17日までの2日間、防災システム研究所の山村 武彦所長とともに記録的大雨の爪痕を取材しました。18日からシリーズでお伝えします。1回目の18日は土石流が発生し、多くの住宅が土砂にのみこまれた八代市興善寺町です。
【防災システム研究所・山村武彦所長】
「うわー、すごいな。怖かっただろうね、この地域の人たちは。よく人的被害が出なかったですね。不幸中の幸いだったんですけど」
防災システム研究所の山村 武彦所長です。
国内外の災害現場で調査を行い、そこで得た教訓を発信するなどして防災意識の啓発に取り組んでいます。
【防災システム研究所・山村武彦所長】
「斜面崩壊の土砂と一緒に水が流れ下ってきた野だろうと思う」
17日、山村所長とともに、土石流が発生した八代市興善寺町の現場を訪れました。
八代市では8月11日の早朝から大雨に見舞われ、6時間降水量が観測史上最も多い
345.0ミリを観測しました。この記録的な大雨により、竜峯山で土砂崩れが発生。麓の興善寺町を土石流が襲いました。
【ヘリ リポート】
「道路や住宅に大量の土砂が流れ込んでいるのが確認できます」
町内を流れる大谷川に沿って数百メートルにわたり岩や土砂が住宅や道路などを覆いつくしました。
【防災システム研究所・山村武彦所長】
「カルバートの下を渓流が流れていたんでしょうね。高速道路の向こう側(の山)が崩れて、それが一気にカルバートを通ってこの渓流を沿いに流れ、下ったんだろうと思う」
土砂崩れが起きた竜峯山と麓の集落の間を横切る九州自動車道の下には、『カルバート』と呼ばれる箱型のコンクリート構造物があり、山と集落をつなぐ道路と水路が設けられています。山村所長はこの『カルバート』を通って土石流が集落に流れ込んだと分析。4年前の8月に長野県岡谷市で発生した土石流災害と特徴が似ているとも指摘します。
【防災システム研究所・山村武彦所長】
「長野県岡谷市の場合には2階に避難した小学生含む親子3人が土石流に巻き込まれて亡くなっている。この時は住宅の2階を土石流が直撃した」
「もし『カルバート』の正面に家があったら破壊されている可能性がある。それぐらいの破壊力を持った土石流だと思う」
今回、『カルバート』の正面にあった道路と水路を伝って土砂が流れたことで「住宅の倒壊は辛うじて免れたのではないか」と指摘します。
付近の住民に話を聞くことができました。
【平田 信也さん】
「当日、朝から起きて玄関を開けた時にはとてもびっくりした」
こちらは平田さんがその時、撮影した映像。
濁流がものすごい勢いで山側から流れ下っているのが分かります。
平田さんが住む地域には夜明け前の午前4時過ぎに土砂災害警戒情報が発表されましたが、この時すでに家の外から異様な音が聞こえていたといいます。
【平田 信也さん】
「石の音と濁流の音、ゴツゴツゴツゴツと何かに当たる音というかあまり聞きなれない…。そこの家で寝ていたがそこまで聞こえてくるようなかなり大きな音だった」
避難指示を知らせる携帯のアラームも鳴りましたが〈外に出るのは危険だ〉と判断し
自宅に留まり、垂直避難を選択しました。平田さんの自宅は50センチほど水に漬かり、換気口から床下に泥水が流れ込みました。
【平田 信也さん】
「床下を見て『これはひどい』と言われて『このまま放置しておくと臭いとか衛生上も良くないから』と言って一気に作業してくれた。私は幸運だった。そういう方と出会えて」
県外から駆けつけた災害ボランティアが床下に入って泥をかき出してくれたといいます。
【尾谷いずみキャスター】
「こうした地区に暮らす方々にとって今後の命を守るポイント、どういう所になりますか」
【防災システム研究所・山村武彦所長】
「この一帯が土砂災害警戒区域であるならば、土砂災害警戒情報や大雨警報が
こうした地域に出されたらそれはもう危険な合図。
もう一つは、線状降水帯の予測情報が出されたときも危険な合図。
『逃げろ』の〈避難スイッチ〉はどこで入れるかを家族で話し合っておくことが大事」
【尾谷いずみキャスター】
「次への備えが必要ですね」
【防災システム研究所・山村武彦所長】
「安全安心は日ごろの準備に比例します」
自然の猛威、脅威を改めて感じた現場でした。山村さんのお話にもありましたが
これを機に自分の住む地区がどんな場所なのかもう一度確かめておく、いざという時どういう行動が必要か、考えておくことが大切だと思います。
19日は、木葉川が決壊した玉名郡玉東町で1階部分が浸水した高齢者施設を取材。
「早めの避難」を実践し人的被害を出さなかった取り組みなどについてお伝えします。