特集です。広島・長崎の被爆の実相を多くの人に伝えようと手話を使った「ダンスミュージカル」の活動を先日も放送しましたが今回はついに上演されたその一部始終に密着です。
8月3日 広島駅の地下広場に集まったのは、広島県内で活動する手話ダンサーたちです。
手話ダンスとは、曲の歌詞を手話に訳し、手話と全身を使って伝えるダンスです。
被爆80年となる今年、広島と長崎の被爆の実相を手話とダンスで伝える「手話ダンスミュージカル」がはじめて上演されます。
<リハーサル風景>
友映さんは、生まれつき聴覚に障がいがあります。
人工内耳を使っていますが、音や声によっては、聞き取りやすいものとそうでないものがあると言います。
【手話ダンスチーム・Sign 中村友映さん】
「カーって聞こえたら、今始まっているなみたいなちょっとずれて入るみたいな、自分の中で数えて歌詞も覚えているのでタイミング的に覚えているので何とか(なります)」
手話には自信がありますが、台詞を話す事は簡単ではありませんでした。
【手話ダンスチーム・Sign 中村友映さん】
「当日になってすごく緊張していますが、今まで練習したことを(リハーサルで)しっかり表現できたと思うので、本番でも同じようにしっかり表現できたらと思います」
このパートに、友映さんを推薦したのは代表の菊田さんでした。
【ミュージカルを主催した手話ダンスチーム Sign 菊田順一代表】
「難聴者の人は声に特徴があると思う。(一般的に)あんまり聞く機会がないと思うが、こういう人がいるという事それだけでも知ってほしいと思って、あそこはぜひ友映さんにやってほしかった」
夫の慶太さんと一緒に、ダンスの振り付けや、芝居の演出をして来た小林摩弥さん。
来月、出産予定の摩弥さんは、このミュージカルが、出産前の最後のステージです。
【手話ダンスチーム・Sign 小林摩弥さん】
「一緒に踊ってるとか、一緒にやっているという気持ちでいました。ありがとうと思いながら」
母親になる摩弥さんは、今回のミュージカルに向き合う思いが少しずつ変化していったと言います。
【手話ダンスチーム・Sign 小林摩弥さん】
「自分がやっている『おばあちゃんののこしもの』のシーンとか、子どもを身ごもっているという事で余計に感情が入っているかもしれないです」
本番が始まります。
出演者が手話だけで表現するパートは、ナレーターが演技に合わせて台詞を入れていきます。
<中村友映さんの演技>
このミュージカルには被爆者の証言を元に作られたシーンがあります。
8月6日の朝、出かけた姉の帰りを待ち続けた妹。
いつまでも、わすれられない被爆者の思いが込められています。
<中村友映さんの演技>
「目の前で人が焼け死んでいくのを私はたくさん見ました。子どもが『助けて、助けて』と泣いていても誰も助けられなかった。それが現実でした。夕方までには帰って来ると言って姉は出ていきました。私は夕焼けを見るのが嫌いになりました。姉が返ってくるかもしれない。夜、家の鍵をかけることもできなくなりました」
この被爆証言をもとに広島在住のシンガーソングライター、HIPPYさんが作った「日々のハーモニー」
広島が被爆した3日後、2発目の原爆が長崎に投下されました。
「子どもも大人もたくさんの人が炎の中で死んでいきました。守ろうとしても守れなかった命がありました。私も息子の命を守ることができませんでした。
長崎の被爆の実相を描くのは、長崎出身の音楽ユニット インスハートの「おばあちゃんののこしもの」です。
<おばあちゃんのダンス>
最後の記憶に残るのが笑顔であろうと、微笑みながら子の頭をなでて逝った母もいたろう。熱い熱い熱い風を背に受けて子どもを守ろうとした父もいただろう。何をすればいい?何ができるの?分からないし、こわいよ。目をそらして見ないふり、それじゃあの人、同じ日がやってくるから」
出演者には、被爆を経験した人は、誰一人いません。
しかし、これからは、彼らが被爆者の思いを伝えていくのです。
「やがてあの日を知る人はいなくなる。でもあの日とそのあとの出来事を絶対に忘れてはいけない」
およそ40分のステージが終わりました。
【手話ダンスチームSign 小林慶太さん】
「気持ちが入り過ぎてあっという間でしたね」
【手話ダンスチームSign 木村竜輝さん】
「みんなのおかげです。ミュージカルを見てくれた人にも感謝、ありがとうございました」
Q:またやりますか?
「やります」
【手話ダンスチームSign 中村友映さん】
「みんながすごく拍手してくれたので、やってて良かったなと思った」
Q:拍手すごかったですね?
「すごいですね」
【ミュージカルを主催した手話ダンスチームSign 菊田順一代表】
「本当にみんなに感謝です。途中でくじけそうになったけどこれは来年もやらないといけませんねこの取り組みを今後も続けていきたい。
クラウドファンディングで資金を集めながら、手話ダンスミュージカルは、すでに、来年に向けて、動き始めています。
【ミュージカルを主催した手話ダンスチームSign 菊田順一 代表】
より多くの人、障害があるない性別や国籍に関係なく多くの人に知ってもらうことが大切ですし、継続性も大事だと思うのでこれは続けていきたいです」
自分たちのできるやり方で伝えていく。
被爆から80年、被爆者の思いを伝承する新たな挑戦が始まっています。