この春、絵本『ながい ながい おうさまの はなの はなし』を刊行したしまだかほさん。「どーもくん」などのこま撮りアニメを手がける合田経郎さん。かつて同じ制作現場で働いていた話題のクリエイター同士の対談が実現しました。
絵本『ながい ながい おうさまの はなの はなし』(2025年4月10日発売)の発刊を記念し、2025年6月19日(木)に、作者しまだかほさんと、アニメーション作家 合田経郎さんによる対談を実施しました。合田さん率いるドワーフは、数々の話題作品を世に送り出し続けているアニメ制作会社。そして、独立前にドワーフに所属し、そこで多くのことを学んだという しまださん。その経験が絵本作りにどう生かされたのでしょうか? また、合田さんから見た、しまださんの仕事ぶりや作品の魅力は? かつて現場で苦楽を共にした2人だからこその、「モノづくり愛」あふれるトークをお届けします。
▲『ながい ながい おうさまの はなの はなし』書影
▲こま撮りえいが『こまねこのかいがいりょこう』ポスター
「同じ制作畑を歩んだ二人、不思議な縁でつながって」
――お二人とも今日はよろしくお願いいたします。まずは自己紹介を。
合田 株式会社ティー・ワイ・オーというテレビコマーシャルの制作会社でディレクターを務めた後、2003 年にドワーフ(※)という制作スタジオを立ち上げました。人形の「こま撮り」をメインに、いろいろなアニメーションやキャラクターを作っています。NHK キャラクター『どーもくん』、NHK「みんなのうた」の『ぼくはくま』、劇場公開された『こまねこ』シリーズなどのほか、CM のアニメーションも制作しています。
※現在ドワーフは、株式会社 FIELD MANAGEMENT EXPAND のアニメーションコンテンツ事業部となっています。
しまだ 大学の卒業制作でもこま撮りアニメを作っていて、前から『どーもくん』が好きだったので、ドワーフが入っているティー・ワイ・オーを受けました。その後、ドワーフが大きくなる段階で「来ないか」と声をかけていただいたときは、もう飛び跳ねるような嬉しさで…。二つ返事で「行きます、ぜひ!」っていう感じでした。ドワーフでは、主に『どーもくん』のテレビシリーズで合田さんのアシスタントディレクターをやらせてもらいました。1話だけ自分でコンテを書いて「あしあと編」を演出させてもらったんですけど、それがすごく大きい自信になって、今の自分を支えているなって感じがしています。ほかにも『うみうる』シリーズなど、いろいろやらせていただいたんですけど、任せてくれたのがすごくうれしくて…。合田さんのキャラクターの世界観を自由にしていいよって、お話も結構自由に作らせてもらったのが楽しくて、ワクワクしながら仕事をしていたのを覚えています。現在はイラストレーターとして、イラストを描くことやキャラクターデザインを軸に、お話も作っています。アニメもやりたいと思いつつ、絵本を描いています、という感じです。愛知に引っ越して、フリーランスで 10 年以上やっているんですけど、たまにドワーフからも仕事をいただいて、すごく支えられているなと思います。ありがたくって、もうなんか実家みたいな心の拠り所になっていますね。
合田 ドワーフに入ったの、かれこれ何年前?
しまだ 20年前に入って4年間ぐらいいました。
合田 ドワーフも変わりましたよ。(しまだ)かほちゃんがいたときは、なんか全員で必死になってやってたっていう感じがあったけど、今はもう少しチームワークでできるようになってきて、だいぶまともな時間に帰れるようになってきた(笑)。
でも、そういう礎(いしずえ)を作ったのは、かほちゃんだったり、最初の頃からいた人たち。その礎の上に今があるって感じですよ。
しまだ そう言っていただけたらうれしいです!
▲旧知の仲だけあって、オンライン対談は笑顔あふれるなごやかな雰囲気に。しまだ かほさん(左)、合田経郎さん(右上)、しまださんの担当編集者・田中百合(右下)
「アイデアのかほちゃん」「信じさせてくれる合田さん」
――合田さんにとって、しまださんはどんな印象だったんですか?
