北陸新幹線の開業から10年、富山駅周辺は大型の商業施設が建ち、見た目もかなり変わりましたよね。
ただ、物価高が続くいま、テナントの入居・撤退が相次ぎ運営会社は難しい舵取りを迫られています。
富山駅の北側に去年3月完成した「Dタワー富山」。
大和ハウス工業が建設した地上7階建ての複合テナントビルです。
2階から7階はオフィススペース、1階は飲食店情報サイト運営の「ぐるなび」が飲食店の誘致、運営までを総合的にプロデュースするフードホールで、地元を中心に6つの店が入っています。
しかし、オープンから1年が経ち営業しているのは2店舗だけ。
4店舗は撤退し、空きテナントとなっています。
また、オフィススペースの稼働率は去年12月時点で46.7%と伸び悩んでいます。
こうした中、先月末、三井不動産系の投資会社、「日本ビルファンド投資法人」がDタワー富山を取得。
ビルの完成から、わずか1年4ヶ月でオーナーが変わりました。
*日本ビルファンドマネジメント 川上俊さん
「富山エリアに足元20年オフィスビルの新規供給がない、今後も目立った供給がない中、好立地なところ、規模感や築年数などから競争優位性が強い物件と考えて取得した」
築浅で、エリア随一の設備を持つ物件と評価し、取得したといいます。
共用の休憩ラウンジ
*日本ビルファンドマネジメント 川上俊さん
「ここは休憩に特化した形(の共有スペース)。(Q入居する会社にとってこういった設備も決め手に?)このような共用設備はなかなかない。このエリアでこの物件を選んでいただく1つの選択肢になると思う」
今後1年で稼働率を100%近くに引き上げるとしています。
一方、こちらは2022年富山駅の南側に誕生したマルート。
「普段使い」をコンセプトに食料品や日用品を展開し、平日も多くの買い物客で賑わっています。
マルートを運営する「富山ターミナルビル」の立石社長です。
*富山ターミナルビル 立石善裕社長
「物価高で客単価が上がったのではないかと思ったが、ほぼほぼ変わっていない。価値の感じられるものであれば買われるという状況より(客から)選別されている」
オープン時はコロナ禍で、今は物価高。
厳しい環境のなか、昨年度は新たにオープンしたテナントが5店舗、撤退したテナントが5店舗と一進一退の状況が続いています。
それでも売り上げは前年比を上回り、会社全体の営業利益は5期ぶりに黒字に転じました。
立石社長は、自治体などと連携した駅周辺でのイベントの成果が出てきたと分析しています。
*富山ターミナルビル 立石善裕社長
「正直申し上げてこれまで非常に難しかった(2022年の)マルート開業を機に富山ステーションシティとして色んなイベントを毎週末、駅前広場でやってきた。それによって駅前の人の流れ・集客に一定の成果が出てきている。以前より前向きに検討してもらえるテナントが増えたのが正直な肌感覚、あと一押し二押しで(空きテナントの)出店にいたるのでは」
マルートは今年度中にほぼ全区画の出店にめどが立つとしていますが、「若年層の取り込み」が今後の課題だとしています。
*富山ターミナルビル 立石善裕社長
「こちら今月オープンした『ルナーアース』で、北陸圏では初。手ごろな価格でバラエティに富んだ商品を取り揃えている。若年層にオシャレを楽しんでいただくことがコンセプト」
ファッション性の高いアクセサリーストアや衣料品店、SNSでも人気のりんご飴を販売する店など今年に入り新たな店を次々と迎えました。
*富山ターミナルビル 立石善裕社長
「(Qどういった狙い?)地域の客に日常的に利用いただける施設として(いるが)、若年層を、通学で(駅前を)使っているけれどもう一つ取り込めていない課題感がある。より若年層に身近に感じて頻度高く利用いただけるマルートにしたいと(新規出店を)進めている」
駅前商業施設のテナント誘致について専門家は、いかに地元の人の利用を促すかがカギになると話します。
*富山国際大学 現代社会学部 大谷友男教授
「富山駅は県外の方がたくさん来られるけれど、地元の方の割合が半分以上、そういった方がお金を使わないとなるとベースの部分が弱いとなかなか難しい。地元の人が支持するものを求めて(観光客などは)アクセスが悪くても足を運ぶ。地元の人に支持されているものを(商業施設は)提供していくことが大事。外から来る人を見ていたら長続きはしない」
まちの顔にあたる富山駅前の商業施設にとって、より地元の人に愛着をもってもらえるか定着のために重要となりそうです。