石川県金沢市のアパートの一室を拠点に、石川県内で大麻の密売を行っていたグループと顧客の計17人が大麻取締法違反などで一斉に検挙された。押収されたのは乾燥大麻1.9キロ、末端価格にして約950万円に上る。ここから見えてきたのは若者にはびこる薬物と密売に悪用されるSNSの実態だった。

10代から20代が7割 なぜ若者は大麻に手を出すのか?

石川県警が押収した乾燥大麻
石川県警が押収した乾燥大麻
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金沢市内のアパートを拠点に行われていた大麻の密売。県警の捜査で乾燥大麻が押収された他、液体状の大麻リキッドが約250本発見されたという。

警察などによると密売人は、金沢市内のコインパーキングで手渡しで販売していたとみられ、顧客は県内で100人を超えるということだ。

一地方の石川県でこれだけ大麻がまん延しているというのは驚きだが、注目されるのはその年代。

検挙された中で、20代が最も多い10人、次いで30代が4人。中には10代も1人た。

全国的にも同様の流れが見られ、10代から20代の若年層が約7割を占めている。なぜ若者の間で大麻が広がり、どのようなきっかけで若者が大麻を手にしてしまうのだろうか。

「お前もやるか?」10代男性が告白 若者の7割が大麻に手を出す現実

午後10時の金沢市片町。

10代から20代の若者に「大麻を使ってみないか」と何らかの誘いを受けたことがあるか聞いてみると…。ある10代の女性は「ない」と答えた。他の10代の男性にも聞いてみたが、友達が誘いを受けたとかも聞いたことがないという。

一方で、ある20代の男性は、海外で目の前で大麻を吸いながら話をする人物と出会い、「日本とは違うな」と感じた事があると答えた。

さらに10代の男性は、1回だけ誘いを受けたことがあると答えた。同世代くらいの人物に「お前もやるか?」と誘われ、大麻は遠い存在だと思っていたが、身近でそういう薬物が流行していて、すぐ手に入るのかなと感じたという。

石川県警によると、県内で大麻の使用や所持などで検挙された人数は2018年から増加傾向にあるという。このうち、6割ほどが10代や20代の若者。

大麻に手を出す要因の一つに「大麻は体への悪影響がない」などといった誤った情報がインターネットを中心に拡散されていると言う現状があるのだという。専門家は、こうした誤ったイメージが広がっている現状に警鐘を鳴らす。

国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部、心理社会研究室の嶋根卓也室長は「10代の早い時期から大麻を使い始めることによって、依存症になるリスクがある」と指摘する。実際に依存症と診断された事例もあり、大麻を使っても依存症にならないという情報は明らかに間違いだと、明確に否定する。

嶋根室長は、大麻はグミやクッキーなどの加工品に形を変える事によって、抵抗感を軽くしているのではと分析している。

SNSで「スマホ一つで購入できる」手軽さが背景に

長年、違法薬物の捜査に携わってきた石川県警組織犯罪対策課の中根次席は、若者が大麻に手を出してしまうきっかけの多くが友人や知人からの誘いだとする一方、近年は、SNSを通じて大麻を手軽に入手できる環境にあると明らかにした。その上で、「スマホひとつで購入で購入出来る手軽さが問題だ」と指摘する。

以前は密売人がいわゆる「密売電話」を持っていてそこに電話をかける方式だったと言う。このため、薬物の購入には高いハードルがあった。しかし、最近はSNSに薬物の隠語や絵文字を使って密売広告や密売をうかがわせるような書き込みをするようになったのだという。

実際にSNS上の投稿を見てみると…石川・富山などの自治体名が羅列され、その後に書かれているのが、「手押し相撲」一見、意味が分からない。

実はこれ「直接販売する」という意味なのだと中根次席は教えてくれた。

そしてその下に表現されたのが絵文字…中根次席によると、『氷』が『覚醒剤』、『はちみつ』が『大麻リキッド』、『自転車』が『コカイン』、『ブロッコリー』が『大麻』だという。

つまり『ブロッコリー2種1/5000』と書いてあれば、「大麻が2種類あります。1グラム5000円」と表しているのだという。

気軽にアクセスできるSNSで行われる薬物の密売。中根次席は大麻の危険性を、十分知ったうえで、取り引きに巻き込まれないよう注意を呼びかける。

中根次席:
こういうものが隠語だとか、この絵文字が何を指しているかという、知識を付けていただければ、(薬物乱用を)防ぐことが出来るかなと考えています。

中根次席は、薬物によって学校や職場を失い、家族や友人も失う。自分の事が大切であれば、薬物は使用しない、友達が大切なのであれば使うのを止めてほしいと呼びかける。

薬物のリスクからどうやって子どもたちを守るのか。現在、小学校から高校まで薬物乱用防止の教育が行われているが、嶋根室長は薬物依存症のリスクだけでなく若者が困ったときの相談先や大麻など薬物を誘われた際の断り方を、実践的に若者に教えていくことが若者の身を守ることにつながるとも話している。

(石川テレビ)

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