全国各地で連日のように40℃を超えている今年の夏。避暑地と言われる場所も高温となってしまっていて、まさに”逃げ場のない”暑さに…。
熱中症対策にはクーラーでしっかりと部屋を冷やしていただきたいが、他に、少しでも体感温度を下げることで「涼」を感じられないかと調べてみた。
九州大学芸術工学部 ジェラード・レメイン教授によると、『五感が学習している記憶をうまく呼び起こすこと』でそれが実現できる可能性があるという。
『青色』で涼しくなる
みなさんは「COOL」という文字を涼しく見せるとしたら、何色で書くだろうか?おそらく「青色」を思い浮かべた人が多いと思う。

蛇口で冷たい水が出る側に青色が使われているなど、私たちの生活の中で「涼しい・冷たい=青」はかなり定着している。
中央大学理工学部 戸井武司教授によると、青色の空間では実際の室温と比べて0.95℃低く感じることがあるという。
『心地よい音』『ミントのにおい』で涼しくなる
人は波や雨など水が動く音を耳にすると、涼しさの象徴といえる「水」に記憶が結びついて涼しさを感じるという。
また自然由来で、規則的な音と不規則な音がほどよく混ざったものは「1/f ゆらぎ」「ピンクノイズ」と言われ、リラックス効果をもつ。

小鳥のさえずり、風の音などの自然のものだけでなく、クラシック音楽や一部の歌手の歌声にもこういった「ゆらぎ」は含まれている。
これらの『心地いい音』を耳にすると、私たちはリラックス状態になり、戸井教授によると最大で0.5℃程度体感温度が下がることがあり、特に高い音はその効果を感じやすいという。
清涼感があるにおいをもつミントも、涼しい感覚を引き起こす可能性があるそうだ。
“逆のこと”にご注意を
色や音、においが五感の記憶と紐づいて「涼しい」感覚を呼び起こすとすれば、“逆”も起こりえる。
例えば、セミの鳴き声は真夏を連想させ、より強く暑さを強く感じる可能性があるという。

レメイン教授はオランダ出身だが、「むかしは夏にセミの鳴き声を聞くことはなかったが、日本に移住して数年経ってから、セミの鳴き声と暑さが関連付くようになった」と話している。
また、リラックス効果のある心地いい音に対して、騒音や激しい音楽は暑さを引き起こす可能性があるそうだ。
避暑地探しに苦労する酷暑の夏… 五感をフルに刺激して、自分の身の回りを”避暑地”に変えてみるのはいかがだろうか?
【取材協力】
九州大学芸術工学部:ジェラード・レメイン教授
中央大学理工学部:戸井武司教授
【参考文献】
日本音響学会誌「音環境及び色環境の複合刺激が体感温度に及ぼす影響の評価」
【執筆】
フジテレビ気象センター・岡部茉莉