突如、8月1日から、自動車など分野別の関税を除く全ての日本からの輸入品に対し、「25%の関税を課す」とSNSで公開したトランプ大統領。

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4月に発表された相互関税は、一律関税の10%とあわせて24%でしたが、今回示されたのは、それを1%上回るものでした。

あまりにも唐突な知らせに、江戸時代から続く老舗醤油メーカー「笛木醤油」の12代目当主・笛木吉五郎さんは戸惑いの声を上げます。

「笛木醤油」 笛木吉五郎 社長:
4月からもうずっと一喜一憂していて…、本当にトランプさんの発言一個一個、全てに青天の霹靂というか…。

海外での日本食ブームを追い風に、「笛木醤油」では2024年から、米国での醤油販売に力を入れてきました。
最新設備を導入し、研究費用などに、約2億円を投じた醤油が、今、米国で売り上げを伸ばしているといいますが、もし今回の発表通り関税が課された場合、売り上げに大きな影響が出る可能性も…。

「笛木醤油」 笛木吉五郎 社長:
主力の「金笛しょうゆ」という商品が、今サンフランシスコで、日本円で1700円とか1800円で売られているんですよ。
(しかし関税が)25%に上がると、この家庭用のサイズが2000円超えてくるんですよ。販売価格に転化した場合には、米国でも動きが鈍るんじゃないかな。

さらに、売り上げの約2割が米国への輸出というサスペンション部品メーカーの「テイン」は、すでに大きな影響を受けていました。

これまで、米国向けの製品を、主に中国の工場で作ってきた「テイン」。しかし、米中で起きた貿易摩擦の影響などから、生産機能を中国から日本の工場へと移し終えたばかりだというのです。

サスペンション部品メーカー「テイン」
渡邊宏尚 執行役員:

トランプ大統領が就任した時点で、「関税が上がりますよ」ということで、まず中国で生産していたものを日本に移管をしてきたんですね。
向こう(中国)から引き上げてきて、(日本で)米国向け生産をしてきたわけなんですが、そのメリットがほぼなくなってきてしまう…。(工場を)日本に持ってきたわけなんですけれども、結局また中国に戻した方がメリットはあるのかなと。

関税に関するトランプ大統領の新たな書簡の内容に翻弄される、日本企業。

政府は急遽、米国の関税措置に関する総合対策本部の会合を開き、対応を協議。赤沢経済再生担当大臣は、米国のラトニック商務長官と電話で協議し、「1%とはいえ税率が上がることは遺憾である」と伝えたとしています。
さらにベッセント財務長官とも電話協議し、日米間の協議を精力的に継続していくことを確認しました。

上乗せ1%は日本に対する“イライラ分”?

自民党・小野寺五典政調会長も「手紙一枚でこのような通告をすることは、同盟国に対して大変失礼な行為」と憤りをあらわにした、今回の発表。さらに、書簡の中で税率について「たった25%」と表現する部分もありました。

米国政治が専門の上智大学・前嶋和弘教授によると、今回の書簡の内容は“相手をおちょくっている”部分が見え隠れするといいます。

上智大学 前嶋和弘 教授:
文章全体におちょくったところもありますし、「たった25%で我々が被ってきた大きな不公平は直らない」みたいな、そういうニュアンスで、かなり他の国にとってはムカッとする内容。しかも手紙で来ました。このようなことはなかなか外交的にありません。しかも同盟国ですから、なかなかこういうことはしません。

――トランプ政権だからこのような態度を?
上智大学 前嶋和弘 教授:

トランプさんだからというところはあるかも知れませんが、基本的に同盟国・友好国の方が米国からぼってきたと見ているわけですよね。だから、ぼられてきたのが米国なら今度はぼって返すんだと。米国を食い物にしてきたから、今度は他の国を食い物にすると。
だから、同盟国にも容赦がない。そう考えていくと、今回は十数カ国ですが、もっともっと増えていく。

24から25に、この1%をどうとらえるかですが、これはトランプさんの“イライラ分”。日本というのは、最初に交渉して、米国と日本は経済でも安全保障でもつながっているので、米国の言ったことを日本は飲むだろうとくみしやすい相手で、日本から交渉をまとめて他のところをやろうと思っていたところが、全然進んでいないと。
石破茂首相はタフだとか、日本は甘えているとかいろいろ言っていますが、ようするに日本に対するイライラ分を足したと。だから減らなかったわけです。

上智大学 前嶋和弘 教授:
そもそも相互関税の数字って、何が何だか分からない。スタートは46%といわれて、根拠が分からないけど、米国は寛大だから半分の24にしてやると、23ではなく。で、今回が25と、そもそも何なんだろう?と世界各国首をかしげている。
各国の交渉が進んでいないのは、あまりにもいいかげんな数字であることと、米国の中に貿易の国際裁判所があるのですが、これは憲法違反だと。そもそも関税は議会が決めることで、しかもこれは70年代の国家緊急事態の時の法律を無理矢理持ってきてやっているので、大統領はおかしいですよと言っている。
それを見たインドとかは、最初に話をまとめる予定が、逆に報復関税すると。そんな感じで世界各国動いていないわけです。

――トランプ大統領が弱気になるのを待つという手は?
あります。こんな言葉があります、「TACO(Trump Always Chickens Out)=トランプはいつでも弱気になるかもしれない」と。そこは市場がどうなってくるかというところが、非常に大きなポイントだと思います。
(「サン!シャイン」 2025年7月9日放送)