松本市立病院(長野県松本市)は、2025年4月の分娩の際に、赤ちゃんの脳に後遺症が出る可能性がある医療ミスが発生したと発表した。助産師が、胎児の心拍モニターに異常な波形が出ているのを医師に報告するのを怠ったことで対応が遅れたのが原因だという。
赤ちゃんが脳に障害負う医療ミス
松本市立病院は7月22日、記者会見を開き、産科で発生した医療ミスについて説明した。
発生したのは2025年4月。20代女性が陣痛を感じて入院した際、胎児の健康状態を把握する「心拍モニター」に異常な波形が出ているのを助産師2人が確認したが、心拍数が回復しているため問題がないと判断し、医師に報告しなかったという。

その後、分娩中に胎児の心拍が低下。医師の判断で急きょ、吸引分娩を行ったが、赤ちゃんは仮死状態で生まれた。
救急搬送されて別の病院で処置を受け、脳に障害を負う「低酸素性虚血性脳症」と診断されたという。

北野喜良病院事業管理者は「(患者に)重篤な後遺症が予見されています。ご家族の皆様に心より謝罪いたします」と述べた。
赤ちゃんには後遺症が出る可能性
家族によると、赤ちゃんはその後、退院し、自宅で過ごしているという。
授乳したり、泣いたりすることはできるが、病院の検査で脳にダメージがあることが確認され、後遺症が出る可能性があるという。

病院によると、院内マニュアルでは、異常波形があれば、速やかに医師に報告することになっていたという。
病院は医療ミスと認め、家族に謝罪したという。
また、いち早く報告し、対処していれば「このような事態が起きる可能性は低かった」としている。
佐藤吉彦院長は「(報告が)早ければ早いほど可能性は低かったと考えております。少しでも異常があれば報告するのが常ですので、今回のように報告しないで、長時間たってしまったことは極めて異例な状況」と述べた。
「決して許すことができない」
子どもを出産した女性の両親は「医療過誤により、脳に重度のダメージを受けた孫の障害と、娘が精神的、肉体的に受けた傷は、生涯消えることがなく決して許すことができません。病院側の説明には納得できない点もあり、刑事告訴も考えております」とコメントしている。
医療ミス受け分娩の扱いを休止
臥雲義尚市長「このこと(報告)を怠ったのは極めて重い事態。この産科を継続していくのか、いかないのか、慎重かつ総合的に判断していく必要がある」と述べた。

また、医療ミスを受けて市立病院は23日から分娩の扱いを休止し、体制の見直しを検討すると発表した。
8月までに予定されていた十数件の分娩については、近隣の病院を紹介するなどして対応するとしている。
(長野放送)