2024年7月の豪雨災害にともない集団移転事業が進められている山形・戸沢村蔵岡地区では、現在多くの人が地区を離れて暮らしている。そうした中、蔵岡の地で思い出を残していこうという集いが開かれた。

避難生活で離れて暮らす地域住民が集まる
あの大雨から1年。

「よぐ来たな~」
いまは住民のほとんどが仮設住宅や親戚の家などで避難生活を送っている。

7月27日、“集い”の開催に合わせ、地区の住民約120人が蔵岡地区の中心にある公民館に続々と集まってきた。

2024年7月25日の大雨で、蔵岡地区のそばを流れる最上川がはん濫し、集落一帯が水に飲まれた。
これまでに何度も水害にあってきたこの地域ゆえ、集団移転には69世帯すべてが同意した。

懐かしい再会に自然と笑顔があふれる
この集いは、蔵岡での思い出づくりの場として、住民有志のグループが今回初めて設けた。
住民の孤立を避けるため、普段は社会福祉協議会が月に1回、蔵岡で「くらカフェ」という交流会を開いているが、100人超えの住民が集まるのは久しぶり。
再会に笑顔があふれた。

蔵岡地区の住民の1人は、「夜になると人っ子一人いない、寂しい。正直こんなに集まると思わなかった。集まっても30~40人来てくれれば、『懐かしいな、今どこにいる?』という感じで話せたらいいなと思っていたけど、これだけいると…やっぱりいいよ」とうれしそうに話してくれた。

100人規模の人が集まった27日の集いでは、子どもたちの元気な声も聞かれた。
先 生:大きくなった~。
子ども:会えると思わなかった~。
先 生:大事な集まりだもの、来るよ~。
子ども:いま身長151センチです。
先 生:もうすぐ越されちゃう。
いまは別々の場所に住んでいる友達もこの日は一緒。
ずっと会えていなかった学童の先生にも会えた。

学童の先生をしている女性は、「みんな負けずに元気に大きくなってうれしい。久しぶりに来ると楽しい。大事な集い」と話してくれた。
暮らすだけでない“つながり”があった蔵岡
地区には1年が経っても、乾いた泥や水の跡など水害の爪痕が残っている。
今は20世帯が暮らしている。
浸水した我が家を眺め、「変わりないね、何にも。家の2階部分で胸まで水が入って、床の間から何から全部…ダメ。天井に水がはねた跡がまだある。何回拭いても、拭いても泥が出てくる」と話してくれた住民も。
また、「2~3日会わないと『いるか?』って、やっぱり近くにいることが心強い。これからどうなるかな…」と不安げに話していた女性もいた。

村は3年後の集団移転を目指し移転補償費の算出などを進めていて、9月の住民説明会で移転先の候補地を示す方針。
戸沢村・加藤文明村長:
今に始まった地域コミュニティではなく、代々つながってきた地域コミュニティ。
ここを大事にしてこれからの復興を目指していかなければならない。
まだまだ時間はかかるが、蔵岡地区の住宅再建をしっかりと進めていくことをあらためて頑張る。

具体的な道筋が決まるまでにはまだ時間がかかる中、ふるさとへの思いを心に刻む取り組みが続いている。
(さくらんぼテレビ)