合田 自分は、ティー・ワイ・オーで CMの仕事をして、キャラクターとこま撮りに出会ったことでグワッと人生が変わり、「もっとこま撮りをやりたい、キャラクターを作ってみたい」と、それに特化したドワーフっていう場所を作らせてもらいました。
CMの仕事は毎日頭の体操みたいで、とにかく「アイデア、アイデア!」っていう日々。それはしんどいっていえばしんどいんですけど、おかげでだいぶ鍛えられたところがあります。
かほちゃんも同じようにCMの仕事から入ってきてるので、やっぱり「アイデア、ア
イデア!」で鍛えられたところがあるんだろうなって思いながら、一緒にやってました
ね。
しまだ うん、うん。
合田 ほんとに、かほちゃんは最初からわりとできてる人だったので、なんかもう任せちゃえっていう感じでしたよ。例えば、グリーティングカードや暑中見舞いの仕事をお願いすると、ただのカードじゃなくて、折ると立つようになっているとか、切り抜かれてるとか、なにかアイデアを盛り込んでくるんですよ。実現できなかったことのほうが多いですけど、とにかく「かわいい」とか「きれい」だけじゃなくて、必ず何かしら1つアイデアを盛り込んでくるっていうのが、やっぱりかほちゃんらしいなって思いましたね。経歴では確かに上司と部下だし、ディレクターとアシスタントではありましたけど、ドワーフ自体が、『面白いとかかわいいって何なのかな研究所』みたいなイメージで、その研究所で一緒に研究してる先輩・後輩っていう感じだったんです。だから今、離れても研究仲間っていう感じがしてます。
しまだ うれしいです。ありがとうございます(うるうる)。
合田 かほちゃんは、ドワーフに来たとき不安はなかったんですか? 華やかなCMの世界から、ずいぶん変わったと思うし。中村橋のぼろいスタジオで、「これ大丈夫か?」って感じになんなかった?
しまだ いや、全然不安なかったですよ。もう「やったー!」しかなかったです。CMの仕事は、次から次へともう 1 週間に何本も違う話がワアッと来るのに対して、ドワーフでは、すっと集中できる感じがすごく新鮮だったし、ワクワクして楽しかったですね。不安も何もなかったです。
――では、しまださんにとって合田さんの印象は?
しまだ 朝から晩まで隣の席にいたんですけど、嫌な思いをしたことが一度もなくて、仕事においても人としても、すごく尊敬しています。プライベートが謎で、家の話はあんまり聞いたことがなくて…。でも謎めいた部分は合田さんの中でちゃんと守りつつ、みんなのことはしっかり見ていてくれて、世界を上のほうから見通している感じだなと思っていました。合田さんが見ている方向がいいものだって、ちゃんと信じさせてもらえるから、関わっている人たちもみんな同じ方向を向いて、一丸となって頑張っていくことができるし、だからすごくいいものが生まれる。そこが合田さんの魅力なんだろうなって思います。合田さんから出てくる言葉もキャラクターも優しくて、ちゃんと合田さんフィルターがかかっているから、キャラクターがみんなから愛されているのが伝わることにすごく納得できるんです。あと、印象深かったのが、「てをつなごう だいさくせん」。
※「てをつなごう だいさくせん」……東日本大震災の被災地の子どもたちを笑顔にするため、企業の垣根を超えて人気キャラクターたちが手をつなぐ姿を描いた、合田さん発のプロジェクト。三陸鉄道でそのイラストのラッピング車両「てをつな号」も走った。
しまだ あのとき、キャラクターたちがみんなに力を与えているのを目の当たりにして、合田さんはすごい! 素晴らしい!って、ほんとうに感動しました。
合田 東日本大震災のとき、みんな「自分には何ができるのかな?」って考えて、ご飯が作れる人は行ってご飯を作り、土木ができる人は土木をやり…と、いろんな人がいろんなことをやった。そこで、「おれ何ができるんだっけ?」と考えたら、やっぱり人になごんでもらったり、ちょっと楽しい気持ちになってもらったり、というのが自分のできることなんだって思ったんだよね。「あ、おれの仕事、それだったんだ」って、そのとき改めて気づいたから今があるっていう感じかな。
「アイデア満載! かほちゃんらしさ炸裂の絵本ができた」
――では、しまださんの市販デビュー絵本『ながい ながい おうさまの はなの はなし』について、合田さんの感想をお聞かせください。
しまだ 合田さんが私のインスタに書き込んでくださったコメント、飾ってます!(コメントを印刷して入れたフォトスタンドを見せる、しまださん)
▲絵本にコメントをくださった合田さんのインスタグラムが嬉しくて、スクリーン
ショットを撮影して額に収めているそうです
合田 あらあら(笑)。いや、ほんとに「アイデア! アイデア!」のかほちゃんらしく、アイデア込めまくりやがったなっていう絵本で…。
しまだ はい、もうギュンギュンに込めました!
