街中で一度は目にしたことがある「裸婦」の彫刻作品。その存在が今、議論を呼んでいる。

多くの自治体で「性的なもの」との指摘を受け撤去する動きでている。

香川県高松市内の公園にある彫刻作品、「女の子・二人」。

今月末に撤去が決まっていて、その理由がー

【岡田光信・高松市公園緑地課長】「”少女の裸が刺激的では”という意見が多い」

(Q設置時は反対意見なかった?)

【岡田光信・高松市公園緑地課長】「そうですね、その時の美術の流行だと思う」

小学生から「見ていて恥ずかしくなる」との声もあり、公園のリニューアル工事に伴い、この場所からの撤去を決めた。

「裸婦像」彫刻の作者・阿部誠一さん
「裸婦像」彫刻の作者・阿部誠一さん
この記事の画像(6枚)

■”性的である”などの理由から高松市では撤去

「女の子・二人」は1988年の瀬戸大橋完成を記念して作られた作品。

「裸婦像」の撤去について作者にその心中をを聞きました。

【彫刻家 阿部誠一さん(94)】「(作品は)海峡を挟んでお互いが呼びかけている。幼い子は成長していく、地域が成長するということに引っかけているんです」

”性的である”などの理由から撤去されることについては...

【彫刻家 阿部誠一さん(94)】「”女性の体を卑しいや恥ずかしい”ということには抗議したい。着物(服)は階級を表す。肉体を隠して自分を飾っている。私はそうじゃない、人間は生まれたそのままの姿が成長して色気が出てくる姿が美しい、何よりも美しい」

また、彫刻のモデルが”女性”であることについても理由があると言う。

【彫刻家 阿部誠一さん(94)】「男性よりも小さな体でもう一つの個体を宿して、苦痛を耐えて産んで、こんな生命力のある体はないですよ」

女性の裸を生命力の象徴として、捉えている。

撤去予定の「裸婦像」
撤去予定の「裸婦像」

■専門家「戦前にたくさんあった軍人や政治家の銅像に裸婦像が置き換わっていった」

「裸婦像」は関西にも沢山あり、特に多いのが神戸市の中心部。

【記者リポート】「兵庫の中心地の三宮ですが、こちらありました。女性の裸体像です。こちらにもあります。これもそうじゃないでしょうか。女性の像です。服を着ていません」

神戸市の中心を走る道路には39点の彫刻が置かれていますが、そのうちなんと、14点が裸婦像。

そもそもこういった像が街なかに置かれるようになったのはどのような経緯からなのか?

【高山陽子・亜細亜大学教授】「戦前に政治家とか軍人の騎馬像が日本各地にいっぱいあったんです。そのあとに女性像が”平和の象徴”として使われるようになっていって、70年代に”パブリックアートを置くと街が文化的になる”といわれ、その中で女性裸体像が増えていきました」

神戸市も、1960年代後半から「彫刻の街」をスローガンに街づくりを進め、裸婦像を得意とする彫刻家からもたくさん寄贈を受けたという。

神戸市中心部には多くの「裸婦像」
神戸市中心部には多くの「裸婦像」

■撤去された「裸婦像」ブルーシートかけられ「資材置場」に放置

兵庫県川西市に「すでに撤去された裸婦像がある」との情報が。

保管場所に案内していただけるというので向かった先は倉庫かと思いきや、屋外の資材置き場だ。

裸の女性像はブルーシートに包まれ横倒しにされていた。

兵庫県によると、橋の補修工事のため、裸婦像は2021年に撤去され、工事が終わった際に元に戻すかどうか、アンケート調査を行った結果、反対意見があり、戻さなかったという。

その後、移設先が決まらずなんと3年以上も資材置き場で眠っている。

【兵庫県宝塚土木事務所担当者】「展示していただけるようないいスペースがないか探しています」

相次ぐ裸婦像の撤去について街の人は…

【50代】「別にそこまでしなくていいんじゃないの?って思いますけど」

【20代】「ちょっと過敏になりすぎているかなと。子どもがいたらどう捉えるだろうと、大人としては考えるかもしれない」

【大学生】「(撤去は)妥当ではないかなと。卒アルの写真に写っていてちょっと嫌だなと」

【50代】「確かに子どものときは、恥ずかしかったかもしれませんね。一カ所に集めてそこに行けば見たい人は見えるという方がいいのかも」

ブルーシートにくるまれた「裸婦像」
ブルーシートにくるまれた「裸婦像」

■「海外では公共空間に『裸婦像』はほとんどない」と専門家が指摘

公共空間で裸婦像はどうあるべきか。

高山陽子・亜細亜大学教授によると「海外では公共空間に『裸婦像』はほとんどない」と述べたうえで「これを機会に街にどんなアートを置くか議論が必要だ」と指摘します。

ジャーナリストの鈴木哲夫氏は行政への苦情について「福祉や差別などの苦情とは違い、芸術に関する価値観なので、賛成、反対どちらが正しいとは判断しにくい。そういう意味では行政がオープンに住民の意見を問うことが必要では」と指摘します。

竹上萌奈アナウンサーは女性の立場からの意見を求められ「私は『裸婦像』は慣れ親しんだ景色だが、子どもに性的に悪影響だという指摘は違和感がありまして、議論もなく『裸婦像」を隠してしまうことが、性的なタブー視につながって、誤った性認識を生むかもしれないと思った。海外の事例にならうのであれば、海外のような踏み込んだ性教育をすること模倣すべきではないでしょうか」と話しました。

「裸婦像」は巡る議論は、性を巡る社会環境の変化と共に、新たな議論が必要です。

(関西テレビ「newsランナー」2025年8月20日放送)

公共の場の「裸婦像」はどうあるべきか
公共の場の「裸婦像」はどうあるべきか
関西テレビ
関西テレビ

滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・徳島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。