ロシアで起きた巨大地震の影響で、遠く離れた日本でも広い範囲で津波警報や注意報が発表されました。
そんな中、ネット上ではある動画や情報が広がっています。
31日の「ソレってどうなの?」は、「津波のフェイク動画・デマ情報が拡散」をテーマにお伝えします。
岩手・久慈港で1m30cmの高さを観測するなど列島各地に押し寄せた津波。
この影響で、JR東海道線などが運転を見合わせ、仙台空港は閉鎖に。
街では「兄が横須賀に住んでいるが、職場から家に帰る電車が全部止まって家に帰れなくなり、上司に車で送ってもらったが、いつもより1~2時間遅く家に帰ってきた」「ジムに行っているが、インストラクターが電車が止まって来られなくて、クラスが受けられなかった」などの話が聞かれました。
そんな中、津波を巡りSNS上では真偽不明の情報やフェイクとみられる動画が拡散されています。
「カムチャツカ地域の一部で4メートルの津波が観測されました」というコメントとともに投稿された映像では、数十メートルはあるように見える巨大な波がヤシの木の並ぶビーチに押し寄せています。
さらに、高層ビルをのみ込むほどの高さの波が街を襲う映像も。
国立情報学研究所・越前功教授は「生成AI製だと思います。下の方に赤い人が2人いますよね、これが1人になる。物理的におかしい。これだけの障害物があるのに波が減衰していないとか、時間軸でアラがある」と指摘。
これらは全て生成AIで作られたとみられる偽動画だといいます。
他にも50万回以上閲覧されている投稿では、主に関東地方を赤い枠で囲み、「震度3~4に注意してください」と次に来る地震を予知するかのような内容の偽情報も。
気象庁は「地震を予知することは不可能だ」と注意を呼びかけています。
さらに越前教授は、偽動画や偽情報は生成AIで作られたものだけではないと指摘します。
大きな津波がビーチを襲い、人々が悲鳴を上げながら逃げている動画。
これは「カムチャツカの地震でハワイでも津波到達」という文章とともに、津波の映像が投稿されています。
越前教授は「これはリアルなものでは。(しかし)他の過去の災害の映像を使い回している」と分析。
この映像は過去に発生した別の津波の映像で、今回の津波の映像だと誤解させるものだといいます。
このように過去の映像を使い回し、注目を集めようとする偽動画は他にもありました。
「イルカやクジラの浜への打ち上げと地震や津波は明白に関係がありそう」という内容の投稿。
実は全く同じ映像が2年前に投稿されていました。
座礁したイルカを漁師が助けている映像を、この投稿では今回の地震や津波と結び付けています。
こうした投稿、一般の人にはどのように映っているのでしょうか。
街では「本物と言われれば本物にも見えるし、今どきのAI生成と言われたらそう見える。自分が目で本当に見たものじゃないから、本当かどうか見極めにくい」「(これは)フェイクですね。こんなひどくはない、いくら何でも。こっちならフェイクじゃなくて本物かなという感じがする。ネットだけしか見ない人がいる。でもそれだけを信じるのはちょっと怖い」などの声が聞かれました。
では、こうした偽動画にだまされないために私たちはどのようなことに注意すればよいのでしょうか。
越前教授は「映像自体を見極めるのは難しい。特に災害時だと混乱している中で『本物の映像』と認識してしまう可能性も。一番手っ取り早いのは、ソーシャルメディアで情報を得ることだが、投稿する側も閲覧数を稼ぐために必ずしも真実でない情報を流す傾向もある。うのみにしないのが一番。政府機関・自治体・報道機関が発表する情報に基づいて行動・判断することが大事」としています。
災害が起きた時には、不安な心につけ込むような偽の情報があふれる傾向にあります。
複数の情報を見比べて、可能な限り冷静に判断することが大切です。