合田 本当に全ページいろんなアイデアが入ってて、よくぞここまで入れ込んだなって、読んでて面白かったです。
▲絵本の 1 見開き目。王様の鼻が長いことがすぐにわかる!
▲王様の長い鼻の先の行き先はこちらでした!
合田 最後に「あれ、おうさまとおひめさまの鼻ってどこでつながってたの?」ってなって、ページをさかのぼると、「あ、ここでつながってたんだ!」ってわかるとか、本当に1 回読んで面白いだけじゃなくて、何回も何回もいろんな細かいところを探して楽しめるっていうのが、実にかほちゃんらしさ炸裂ですね。
合田 ドワーフを離れた後も、子育て、震災、コロナといろんなことをたくましく乗り越えながら、こうやって一冊の絵本が結実したっていうのはすごいなと思うし、同じ『研究所』のメンバーとしてやっぱりうれしかったですね。この絵本のアイデアは、どういうふうに生まれたの?
しまだ もともとは、『なんで?』という、いろいろなテーマが入っている月刊絵本で、「5見開きの『つながるお話』を考えてほしい」っていう依頼だったんです。結局そのときに掲載されたのはヘビのお話で、ヘビの体が次のページへつながって、『もしかしてヘビかな? ヘビじゃないかな? ヘビかもしれないな?』みたいな感じで進み、最後はヘビランドでした!っていうものでした。これも『つながる』っていうテーマで出した案の中の一つだったんですけど、どうしてもゾウの案が諦められなくって…。
合田 ゾウの案もあったけど、その時は採用されなかったんだね。
しまだ はい。例えば、手品って一気に楽しまないと、途中でカットを切ったら面白くないですよね。それと同じように、「このお話もワンカットだからこその面白さがある! 絶対に絵本にしたい!」と思ったので、担当編集者さんに猛プッシュをし続けたら、じゃあ15面でお話を組み直してみて、となって…。そこで、どうやったらもっと面白くなるだろうかと考えていたとき、全然関係ないところでふと、小さい頃『自分のお母さんの気持ちってあまり考えたことなかったな』と思ったんです。きょうだいでお菓子を食べたとき、最後の1個をめぐって子どもだけでじゃんけんをしてたけど、実はお母さんも食べたかったんじゃないか、という気づきです。『お母さんなんだから我慢して当たり前?』 『あれ? なんで我慢しなきゃいけないんだろう?』みたいな…。そういうふとした気づきが化学反応を起こして、『あっ、王様なんだから当たり前って思っていたけど違う』みたいなお話ができるんじゃないかと思い付いたんです。
合田 おうさまにとって、鼻が長いのは偉そうな象徴みたいに見えるけど、実はみんなの役に立ってる、楽しんでる、っていうのもあるってこと?
しまだ 長い鼻が偉い象徴っていうふうには思ってなかったです。ただ、『おうさまの鼻はみんなのためになって当然。怒らないし、優しいし、何をやってもいいよ』って言っているけど、本当はどうなんだろうってこと。みんなもじいやも気付いてなかったけど、ふとしたことで『あれっ?』って気づく。ある時、『自分の親にも気持ちがあるんだ』って気づくみたいに。それが伝わるといいな、と。例えば、「おうさまの鼻が蚊に刺された」っていう場面もその1つなんです。おうさまにも気持ちがあるって気づく。「おうさまの鼻が気持ちよさそうに動きました」の場面もです。
合田 お話の中では、おうさまの鼻をたどっていろんな場所に行くけど、場面選びには難儀しましたか?
