性は、襲われる数日前からクマを3回ほど目撃していたとみられている。
人との距離が近い…そんな前兆の後に、事故が起こっている。

スイカ畑食い荒らされる
そして今、ヒグマが連日現れているのが北海道南部の江差町だ。
畑を徘徊し、スイカにかぶりつくクマ。
クマは数時間にわたって家庭菜園のスイカ約15個を食い荒らした。
この家庭菜園では2日続けて被害に。
「バンバンバンって、クマが全部なぎ倒した。そこに大きいスイカあった、それもない。昨日より被害ひどい。駆除してほしい」(被害にあった住人)

さらに、別の家庭菜園でも…。
クマは1時間以上徘徊し、約20個のスイカを食べ尽くした。
「危険だからね、しょうがないかな、早く駆除してほしい」(被害にあった住人)

さらに人前で堂々とスイカを食べるクマも。
「カンカンカンと鳴らしたら逃げて行った。どうしていいのかわからなくて、フライパンをたたくのが精一杯だった。人の声がしても見知らぬ顔をしていた」(クマを目撃した住人)

相次ぐ被害と広範囲の出没
江差町では8月だけでクマによる作物の被害が約20件。
クマの行動範囲は南北約10キロと広い範囲に及び、複数のクマが出没している可能性がある。
江差町では、箱わな6基を設置し、ハンター9人などが警戒をしているが、出没が止まらない状況だ。

クマ対策の導入
北海道南部で対策を進めている自治体も。
福島町の隣、知内町では2年前、クマの出没が例年の3倍以上になったこともあり、家庭菜園用電気柵の補助や貸し出しを実施。
設置した家庭では、ここ2年被害がない。

「クマは一度味を占めてしまうと、複数回来るというきっかけになってしまうので、それを抑制するのが一番の目的」(知内町役場 中村俊太さん)
より多くの家庭に電気柵を普及させたいとしている。
「日ごろからチェックしてクマをつかせないようにすることが大事だと思います。家庭菜園をやっている方にも危機感を持ってほしい」(知内町役場 中村俊太さん)

専門家の指摘ー食べ物の魅力
なぜ、クマは人を恐れず住宅地まで出てくるのか。
専門家はこう指摘する。
「魅力がありすぎるんですよ。人が作った食べ物っていうのは。人間が当然高エネルギーを求めて栽培に特化して作ってきたので、それはクマにとってもものすごい栄養価がある。人との距離感を失ってしまっている状態っていうのは、もうそもそもリスクだと思いますね」(札幌支部ヒグマ防除隊隊長 玉木康雄さん)

今後の動向については
さらに、2025年は“ドングリの凶作”が予想され、出没は今後も続く可能性が高いという。
「去年、たくさんドングリがあったおかげで多産…子グマがたくさん生まれた。山の中のドングリ山盛りよりも人間が捨てたおにぎりのひとかけらの方がいいんですよ、彼らにとっては」(札幌支部ヒグマ防除隊隊長 玉木康雄さん)
人とクマの距離が急速に縮まった今、地域全体でどんな対策をとるのか。
待ったなしの状況だ。
