1945年8月、人類初の原子爆弾が、広島と長崎に投下されて80年。未だに苦しみから逃れられない多くの被爆者たちの証言や思いを『絵画』として残す取り組みが、福岡市の大学で行われている。

「言葉だけでは伝えきれない」

真剣な面持ちでキャンバスに向かう学生たち。学生たちが描いているのは、姿があるものの模写ではない。彼らが描いているのは、姿のない『声』だ。

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声の主は、広島や長崎で被爆した人たち。そのかたちのない“人間の声”を学生たちは描いている。

この取り組みは、3年前に『福岡市原爆被害者の会』が「言葉だけでは伝えきれない光景や思いを絵にしてほしい」と九州産業大学に依頼したことから始まったもの。学生たちは被爆者の話に直接、耳を傾け、毎年、8月15日の終戦の日に向けて絵画を制作している。

3年生の山本涼光さんが描いているのは、長崎に原爆が投下された8月9日のひとコマだ。被爆して姉を亡くした女性の思いを筆に込めている。

「女性のお姉さんが、原爆が落ちる瞬間、外が光ったときに『花火だ。きれいだ』って言って窓を開けた瞬間、(女性の姉は)全身、やけどしてしまって亡くなられた」と山本さんは、亡くなった姉について話す妹の言葉を反芻するように語る。

「実際に私がこういう体験をしたら、人に話すどころじゃないなっていう。だから感謝の気持ちも込めて、私はしっかり絵に残していかないとなって思いました」と静かに話しながら山本さんは筆を走らせた。

学生たちの絵は、7月中に完成予定で、8月7日から福岡市市民福祉プラザに展示されることになっている。

(テレビ西日本)

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