しまだ 暑い場所とか寒い場所とか、もうあれもやりたい、これもやりたいってどんどん浮かんできて、紙面にならなかったアイデアもあるぐらいです。ラフでは、鼻が車の上や信号の上を渡って、その下を車を走ってるみたいなスケッチもありましたね。
合田 難儀して絞り出すというより、アイデアがありすぎて削ってった感じなんだ。
しまだ:そうですね。最後のほうは『もう盛り込んじゃえ!』というところもありましたけど。
合田 この絵本の中には、たくさんの隠れキャラみたいなやつらが出てきますよね?
▲『ながい ながい おうさまの はなの はなし』には、遊び心いっぱいのサブキャラクターが描かれています。絵本の中でこの子たちを見つけるのも楽しみの一つ。(『ながい ながい おうさまの はなの はなし』特設サイトより
しまだ ドワーフで培ったことの一つに、グッズ展開やキャラクターデザインのアイデア出しがありますが、私はその作業がすごく好きだったので、Tシャツを作ったり、ぬいぐるみを作ったりっていうのが、やりたくてやりたくて…。
だから話の中にぬいぐるみとかクッキーとか、もう売ればいいんじゃないかっていうレ
ベルの企画物たちがいっぱい出てきます。このまま商品化できるなあって…(笑)。
合田 もしかしてグッズ展開を考えているのかな?っていう「色気」は、確かにちょっと感じました(笑)。でもそこ、たぶん描いてて楽しい部分ですもんね。
しまだ あ、ばれちゃってましたか?(笑)
合田 「なんかやる気じゃん!」と思いましたよ。ちょっと謎っぽいキャラクターが出てくるのも、ぼくの好みだったりして…。例えば雪山の中のまんまるさん。まんまるさんだけのスピンオフが見たいって思いました。
しまだ 行って帰ってくるっていう、いちおうの構想はありつつ、違う方向に行ってみたり、何かがいたりと、次につながってお話が膨らんでいけるような、いろんな伏線を散りばめています。例えば、サルやウサギが長い何かを測っているんですけど…。
合田 どうやら砂漠の向こうに行くらしいっていうのが見えますよね。これはもう、続くシリーズをやる気ですね?(笑)
「アニメとは違う、絵本ならではの面白さと苦労が…」
――絵本には、アニメーションとは違う面白さってあるでしょうか?
合田 アニメーションだと 1 秒 1 秒が流れていってしまうけど、絵本だと1ページを 1
時間見てもいいし、10秒でめくってもいいし、本当に読む人しだいで楽しめる。そういう絵本の楽しさってやっぱり憧れですね。『ながい ながい〜』は絵本の良さを上手に使っていて、アニメーションより絵本のほうが面白くなるだろうと思いました。
しまだ もしもアニメでワンカットで撮ったら、超大変ですもんね、このお話。すごく広いスタジオを作って、背景を置き換えていくのかな? ちゃんとつなげるのはかなり大変そう。近づいたり離れたりとカメラアングルも変わりますし…。
合田 『もうCGのほうがいいんじゃない?』とか言っちゃいそう(笑)。ちなみにおうさまは鼻の上にティーカップとか載せられて、『アチッ!』とかならないの?
しまだ きっと、たまに『アチッ!』となるけど、鼻を使ってみんなが喜ぶのが嬉しいから、「どうぞ」っていう感じだと思うんです。『アチッ!』っとさせちゃった人は、
『あ、おうさま、ごめん!』みたいな…。
合田 そういうときは、鼻がブルンって動いたりするのかな?
しまだ はい。動くから、『ああ、おうさまの鼻だった!』って気づくんだと思います。
合田 みんな『おうさまの鼻だよね』と思いながらカップ載せたり、飲んだり、使ったりしてるんだ(笑)。それはほんとうに愛されてないとできないですよね。
しまだ とっても優しいおうさまなんです。
合田 絵本の反響はどうですか?
しまだ 図書館に行ったら、すでに置いてもらっていました! 予約が入ってずっと借り
られている状態みたいでうれしかったです。あと、いろいろな人が『書店にあったよ!』って教えてくれて、幸せな気持ちになっています。
合田 子どもたちは、読んで間違いなく楽しくなっているんじゃないですかね?
