農協が農家に支払うコメの前払い金、いわゆる概算金について、JA全農みやぎは去年よりおよそ1.7倍引き上げ、過去最も高い価格になると明らかにしました。

JA全農みやぎによりますと、今年の新米60キロあたりの「概算金」は、ひとめぼれが去年より1万1500円高い2万8000円、ササニシキが1万2500円高い2万9300円、だて正夢が1万1600円高い2万9300円となりました。

いずれの品種も去年のおよそ1.7倍ほどで、現在の制度となった2015年以降で過去最高の価格となりました。

引き上げの理由についてJA全農みやぎは、「生産経費に加え、必要な投資も踏まえた営農が継続することができ、かつ複数年にわたる長期的な需要先の確保ができる水準で試算し設定した」としています。

県内の各農協は今後、「JA概算金」をもとにコメ農家に仮渡しする「生産者概算金」を決定する方針です。

そもそも概算金とは、農協が農家からコメを集荷した際に前払いする金額のことです。収穫を終えた農家が翌年に向けて動き出す際、肥料の購入など当面の資金を確保するために必要な制度とされていて、「コメの流通価格を形成する指標」ともいわれています。

実際に小売り価格にどう影響するのか、コメの流通に詳しい専門家は。

宮城大学 大泉一貫名誉教授
「コメは概算金が底値になる。そこに農協の手数料60キロ3000円が上乗せされて、そこに卸のマージン、小売りのマージンが上乗せされる。そうすると、最初の概算金が1.7倍高くなると、小売り価格が下がる要因はほとんどない」

値上げにつながる見込みで、県内でも銘柄米が5キロあたり4000円を超える可能性があるとみています。

また、国産米離れも懸念されるといいます。

宮城大学 大泉一貫名誉教授
「消費者の中には、低価格帯のコメを欲しい人が確実にいらっしゃる。輸入米が増えて、国内産の市場が海外産に置き換わっていく」

今後、輸入米の需要がさらに広がれば、日本の稲作そのものが揺らぎかねない状況になると大泉名誉教授は指摘します。

宮城大学 大泉一貫名誉教授
「高い価格で再生産基盤ができて、農家が喜んでいるうちに、実は自分の足元がどんどん削り取られて、日本の稲作が崩壊の危機に瀕する」

こうした中、生産の現場では、コメ作りを安定させるための模索が続いています。

色麻町で開かれていたのは、「乾田直播栽培」を学ぶ検討会。畑のように乾いた状態の田んぼに直接種をまくことで、従来の水稲栽培よりも田植えなどの作業負担の軽減や、生産コストの削減が見込めます。

乾田直播栽培を実践
「田植え作業がないだけでも、4割ほどの労力削減になっているかなと」

今回の概算金の大幅な引き上げについては。

コメ農家
「いままであまりにも安すぎたので、これくらいの値段が妥当じゃないかと私は思います。消費者のコメ離れが心配なところもあるし、複雑な思いです」
「喜んではいられない。他の経費が高くなっている。安定的な耕作ができるようにしてほしい」

8月21日の定例会見で村井知事は。

宮城 村井知事
「農家にとっては非常に朗報だったと思います。私は評価していいと思う」

一方、価格変動については、懸念を示しました。

宮城県 村井知事
「買い控えになって、今後コメが売れなくなる、余ると次の年に価格が下がってしまうことになりかねない。バランスをしっかりとっていかなければならない」

仙台放送
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