2025年2月、秋田・北秋田市の歴史ある秘湯の宿が閉業した。無色透明の源泉掛け流しの湯で、長年多くの人に親しまれてきたこの温泉を残したいと、東京で造園会社を営む北秋田市出身の男性が事業を受け継ぎ、7月に本格的に営業を再開した。自然に囲まれた秘湯にかける男性の思いとは。

自然に囲まれた温泉を残したい

北秋田市森吉の渓流のほとりに建つ一軒の温泉宿。森吉山温泉「小さな森の湯」だ。

営業を再開した森吉山温泉「小さな森の湯」(秋田・北秋田市)
営業を再開した森吉山温泉「小さな森の湯」(秋田・北秋田市)
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杣(そま)温泉として80年近い歴史を持ち、無色透明で源泉掛け流しの優れた泉質で全国の温泉ファンから愛されていたが、2025年2月に惜しまれつつ閉業した。

「癒やしの環境をつくるには最高の場所なので、いろいろ考えて自分でやることにした」と話すのは、東京で造園会社を営む山田茂雄さん(75)。

温泉の営業を受け継いだ山田茂雄さん(75)
温泉の営業を受け継いだ山田茂雄さん(75)

山田さんは温泉近くにある森吉ダムに沈んだ向様田集落で生まれ、幼い頃から温泉や周囲の大自然に触れて育った。

「小さな森の湯」近くにある樹齢400年といわれるスギの木
「小さな森の湯」近くにある樹齢400年といわれるスギの木

小さな森の湯・山田茂雄さん:
2本の川に挟まれ、中州にあるようなところに温泉が湧き出ていて、樹齢400年のスギもあり魅力。

「自然に恵まれた環境の中にある温泉は残すべき」と、山田さんは事業を受け継ぐことを決心した。

奥森吉観光の拠点として期待

地元自治体も今後の観光振興に向け、復活した「小さな森の湯」に期待を寄せている。

温泉の営業継続に期待を寄せる北秋田市産業部・小松武志部長
温泉の営業継続に期待を寄せる北秋田市産業部・小松武志部長

北秋田市産業部・小松武志部長:
温泉のある奥森吉に来る人が一度は立ち寄る湯だと思う。今後、国立・国定公園、自然公園の動きの中でも重要度が増していくので、営業が継続され、事業が承継されたのはわれわれにとっても心強い。

無色透明・源泉掛け流しの温泉(内風呂)
無色透明・源泉掛け流しの温泉(内風呂)

宿は段階的に客の受け入れを始めた。4月に内風呂と露天風呂が楽しめる日帰り温泉の営業を再開。7月1日からは宿泊客のもてなしを始めた。

地元の人も「地元の客が入って、都会からも客が来れば大変良いことだと思う」「承継したのは素晴らしいこと。故郷と自然を愛する山田さんの気持ちがつながっていると思う」と期待を寄せる。

美しい所にはみんな来てくれる

奥森吉を生かした施設にしたいと考えているという山田さんは「美しいところにはみんな来てくれると思うので、奥森吉もだんだん良くなるのではないか」と将来を見据える。

「小さな森の湯」の露天風呂
「小さな森の湯」の露天風呂

廃業の危機を乗り越えて生まれ変わった「小さな森の湯」。

そこには雄大な自然を忘れない山田さんの思いが詰まっている。

(秋田テレビ)

秋田テレビ
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