特集は北アルプス・立山から薬師岳へと縦走し、夏山の景色をお届けするシリーズです。
専門家の解説もあわせて、立山連峰の地形・自然の魅力をお伝えしています。
シリーズ最終回は、日本で最大級の氷河地形を抱える薬師岳への旅です。
北アルプス・立山と薬師岳をつなぐ通称「ダイヤモンドルート」。
変化に富んだ地形を体感できるコースです。
*立山カルデラ砂防博物館 飯田肇学芸員
「“地形”、珍しい地形、氷河のつくった地形、火山のつくった地形、水のつくった地形、そういう典型的なものをたっぷり見ることができる大変貴重なコースだと思いますね」
太古からの自然の歴史、悠久のときに思いを巡らせながら歩きます。
立山室堂をスタートして3日目。
オオシラビソなどの森の中にたたずむスゴ乗越小屋を出発です。
間山、北薬師岳などを経て、最後の目的地、薬師岳へ向かいます。
振り返れば、ここまで歩いてきた山々が見守ってくれていました。
*立山カルデラ砂防博物館 飯田肇学芸員
「長いルートをたどりながら薬師岳まで来ると、氷河の世界、氷の山に戻ってゆくということになります。日本で最大級の氷河地形を見ながら薬師岳の山頂に立ってフィナーレという、そういうルートだと思います」
*リポート
「ここが北薬師岳です。乾いた涼しい風が吹き抜けていきます。そして、この北薬師岳というのは『薬師岳の圏谷群』、カールを眺める特等席です。はあ~見事」
長い年月、氷河が山肌を削り取ってできた谷、カール。
薬師岳の東側の斜面には3つのカールが並んでいます。
東南尾根から伸びる「南稜カール」。
薬師岳で最も大きなカール、「中央カール」。
そして、スプーンでえぐったような見事な形の「金作谷カール」。
その底には、氷河の削った岩や土砂が堆積した丘状の地形「モレーン」がみられます。
これらのカールは日本で唯一、国の特別天然記念物に指定されています。
*立山カルデラ砂防博物館 飯田肇学芸員
「氷河期、かつてはかなりの雪がそこに積もって、溜まって、大きな氷河をつくっていたというのがわかりますね。それで、その氷河の活動で、こういう典型的なカール群ができて。だけれども地球が暖かくなってきて、氷自体はなくなってしまいましたけれども、きれいなカールがそのまま残されている。そういう貴重な場所ですね」
稜線沿いには、ライチョウの姿が。
ライチョウもまた、氷河期に大陸から渡ってきた「氷河時代の生き残り」です。
大昔の山の姿に思いを巡らせながら歩く縦走路も終盤。
*リポート
「薬師岳だ...着きました。この時間はガスに覆われていますけど、室堂から薬師岳まで、長い距離、歩いてきました」
薬師岳の山頂の祠には、薬師如来が安置されています。
無事に歩くことのできた山旅の感謝と、帰り道の安全を祈りました。
*立山カルデラ砂防博物館 飯田肇学芸員
「雄大な自然に対して、人間はちっぽけなものだなあと思うかもしれませんけど、それにも増して、自然の素晴らしさ、時間を重ねてきたすごさ。立山連峰の秘める太古からの自然の歴史、悠久のときを感じられるようなそういうコースだと思います」
立山から薬師岳、大地に刻まれた地球の歴史を感じるダイヤモンドルートです。