大阪・関西万博のパビリオン建設を巡る工事費の未払い問題で、下請け会社に対してあわせて1億円あまりが未払いになっている建設会社「一六八(いろは)建設」の代表が、原因は「経理担当の横領」として、警察に経理担当者の男性を業務上横領の疑いで刑事告訴した。

一方、告訴された経理担当の男性が関西テレビの単独取材に応じ、「自転車操業の一六八建設に自身が経営する別の会社から金を貸していて、それを回収した。横領ではない」と主張した。

「横領」容疑で告訴 経理担当の男性 関西テレビの取材に応じる
「横領」容疑で告訴 経理担当の男性 関西テレビの取材に応じる
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■アンゴラパビリオンの建設巡って”1億円あまり”未払い発生「一六八建設」

万博のアンゴラパビリオンの工事を受注していた建設会社「一六八建設」は、アンゴラパビリオンの建設工事を『3次下請け』として受注した。

しかし、4次下請けの6つの会社のうち、5社に対して、工事費用あわせて1億円あまりの未払いが発生している。

一六八建設の下請け会社:いざ蓋開けてみたら入金がないというところで、『どういうこと?』って。

未払いの構図
未払いの構図

■未払いの原因は「経理担当者が会社の金を横領したこと」と建設会社代表が刑事告訴

なぜ未払いが生じているのか、関西テレビの取材に一六八建設の代表の男性は「経理担当者が会社の金を横領したことが原因だった」と訴える。

一六八建設の代表:(横領は)全部の額でいくと1億円ぐらいになっているので、それがあれば、(工事費の)お支払いができていた。

代表が見せてくれた銀行口座の通帳のコピーには、万博の工事費として3000万円が振り込まれた同じ日に、1000万円が別の会社に送金されていることが記録されている。

そしてこの送金先が、一六八建設の経理担当の男性が経営する別の会社だというのだ。

通帳のコピー
通帳のコピー

そして28日、代表は警察に経理担当の男性を業務上横領の疑いがあるとして、刑事告訴した。また、未払いの被害を受けている複数の下請け業者も、男性を刑事告発している。

一六八建設の代表:『返す、返す』とは言われているんですけど、ここひと月半ぐらい、一銭も返ってきてない状態。

刑事告訴のため警察署に入る代表
刑事告訴のため警察署に入る代表

■経理担当者の男性「貸した金を回収しただけ 横領は結論的にはない」

こうした一六八建設の代表側の主張に対して経理担当の男性は、関西テレビの単独取材に応じ、「横領の事実はない」と真っ向から否定した。

経理担当の男性:不審なお金の流れっていうのはないんですよ。すべての(金の)流れを見ていくと、全部説明がつく流れ。だから横領という事実の話のところは、もう結論的にはない。

そして実態は、「自転車操業の一六八建設に自身が経営する別の会社から金を貸していて、それを回収した」ものだったと主張した。

経理担当の男性:銀行の借り入れと同じで、貸したら返すのは当たり前。ある会社には、一六八建設に振り込まずに、直接(私の会社から)立て替えて払っている。そういうのを重ねていく中で、一六八建設に対して(自身の会社の)貸し付けがめっちゃ残った状態になっています。

さらに経理担当者の主張について、代表は「根拠のない主張」と訴えた。

一六八建設の代表:(Q.経理担当が一六八建設に金を貸していたのは事実?)「事実ではないと思っているが、もちろん一六八建設の口座からお金が出て行ってますので。それが何に使われたかは僕らも分からないところもあるんです。うそというか、根拠のない主張かなと思っています。

"貸したら返すのは当たり前"
"貸したら返すのは当たり前"

■吉村知事は「契約に基づいて支払いというのは当然のこと」

万博のパビリオン建設をめぐる未払い問題が、刑事告訴まで発展したことに吉村知事は、次のように指摘した。

大阪府・吉村洋文知事:会社内部で事情というのはあるのかも知れませんが、契約に基づいて支払いというのは当然のことなので、きちんと対応してもらいたい。

一六八建設を巡っては、先週、法律に基づく建設業許可を受けていなかったことが発覚し、大阪府による30日間の営業停止処分が決まるなど、混乱が深まっている。

長引く未払い問題が解決する日は、一体いつになるのだろうか。

吉村知事
吉村知事

■「工事費未払い」7か国のパビリオン建設で発覚

万博のパビリオン建設を巡る「工事費未払い」のトラブルは、アンゴラだけではなく、7カ国のパビリオンで未払いが発覚している。

・ルーマニア館…元請けでおよそ1億4800万円の未払い。
・マルタ館…元請けでおよそ1億2000万円の未払い。
・アンゴラ館…3次下請けでおよそ1億円の未払い。
・セルビア館…1次下請けでおよそ6470万円の未払い。
・中国館…2次下請けでおよそ6000万円の未払い。
・アメリカ館…2次下請けでおよそ2800万円の未払い。
・ドイツ館…元請けで約1000万円の未払い。

未払い発覚の状況
未払い発覚の状況

■「余裕をもって建設に着手して業者の選定ができれば…」大阪大学・安田教授が指摘

この未払い問題について、大阪大学大学院の安田洋祐教授は、短期間でパビリオンを建設した結果が、影響したのかもしれないと指摘した。

大阪大学大学院 安田洋祐教授:つぶさに見ていくと、理由とか原因が違ったりするのかもしれないんですけれども、わかるのは、経営であったりとか、資金繰りだったりが厳しい事業者が、複数今回の万博案件に関わっていると。

大阪大学大学院 安田洋祐教授:ひょっとすると、かなり短期間でかつ、パビリオンもどういった形にするのかって直前まで決まらなかったって我々ニュースでもお届けしたと思うんですけれども、そのあたりもう少し余裕を持ってパビリオン建設に着手して、きちんとした業者の選定ができるぐらい、ある程度の見込みがあれば防げていたものもあるのかなと。

大阪大学大学院 安田洋祐教授:今回アンゴラ館に関してはオープン以降、しばらく閉鎖されていた時期があったので、彼らからしてもやっぱりこの未払い問題を1つのきっかけになって、少し残念なことになっているので、例えば吉村知事が、アンゴラと何らかの形で大阪府とのコラボイベントであったりとか、何か今回のことをきっかけに、お互いに何かプラスになるような、未来につなげていっていただければなと思いますけどね。

博覧会協会としては、相談機関を紹介するなどできる範囲で対応したいということだ。

(関西テレビ「newsランナー」2025年7月28日放送)

大阪大学大学院 安田洋祐教授
大阪大学大学院 安田洋祐教授
関西テレビ
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