しまだ 学童保育で支援員さんが「1 年生から 6 年生までみんなすごく楽しんでくれた」と言ってくれたとか、「繰り返し読みました」っていう感想が来てるという話は、担当編集者の方から聞きました。
合田 あと、これだけたくさんの色を使っても、はちゃめちゃにならずにちゃんときれいに見えるっていうのが、ものすごい技術ですよね。
しまだ ありがとうございます。色校正を何枚も出してもらいました。iPadで描いているので、紙に印刷した時にやっぱり感じが違ってきちゃうんですよね。そのときに、「もうちょっとこんな感じで」っていうこちらのニュアンスを、ちゃんとキャッチしてくれるすばらしい人がいて、かなり助けてもらいました。本当は1枚につながった状態で描きたかったんですけど、レイヤーが1000枚以上重なっていてデータが重くなってしまうので分割したんです。そうすると、隣のページと鼻のつなぎめがずれないようにするのが毎回すごく大変で、とても苦労しました。鼻が上を向いていたりすると合わないんです、水平にしないと。
▲見れば見るほど細かい発見ができる、楽しいイラスト。しかし、最初から最後までつなげて一枚絵にすると、鼻のつなぎめはずれないけれど、データが重くなり過ぎて
しまう、というジレンマが……。(絵本『ながい ながい おうさまの はなの はなし』より)
合田 続編、考えているんですか?
しまだ ぜひ!とは言われていますが、ほかのお話も進めているので、まずはそちらからになるかもしれません。
合田 確かに、毎回「つながる」のばかりだと大変ですもんね(笑)
しまだ 広告やアニメで鍛えられたことを活かして、新しいお話を「発明」して、どんどん出していけたらいいなという気持ちです。そういえば先日、担当編集者の方と一緒に母校の多摩美術大学に行って、「絵本作り」の授業をしたんです。その時も、どうやってお話を作っていくか、みたいなところをお話ししました。私、自分で出した案をトーナメント形式で戦わせて、勝ち残ったものを提出するんです。それも、『ど真ん中』トーナメント、『ちょっとズレてる』トーナメント、『もっとズレてる』トーナメント、と3つ並行してやったりしています。
合田 おお! それってCM制作の現場でやってきたことと同じですね!
しまだ はい、CMでは、やはりとても鍛えられた気がします。
合田 言われたとおりのことをちゃんとやる「ど真ん中の案」と、ちゃんとやらないけど「面白い案」と、振り幅を見せろって言われましたよね。で、考えてて楽しいのは、ど真ん中じゃないやつなんだよね。
しまだ そうなんですよ!
「アニメも絵本も、自分が作っていて楽しいものを作りたい」
合田 かほちゃんは、読者のイメージってあるんですか?
しまだ うーん、あるといえばある、という感じですかね…。子どもをびっくりさせたいっていう思いが常にあって…。読んだ瞬間、テンションが「くっ」と上がるような、「こんな視点があったのか!」という「人生の別の視点」みたいなものを提案して、子どもの世界をもっと広げてあげたいっていう気持ちです。
合田 ぼくの『こまねこ』という作品は、セリフが「にゃ」だけで、観た人に自分で考えてもらうんですが、最近、想像することを面倒くさがる子が多くなってるから、「ここは自分の解釈でいいんだよ」という投げ方をすると困っちゃうんじゃないか、不親切に感じている子もいるんじゃないか、っていう話を聞いたんですよ。自由に考えていいのって面白いじゃん!と思うんですけど、案外そうでもなくなっているのかも…。でも、あんまり子どもに合わせにいくのも、どうかと思いますね。
しまだ 私は、子どもに合わせるわけじゃないけど、子どもが選んでくれるかどうかの参考に、我が子に見せて意見を聞いちゃったりはします。でも、完全に子どものためにっていうよりは、自分が作っていて楽しいものを作っているかもしれない。やっぱり自分がテンションあがるものを見たい、っていう感じですね。
合田 そうだよね! ただ、自分が作ったものが理解されないかもっていう恐怖は、ぼくもちょっとあるので、「もう少し考えた方がいいかな?」と思うときもあります。けど、やっぱり自分が見てみたいものを作ってますね。作っている人が「面白い!」ってのめり込んでいるのは、作品ににじみ出るだろうって思います。こま撮りは地味な手作業の連続なので、楽しんでいるかいないかが現れそうだなって。
