いま“おにぎり”専門店が増えているという。”令和の米騒動”と言われる中で、なぜいま”おにぎり”なのだろうか?

“おにぎり”市場拡大中

『令和の米騒動』とも言われる中にあって拡大を続ける“おにぎり”市場。

おにぎり専門店の店舗数(出展:食べログ)
おにぎり専門店の店舗数(出展:食べログ)
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カカクコムによると、運営する検索・予約サイト『食べログ』に登録された“おにぎり”専門店の店舗数は5年半で1000店以上増加。

また、総務省の調査でもおにぎり等への家計における支出金額は5年間で約1.3倍伸びている。

インタビューに答える人(浜松市内)
インタビューに答える人(浜松市内)

街の人たちに「おにぎりを買うか?」と聞いたところ「 毎週買って朝も食べたり、必需品」「土日の部活動で昼食に買ったり、結構食べる。いろいろな味があるから全然飽きない」「店で買う方がおいしい」など、データを裏付けるような回答が返って来た。

運送業者が新規参入

いま、なぜおにぎりなのか…その背景をヒモトクと…。

『令和のコメ騒動』の最中 2025年5月にオープンしたばかりのおにぎり専門店が静岡県磐田市にある。その名も『おむすびトレーラーすぎざき』

おむすびトレーラーすぎざきの外観
おむすびトレーラーすぎざきの外観

この専門店、実は磐田市に営業所を置く運送会社が運営している。

杉崎運輸の田崎英雄 事業部長は「運送事業は、地域と離れている部分があり、地域に密着したいという思いがあった」とした上で「コンテナの中でやるので、厨房設備もある程度限られた中でやらなければならず、冷蔵庫・コンロ・炊飯器などを考えると、おにぎり専門店ならたくさんの道具がなくても加工ができるので」と説明してくれた。

トレーラー内部の様子
トレーラー内部の様子

異業種ながら、熾烈な“おにぎり戦争”に挑んだわけは何といっても参入障壁の低さ。

日本人に馴染みがある一方で、レストランのような大掛かりな設備は必要なく調理も基本は握るだけ。

また、運送会社のため元々コンテナを所有していたことも大きな要因だった。

地元の具材を使い目指すは“おふくろの味”

とはいえ手軽に参入できるだけに味で心をつかみリピーターを獲得しないことにはこの戦いに勝ち抜くことは出来ない“おにぎり業界”。

この日も朝8時から仕込みをしていた『おむすびトレーラーすぎざき』の田中芳江さんは「客の顔を思い浮かべながら、喜んでもらえるように、笑顔で食べてもらえるように、ひとつずつ作っている」と微笑んだ。

目指しているのは“おふくろの味”。大きさはコンビニエンスストアで販売されているものよりやや大きい120gから130gで、具材は常時10種類以上。

中でも地元・豊岡梅園が手がける20年物の梅干しや北海道産の鮭を使ったおにぎりが売れ筋となっていて、昼時ともなると多くの人が買い求めに訪れる。

常連と思しき男性が「コメがおいしいし、手作りですごくおいしいので従業員の評判が良くて買いに来ている」と話せば、女性客は「1回買って、孫がおいしいって言うから(また来た)」と言い、別の女性も「なかなか周辺に(飲食店が)無いので良い」と評判は上々だ。

コメ価格の高騰が落す影

販売価格は1個220円から300円。ただ、昨今のコメ価格の高騰には不安も抱えている。

トレーラー内で販売中のおにぎり
トレーラー内で販売中のおにぎり

「最初に思い描いていたコメの値段とはかけ離れてしまい、大変苦労した。今後収穫されるものに関しても値段が不透明」と不安を口にするのは杉崎運輸の田中好美さん。

“おむすびトレーラーすぎざき”ではJAと契約し、もちもちとした食感と強い粘りが特徴の冷めても美味しいといわれる県内産の「にこまる」を使用しているが、仕入れ価格の値上がりは、今後覚悟せざるを得ない状況のようだ。

田中さんは「コメの確保自体は継続できるという話をもらっていて問題ないが、値段は高くなるのではと言われていて(にこまるの)価格改定は9月くらいと聞いている」として「心配、不安でいっぱい。大幅に上がらないことを願っている」と率直な気持ちを打ち明けた。

その上で「地域の皆さんに貢献したいという思いで、おむすび専門店を始めているので、なるべく上げないように頑張りたい」と当面の間、値上げには踏み切らない覚悟だ。

「おむすびトレーラーすぎざき」のおにぎり
「おむすびトレーラーすぎざき」のおにぎり

参入の障壁が低いがゆえに新規出店が相次いでいる“おにぎり”業界。現在のコメ価格の高騰が冷や水となるのか…それとも今後も拡大傾向が続くのか。ブームの行方に注目したい。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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