結論は持ち越されたものの、鹿児島の最低賃金は初めて1000円の大台に乗る見通しとなっています。

専門家はどのように受け止めているのでしょうか。

九州経済研究所・経済調査部 福留一郎部長
「1000円台に突入ということで驚きはある。ただこれくらいないとダメだと理解する部分もある」

こう話すのは、九州経済研究所・経済調査部の福留一郎部長です。今回初めて1000円という大台に乗る見込みとなった鹿児島の最低賃金。引き上げ幅で見ても、使用者側が提示した64円の引き上げでも、2024年度の56円を上回る最も高い上げ幅となります。

それでも福留部長は今の物価上昇には追いついていないと指摘します。

福留部長
「食料品だけ見ても6~7%くらい前年よりも(物価は)上がっているので、今回1000円を超えて協議がまとまったとしてもまだ物価上昇に(賃上げが)追いついていないという状況が当分は続くのかな」

さらに、気になるのは年収の壁を見据えた「働き控え」です。

福留部長
「(年収の壁があるから)『最低賃金が上がって受け取る給与が増えていいね』と素直に喜べない。年収の壁を意識して働く時間を減らす、働き控えが起こる。そうするとただでさえ企業は人手不足なのにそこに拍車がかかるという悪循環になってしまう」

ところでこちらは九州経済研究所が調査した最低賃金の引き上げをどれほど許容できるかを表した表です。これ以上引き上げられないと答えた企業が13%ある一方で、26%の企業は2024年の上げ幅を超える57円以上引き上げられると回答しています。

福留部長
「二極化という部分、企業体力のあるところはいいが、鹿児島は中小、零細と余裕がない企業が多いので、そういった企業に対してはできるだけ政府、行政が支援・サポートしておかないといけない」

大幅な物価高に追いつかない賃上げ、さらに価格転嫁も進まず体力の落ち込む企業。
そんな労使双方にとって苦しい状況の中、福留部長は今後をこう予測します。

福留部長
「物価を押し上げている原材料・エネルギー(価格)の部分は落ちていく。(物価の)サービス価格の部分が(上がり)賃上げされていくと好循環が生まれる。半年あるいは1年くらいの間に(賃上げによる好循環が)出てくる可能性はある」

鹿児島テレビ
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