「アニメ『こまねこ』のように、20 年愛され続けられる作品に」
しまだ 劇場公開された『こまねこの かいがいりょこう』、すごくよかったです! 自分が10歳のころ、海外旅行に行ったとき、初めて自分のお小遣いをはたいてテディベアを買って、大切に抱いて帰って来た記憶が蘇ってきて、めっちゃ泣けてきました。
▲相棒のぬいぐるみ、ももいろちゃんとはいいろくんを抱きしめて、海外旅行にワクワクしている、こまねこちゃん。(こま撮りえいが『こまねこの かいがいりょこう』より)
合田 ぼくは逆に、海外にぬいぐるみを連れて行って、どこかに忘れてきちゃったんだよね。どこを探しても見つからなくて、極悪人になったような気持ちになった。
しまだ ぬいぐるみの思い出は心にぐっと残りますよね。
合田 『こまねこ』も、もう作り始めて22年になるので、ぬいるぐみもたくさんの方に手に取っていただいてます。20周年のイベントで、「今も子どもが大切にしています」
ってボロボロのを見せてもらったり、「こまねこにちなんで“こまね”と名付けた我が子が17歳になりました」と紹介してくれたり。
▲ドワーフが作るアニメーションは、喜怒哀楽の表現が細やかで、まるで人形に命が吹き込まれたよう。手間のかかる「こま撮り」の手法が、作品に心安らぐ温かさを与えている。(こま撮り映画『こまねこの かいがいりょこう』より)
しまだ すてきですね!
合田 『ながい ながい おうさまの はなの はなし』も、そういうことが起こり得るわけですよね。お母さんが読んでいた絵本が子どもへ…とかね。代々読みつがれるっていうのが、やっぱり絵本のいいところですよね。
しまだ 長く読みついでもらいたい!
合田 ぜひ、ぬいぐるみ展開も!
しまだ 実はすでに自分で作り始めてて…。
合田 おっ!
しまだ:もう下手すぎるんですけど、どうしても自分でやってみたくなっちゃうんです。でもまだ、じいやの頭を縫っただけで…。おうさまの鼻はわりと早くできそうなんですけど…。
合田 鼻はどこまで長くするんですか?
しまだ 売るときはマジックテープで接続して延長できるようにして、お好きなだけ買っていただくようにしようかな。
合田 すごく長くして首に巻いてもらったりね(笑)。
しまだ 縄跳びしたりとか(笑) いろいろ遊べそうですよね!
「すでに次へと動き出している二人。もしかしてコラボの展開も?!」
――では、最後にお二人の抱負をお聞かせください。
合田 今の仕事をやりながら、映画やいくつかの企画をやっていまして、皆さんにお話しできる日が早く来るといいなっていう感じです。あと、かほちゃんにも、また何かお願いできたらいいな、と日々思っています。
しまだ ぜひぜひぜひ、お願いします!
合田 かほちゃんの今後はどうですかね?
しまだ もちろん新しい作品も作りたいと思っているんですけど、合田さんにとっての
『こまねこ』のように、自分もこの絵本を出版したことで、土台を手に入れた感じがしているので、この作品からどんどん枝葉を広げていきたいとたくらんでいます。考えるのがすごく楽しいんです。
合田 いつかこの絵本に注目が集まって、「今だ!」っていうタイミングが来るような気がします。
しまだ 結局アニメに戻ってしまう自分もいて、気がつくと動かしたくなっちゃって、ちょっと動くだけでもうれしくて…。
合田 アニメーションって不思議だよね。パラパラと動くと『わ、歩いた!』なんて、うれしくなっちゃったりしてね。
しまだ ドワーフで、絵本『パンどろぼう』のアニメを作られていましたよね? 好きな絵本なんです。とても素敵でした…! わたしもいつかドワーフで作りたい!っていうのが夢なんですよ。
合田 でもちょっと鼻、長すぎるかな?(笑)
しまだ そうそう、後ろにもたくさんキャラがいるので、大変なことになりますけど
(笑)。
合田 大変だねえ。じっとさせてるわけにはいかないですからねえ。でもいつかできるといいですね!
しまだ やりましょう!
▲「これからも、楽しいモノづくりをしましょう! いつかぜひ一緒に!」と
誓い合って終わりました。
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