悪石島の住民を乗せたフェリーが、まもなく避難先の鹿児島市に到着します。
朝日が照らす中、見えてきたのは鹿児島・十島村の悪石島。
前方には震度6弱の地震の影響でか、崩れ落ちたとみられる土砂が確認できます。
悪石島のやすら浜港で確認できたのは、フェリーの到着を待つ住民たち。
ヘルメットをかぶった人や、大きなスーツケースを持った人、さらに子供たちの姿もありました。
3日夕方、震度6弱の地震が発生した悪石島で希望する住民を対象とした島外避難が始まりました。
次々と船に乗り込む人々。
赤ちゃんを抱いた母親が、島に残る人たちとの別れを惜しむ様子も見られました。
十島村役場によりますと、船に乗ったのは島外避難を希望した0歳から80歳の男女13人です。
島外へ避難する住民:
ドキドキ感があって、いつまた地震が起きるかっていう。眠れないのもあったので、それがもう不安で。
避難者の中には県外から離島留学制度に応募し、悪石島で暮らしていた小・中学生も含まれています。
船は見送りに来た多くの人たちが手を振る中、悪石島をあとにしました。
トカラ列島近海では6月21日から群発地震が続き、震度1以上の地震がすでに1200回を超えています。
避難する住民のうち5人は鹿児島市内の宿泊施設へ、残りの8人は家族が待つ家などに避難する予定です。
避難の期間は1週間をめどとしていますが、十島村は今後も追加の避難希望者を募るとしています。
“日本最後の秘境”とも称されるトカラ列島で続く群発地震。
上空から見ると、揺れの爪痕があちらこちらに残されていました。
海に面した急斜面が崩れ、むき出しになった茶色い山肌。
こうした悪石島の状況を、海の上から発信し続けている人がいました。
悪石島在住・穴澤颯さん:
生存確認ですかね。すごく連絡がくるのでとりあえず生きてますよと。みんながみんなに返信できるわけではないので。
普段は遊魚船で釣り客のガイドをしているという穴澤さん。
3日、震度6弱の地震が起きた瞬間も釣り客とともに海上にいたといいます。
穴澤さんは「きのうまでの予約はあったんですけど、しばらくお客さんは断る」といいます。
ガイドはしばらく休業する考えですが、島から避難ができないという事情がありました。
悪石島在住・穴澤颯さん:
みんながみんな避難できるわけではなく、消防団とかも自分たちでやっているから対応する人が絶対にいないといけない。
希望する住民の島外避難が始まる中でも、離れられない事情があるといいます。
鹿児島・十島村 久保源一郎村長:
発電所もありますし水道もありますし、それから農家にとっては牛もおりますし、離れられない人たちも何人かは残っております。
日本最後の秘境とも呼ばれるトカラ列島。
2009年の皆既日食の際には、最も長く観測できる島として悪石島に多くの人が集まりました。
しかし、今回は続く群発地震の影響が夏の人気イベントにも及んでいます。
トカラ列島の7つの島を2泊3日で巡る島めぐり体験ツアー。
その初回が4日から行われる予定でしたが、ツアーそのものが中止となりました。
8月に第2弾が予定されていますが、実施できるかどうか現時点では未定だといいます。