全国的にクマの目撃が相次いでいます。なぜ、この時期にクマの出没が増えるのか、被害を防ぐための課題について専門家に聞きました。
▼親離れしたての子グマ、繁殖活動の雄が活発に
7月5日午後10時頃、大野市の市街地にあるコンビニエンスストアの駐車場で、体長1メートルほどのクマが目撃されました。
県が2024年に実施した調査では、嶺北に755~1136頭、嶺南に271~360頭が生息していると推定されています。県内での2025年度の出没件数は、4月に29件、5月に77件、6月に83件と増え続け、7月は7日時点で25件にのぼっています。専門家は、この時期に出没するクマには特徴があるとします。
クマの生態に詳しい石川県立大学特任教授の大井徹さんに話を聞きました。
Q.秋とは違い、この時期に出没するクマの特徴は―
「親離れした1~2歳の小さめのクマが特に多く、新生活を求めて活発に活動し、人目につきやすい行動を取るため目撃数が増える。次いで多いのが大人の雄のクマで、繁殖期のため活発に活動する」
大野市でクマが出没した場所は、近くに学校があり商店などが立ち並ぶ市街地です。そこで、こんな質問をしました。
Q.市街地にクマが出没することで人的被害の変化は―
「人と山間部の境界線が減っている。1980年代は全国で年間12人程度だったが、2000年以降は年に80人以上、多い年だと百数十人にのぼる」
▼市街地での捕獲には人材育成が急務
増加するクマによる被害の対策として、2024年にクマは計画的に捕獲して頭数を管理する「指定管理鳥獣」の対象となりました。
さらに2025年9月には鳥獣保護法が改正され、市街地にクマが現れた場合、市町村の責任で猟銃を発砲することができるようになります。
しかし、大井さんはこの課題を次のように指摘します。「市街地と山間部で猟銃を打つのとでは訳が違う。市街地で猟銃を撃てる人を育てる必要がある」
県は、2024年に定めたクマの管理計画の中でも、市街地に出没した場合の対応訓練を実施するとしていますが、改正鳥獣保護法が施行されれば、猟銃の使用も含めたより実務的な訓練を実施したい考えです。
また、県民に対しては、クマからを身を守るために▼クマのエサとなる残飯などを放置しないこと▼建物に入り込まないよう戸締りを徹底すること▼山に入る際はラジオや鈴を持参し人間の存在を知らせるなどの対策をとるよう呼び掛けています。