戦争による混乱や貧困などの理由で、義務教育を終えられなかった人の学び直しの場として、「夜間中学」というものがある。

しかし時代を経て、その需要に変化が生まれている。
夜間中学のいまを取材した。

生徒21人のうち外国人が20人

陽も沈み始める午後5時。
人気のなくなった校舎の一角で授業がまだ行われている。

ここは、全国でもめずらしい公立の夜間中学。

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戦後の経済的な理由などで学校に通えなかった人たちのために、1953年に開校したが、最近ある変化が起きている。

母国で義務教育を終えずに来日する外国人が増えていて、広島市の観音中学校でも21人の生徒のうち20人が外国人。

しかし、夜間中学は日本語だけを教える語学学校ではない。
中学卒業レベルの学習内容だけでなく、日本独特のこんな慣習も。

教師:
8時に集合してください。ジョユウは何時に集合しますか?

生徒:
7時55分

教師:
グッジョブ

「夜間中学があってよかった」

日本語のレベルによってクラス分けされているが、その中に2人だけのクラスで授業を受けている少年がいた。

サプコタ・ナビン君(17)。

2019年にネパールから来日し、現在は夜間中学の2年生。
1年前は全く話せなかった日本語だったが、現在は漢字も書けるまでになった。

ナビン君:
初めは不安だった。今は慣れてきたから大丈夫。みんな優しいし、聞いたこと全部答えてくれる

ネパールで生まれたナビン君は4人家族。

父親のラビラルさんが、原爆から復興した広島の姿に感銘を受け、12年前に1人で来日。カレー屋で働き始めた。

2019年、ラビラルさんが日本の永住権をとったため、家族で住むことに。

妹のムナさんは中学入学前の12歳だったため、広島市内の公立中学校に通えたが、ナビン君は15歳で入学できなかった。

ラビラルさん:
日本の法律を知らなかった、あの時は。15歳過ぎてる外国人の子どもは簡単に中学校入れない

ナビン君は当初、学校に入学出来ないと知り、「ネパールに帰りたい」と口にしていたという。しかし、夜間中学の存在がナビン君を変えてくれた。

ナビン君:
助かったと思った。そんな学校があってよかった

ラビラルさん:
良かった、そういう学校があって。外国人皆、助かる

しかし、学校だけでは中々皆に追いつけない。
昼間は家で勉強。
祝日だったこの日は、ムナさんと一緒に2人で宿題をした。

ナビン君:
社会を一番頑張ってる。とても難しい、全部漢字ばっかりで

ムナさん:
全部日本の歴史だから難しい。侍とか色んなこと。お兄ちゃんがわからないことは、わたしがわかる。わたしがわからないことはお兄ちゃんがわかる。だから一緒に勉強したら全部わかる

異国で暮らしていくこと…
ラビラルさんは、2人には同じ苦労を味わってほしくないという思いがある。

ラビラルさん:
勉強したかったけど、仕事行かないといけなくて時間がなかった。ひらがな・カタカナは書けるけど、漢字がちょっと難しい。書き方がわからない

ーーーそういうこともあってナビン君たちには勉強してもらいたい?

ラビラルさん:
そうですね。きつく言って勉強させてます

大変だった経験があるからこそ、2人には今 日本の学校でしっかり学んでほしいと願っている。

文科省は各都道府県に1校設置促すも…

文部科学省は、各都道府県に1校は夜間中学が設置されるよう自治体に促しているが、夜間中学は現在、10都府県34校にとどまっている。

外国人労働者の受け入れ拡大を図る「改正出入国管理法」が2019年に施行され、より多くの外国人が来日することなどから、その生活の基盤を作ることは急務となっている。

広島市立観音中学校・川本尚樹校長:
日本に入国して経済的な自立を果たしながら、日本の社会で生活をしていく生徒が増えてくると思うので、ますます夜間学級の重要性は高まっていくと思う。日本で学ぼうとする子どもたちは、国籍を問わず、とにかく幅広く受け入れをして、日本で経済的な自立、精神的な自立がはかれるように、学習面でのサポート、生活面でのサポートを含めて、取り組んでいきたい

かつて「ネパールに帰りたい」と言っていたナビン君。
今、新たな目標ができた。
高校受験に挑戦することにしたという。

ナビン君:
コンピュータープログラマーになりたい。(行きたい)高校はまだ決めてないけど、3年生になってから決めようと思う

年齢も国籍も関係なく、それぞれの目標に向かって勉強に励む夜間中学。
学びの原点がそこにはあった。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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