ホストたちと過ごす” 癒やし“のひとときを求めて、女性たちが訪れるホストクラブ。しかしいま、そのホストクラブが大きな転換点を迎えている。
「売り掛け」「色恋」女性に高額請求
「注げ、注げ、そ・そ・げ!」。手拍子、かけ声とともに勢いよく注がれるシャンパン。巷のホストクラブで毎夜のように繰り広げられる光景だ。

ゴキゲンな女性客は「来るのは週1。イケメンでみんなが楽しい」と燥ぎ、また別の女性客は「月に30万円くらい使う」とグラスを空ける。

福岡市博多区の中洲。“九州一の歓楽街”だ。しかし…。、
「中洲のホストクラブに約60万円の売掛金があり、担当ホストから『今年中に返済しないと実家に行くぞ』と言われた」

2024年12月、福岡県警に寄せられた20代女性からの1件の相談。売り掛けとは、客の飲食代をホストが一時的に立て替えて店に支払い、後日、客がホストに返済する、いわゆるツケ払いのことだ。

ほかにも「私に『結婚しよう』と言うためにホストが実家に挨拶に来た。そのあと店でシャンパンタワーを注文される営業を受けた」などと恋愛感情につけこんで、勝手に高額な商品を注文されたという相談もあったという。

福岡県警によるとホストクラブに関する相談の数は、ここ数年で右肩上がりに増えている状態だ。2024年は、2021年の2.8倍、94件の相談が寄せられた。

悪質なホストクラブが社会問題となるなか、国が講じた策が『改正風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)』だ。
「無理させるホストが減れば…」
6月28日に施行された改正風営法では、ホストクラブなどが、“してはいけない行為”として客の恋愛感情につけ込む、色恋営業で高額な飲食を要求することや客が注文していない飲食を提供すること。さらに売り掛けをさせるために客を脅すこと。その支払いのために売春をさせたり性風俗店で働かせたりすることが禁止行為とされている。

改正法が施行された初日。公安委員会の許可を受けずに営業した疑いで福岡県警は、中洲にあるホストクラブの経営者やホストら男4人を逮捕した。

今回の改正法を中洲の現役ホストたちは、どのように感じているのか。
中洲のクラブに勤めるホストのひとりは「お客さんに色恋とかダメって言われてて、あとシャンパン煽るのかもダメって言われてて…。それが良さだったところもあると思うんですけど、それで無理しちゃう女の子もいると思うので、無理させるホストが減っていけばいいんじゃないかな」と話す。

また別のホストに売り掛けは、以前からあったのかと尋ねると「過去の文化としてはあったんですけど、もうほぼないんじゃないですかね。国に従うしかないので…」と答えた。

さらに別のホストは「元から綺麗な売り方をしていたら、そんなに変化することもないですし、いままでの“嘘の価値”みたいなものが、淘汰されていくだけなんじゃないかな」と話した。

中洲で働くホストの多くからは、今回の改正法に対して前向きな声が聞かれた一方「業界への逆風を感じていて、今後、ホスト業界がどうなっていくか不安だ」という本音も聞かれた。
売り掛けを一切「しない」「させない」
中洲のホストクラブ『Club Leo』。スタッフの齋藤さんは「月間の売上ナンバーを(店内に)貼りだしていたんですけが、風営法の改正で貼り出しを全て撤去しました」と店内の変化を話す。『営業成績を直接的に示す表示』も今回の改正法で規制の対象になり、ホストの売り上げ額や指名数が書かれたパネルも表に出せなくなったのだ。

「お客様からは『何か寂しくなったね』という声はやっぱり結構、多かったですね…」と斎藤さんは少し寂しそうに話す。

“店の顔”として2週間前までナンバー1の肩書きがついていた『club Leo』のノアさんは「昔は『ナンバー1を獲りたい』とかめっちゃ思ってたし、負けず嫌いだったんですけど、今年に入ってから1回も1位を意識したことないというか、逆に、だからそんなに風営法改正のダメージはなかった。1人の客がめっちゃ会いに来るじゃなく、ファンをめっちゃ増やして、何十人も会いに来るみたいなものが理想像なのかな」と今後について話す。

そしてこの店では、高額な商品の注文が入ると客から先に料金を受け取る前払い制度を新たに導入した。売り掛けを一切「しない」「させない」ための対策を取り、客もホストも安心して楽しめる空間を作っている。

『club Leo』の齋藤さんは「ホストクラブは世間の声、当たりがちょっと強かったりするので、そういうのも僕は治していきたいなと思う。本当によりクリーンに、これ以上にクリーンにやっていきたいなと思っております」と話した。
「全県下で取り締まりを加速」
福岡県警は、7月に入って一斉立ち入り検査を実施。取り締まりに力を入れている。

生活保安課の上村功一警視は「お客さんはひとときの憩いを求めて店に来られる訳で、それを食い物にするような営業というのは許せません。また、中洲だけではありません。全県下に於いて取り締まりを加速させていきたい」と今後も手を緩めない姿勢をみせる。

ホストクラブを訪れる女性たちが、辛い思いをすることがないように、安心して楽しめるホスト業界の環境作りが求められている。
(テレビ西日本)