割引クーポンはお財布にとってありがたい存在だが、買い物客は実際にお得を実感できているのだろうか―。スーパー最大手イオンの担当者に取材した。
クーポン配布だけでは伝わりにくい? お得“実感”に課題
イオンは、自社アプリ「iAEON」を通じてイオンやダイエー、まいばすけっとなどグループのスーパーで使えるクーポンを毎日提供している。内容は、時期や店舗ごとに異なるが、1店舗あたり最大100種類のクーポンを配信するケースもある。
イオン iAEON推進チーム 香下大樹(かした・だいき)リーダー:
クーポンやポイントはたくさん配布しているが、(買い物客が)それを見返す機会というのはなかなかない。
その一方で、普段買っていたものがやはり少し値上がりしてしまうというところで「金額を詰めたい」「食費を抑えたい」というようなニーズがある。

イオンのクーポン配信にはどのような特徴があるのか担当者に聞いた。
イオン iAEON推進チーム 香下大樹リーダー:
(イオンは)お店によってクーポンの設定ができるので、時間や曜日、商品のカテゴリーごとなど、お店の売り上げ状況に合わせてタイムリーに配信を変えることができる。
では、実際の利用状況はどうなのか。買い物客に話を聞いてみると、「クーポンがあるから(「iAEON」の)アプリを使っている」(30代買い物客)という声の一方で、「(アプリの)クーポンをそんなに使ってない」(30代買い物客)、「(アプリクーポンよりは)どちらかと言うと広告や新聞(の折り込みチラシ)などで見ている」(60代買い物客)などの声が聞かれた。

クーポンの使い方は人それぞれで、クーポンの“お得感”をどう伝えるかが、課題となっているようだ。
クーポン+ポイントで1回分の買い物が無料に!? お得を“見える化”
こうしたなか、イオンは「クーポンで節約した金額」を、翌日にアプリ上に反映させる新機能「iAEONレポート」を22日から導入する。月ごとの利用状況に加え、過去13カ月分の累計で「どれだけ得をしたか」を可視化できるのが特徴だ。
さらに、イオンやダイエー、さらにまいばすけっとなど、グループ内の異なる店舗を利用しても、1つのアプリ上でクーポン割引やポイントをまとめて管理でき、利用者にとっても“お得”を実感しやすい。企業としても、グループ店の継続利用につなげようとの狙いがある。
この“お得額の見える化”機能についても買い物客に聞いてみた。

60代買い物客:
その時に「安いんだ」と思って買っている。(クーポン割引額を)改めて合算することはそこまで認識してなかった。
(クーポンによる割引額の累計表示は)すごい便利になりますよね。買い物していると、安いなと思いつつも、それが目に見えるっていうのは、いいんじゃないですか。
節約マインドが続く 一方で「止まらない食品値上げ」
物価高騰やコメ価格の高止まりなども背景に、消費者は依然として財布の紐を固く締めている。日本生活協同組合連合会が5月に実施した「節約と値上げ」に関するアンケートでは、約94%が「日頃から節約を意識している」と回答した。
節約の理由は「モノやサービスの値上がり」(約62%)が最も多く、次いで「将来の生活に備えた貯蓄」(約53%)が続いた。また、直近3カ月で取り組んだ節約項目では、前年同様「ふだんの食事」がトップとなった。
消費者の節約志向が続く中、イオンは今回アプリの新機能として、獲得したポイントを翌日アプリ上で可視化する機能のほか(付与のタイミングは従来と変わらず)、家計管理する機能も新たに導入。「食料品」「衣類」「日用品」などカテゴリーごとにいくら使っているかも一目で確認できるようにした。

イオン iAEON推進チーム 香下大樹リーダー:
買い物の前に、お得な情報を知りたいというお客さんが多い。
どのぐらい普段スーパーで利用しているかを自分で把握して、決められた生活費の中でうまくお買い物したいというそういったニーズや声がある。
イオンによると、毎月の食品の費用として平均5~7万円を買い物に充てている人は、月に約2000~3000円分のポイントを獲得しているという。クーポンを活用すれば、さらに月500~1000円ほどお得になる場合もあるという。

つまり、イオングループで継続して買い物すれば、ひと月で1回分の買い物が実質無料になる計算だ。
電子レシートで「紙レシート約5100万枚分を削減」
イオンは2024年6月から、環境への配慮として電子レシートを全国の店舗で導入した。紙と同じ表示形式にすることで使い勝手を損なわず、抵抗感なく切り替えが可能となるよう工夫している。
導入以来、利用は順調に拡大し、7月末には利用者が110万人を突破。削減された紙レシートの累計枚数は約5116万枚に上り、保護された樹木の本数に換算すると約14500本分に相当する。
さらに、アプリの家計管理機能と連動して過去のレシートも確認できるため、値上げに敏感な消費者のニーズにも対応している。
イオン iAEON推進チーム 香下大樹リーダー:
(クーポン割引額の“見える化”を行う狙いは)お得を体感していただいて、その結果としてまたご利用いただくというところで、やはりお客様のリピート率を高めたいというところと、紙のレシートから電子レシートに切り替えることによって環境にも配慮した取り組みをしていきたい。
売り上げ向上より、まずは現在イオンをご利用している方にiAEONアプリをご利用いただく、また電子レシートをご利用いただくことによって、やはり継続的にイオンを使っていただく。その結果としてまたお店の方に来ていただくということを期待したい。

イオンは今後もグループのスケールメリットを生かしながら、デジタル化を進めていきたい考えで、顧客ニーズを踏まえながら、イオングループ以外の買い物の金額も家計管理機能に追加することなども検討している。こうした取り組みで利便性の向上と環境保護の二兎を追う狙いだ。
【執筆:フジテレビ経済部記者 栁原 弥玖】