暑さが本格化し海や川で楽しむシーズン到来!だが全国では水難事故が相次いで発生し、犠牲になった子どももいる。そこで、悲しい水の事故から子どもたちを守ろうと、鹿児島・霧島市の小学校で水難救助のプロによる出前授業が行われた。服のまま水中に入ってしまうのがいかに危険か実感した児童は、助けを求めるポイントを真剣に学んでいた。
水難救助のプロ・海上保安庁の機動救難士が小学校で出前授業
全国で、子どもが亡くなる水難事故が後を絶たない。
6月26日には、福岡市の海岸で小学6年の男の子が溺れ、死亡したほか、7月に入ってからも、神奈川県の海水浴場で男子中学生が死亡した。
こういった悲しい水難事故を減らそうと、海上保安庁の機動救難士たちが鹿児島・霧島市の国分小学校で出前授業を行った。水難救助のプロが「万が一の時に生き残るすべ」を伝える授業だ。
「重すぎ!重!」服を着て水に入ると「思うように体が動かない」
国分小学校のプールでは、6年生の児童が一列に並んで水の中を楽しそうに歩いていた。しかし何か様子がおかしい。子どもたちは水着ではなく、普段着を着ていたのだ。
「なんか重い」「重い!」みんなの動きがとてもぎこちない。Tシャツやズボン姿で、さらに、履物を履いて水の中に入ると、衣類はべったりと肌にまとわりつくのに加え、靴の中にも水が入り込み「重すぎ!重!」と、子どもたち。
服を着たまま水の中に入ると、思うように体が動かなくなる感覚に、みんな驚いた様子だった。

「生き残るすべは、体力を温存し楽な姿勢で浮き続けること」
普段着のまま水の中に入るようなアクシデントが発生した場合、「生き残るすべは、体力を温存しながら最も楽な姿勢で浮き続けること」と、機動救難士は強調した。さらに「楽な姿勢で浮いて助けを待つとなると、まずは体力を使わない、暴れたりしない。そうしたら、口の中に水が入ることも少ない。楽な姿勢で待ちましょう」と、具体的な対処法を指導。児童は服を着たままあおむけで両手を広げたり、空のペットボトルの浮力を利用したりして、楽な姿勢でぷかぷかと浮く練習をしていた。

「服だと水の中がどれだけ危険なのか分かった」体験したからわかる怖さ
参加した男子児童は「とっても服が重くて、水着じゃないとどれだけ水の中が危険なのか、分かりました」と、率直な感想を話してくれた。
また、ある女子児童は「溺れている人がいても、無理に助けないでペットボトルなどを投げたりして助ける。自分が溺れたときも楽な姿勢で浮けるようにしたいなと思いました」と、実際に取るべき行動について理解を深めたようだ。

子どもが海や川に遊びに行くときは大人も一緒に
海上保安庁鹿児島航空基地の森慧機動救難士は、「夏休みは楽しくなって、海や川に子どもだけで行ってしまうこともあると思うんですけど、まだ小学生なので大人の方と行ってもらえれば、事故を未然に防ぐことができるのかなと思います」と、大人の目が届くところで水遊びをするよう、子どもたちに呼びかけた。

海や川で水難事故を防ぐために注意すべきポイント
海や川でレジャーを楽しむ機会が増えるのを前に、注意すべきポイントを鹿児島大学水産学部の西隆一郎教授に聞いた。
【川で注意すべきポイント】流れが速い場所を事前に確認
まず、川で遊ぶ際に注意すべきことについて「流れが速いところと、ゆったりしたところの速度の差がはっきりとしているため、流れがゆっくりしたところで安全に楽しんでいたつもりでも、流れが速いところに入りやすい」と、西教授は川特有の危険性を指摘する。
そして、西教授は事前に危険な場所を確認するのが大切だという。
「水が流れるところが岩で挟まっていると、だんだん水面が少し波打って、気泡が出始める。」水色ではなく、白く流れている部分は流れが速いので、注意が必要だ。さらに、西教授は「高いところから見ると流れが速い場所が分かりやすいので、少しでも高いところがあれば見下ろすような形で見てほしい」とアドバイスした。


【海で注意すべきポイント①】深い場所を事前に確認
海の場合、波の打ち寄せ方に注意してほしいと、西教授は言う。砂浜に、より深く波が押し寄せている所は、沖が深くなっている可能性があるそうだ。
「沖に流れが出やすいところは、砂浜では海底がえぐれ、少し深めになっている。陸側に海岸線が後退している場所は、水の中もそうなっている」と西教授は説明する。

【海で注意すべきポイント②】離岸流に巻き込まれたら
海で多いのが、離岸流による事故だ。
離岸流とは、陸地から離れるように沖に向かう海水の流れで、スピードが速く、沖に流され事故になるケースが報告されている。
もし、巻き込まれてしまった場合には「自力で流れに逆らわないで横に泳いで、離岸流を抜けたその後に、陸を目指すのが重要」と、西教授は語る。

海や川のレジャーを安全に楽しむために、事前に危険な場所を確認し、万一危険な目にあった時にどう対応したら良いか家族で話し合っておくなど、あらかじめ備えておくことが重要といえそうだ。
(鹿児島テレビ)