異業種から参入し、倉敷市でエビの養殖に挑戦している企業があります。食の安全面や味などの観点から国産への期待が高まる中、ビジネスチャンスを狙います。
水槽の中を元気に泳ぎ回るエビ。飲食店や食卓で親しまれるバナメイエビです。
倉敷市の住宅街の一角で行われている陸上養殖。自動車の点火用プラグで世界トップシェアを誇る名古屋市の日本特殊陶業、ニテラが異業種から参入して手掛けています。施設の管理は子会社のニテラアクアが行っています。
(ニテラアクア 大矢誠二社長)
「マグロやサーモン、ブリの次に日本人が食べる水産物ということもありエビを選択した。他の魚は数年かかるが、エビは3カ月で出荷サイズまで大きくなり事業者が入りやすく、リスクが小さい状態で事業に参加しやすい」
国内で消費されるエビは、9割以上が海外から輸入されています。外国での養殖では、エビの病気を抑えるために、大量に摂取すると人体に健康リスクがあるとされる抗生物質が入ったエサを使うケースや養殖場の開発が、森林などの環境破壊につながるケースも。
ニテラは自社の技術でこうした課題を解決できることに気付きました。
(ニテラアクア 大矢誠二社長)
「センサーがキーワードになり、水質・水をセンシング(情報収集)することによって新しい課題解決ができないかと広く考えてきたところ、この陸上養殖に行き当たった」
センサーで水温やイオン濃度などを管理する技術を確立。ろ過装置で水を完全循環させ、病気のリスクをほとんどなくしました。また養殖施設の整備に大規模な開発も必要ありません。食の安全や環境問題の面から期待される養殖。実は味の面からも期待が高まっています。
倉敷市内の飲食店では、この養殖のエビを取り扱うところが出てきています。
(鮨 和可奈 淺野善正店主)
「鮮度が抜群にいい。甘みが強く、食感がすごくいい。他店が使っていないものを使いたかったのと近所で養殖しているので、その日に行って、分けてもらえるというのが一番の決定(理由)」
ただ、課題は価格。電気代などがかかるため、冷凍で輸入されるバナメイエビの4倍ほどになります。ニテラはエビの色や「潤う」という言葉から「うるみえび」と名付けてブランド化。食の安全や良質な味をアピールして、地元を中心に販路の拡大を図ります。
(ニテラアクア 大矢誠二社長)
「一番目指しているのは地産地消。生きたエビがここにいるので、生きた状態でなるべく近くの人に食べてもらいたい。生きたエビという認知を、まずは倉敷から広げていきたい」
ニテラは、コスト削減の研究を続け、将来的には養殖のノウハウを別の企業などに提供するビジネスを展開したいとしています。