「考えなくてもプレーができる」。富山商の守備型・総合力の野球で3連覇へ

甲子園出場通算24回、富山県の名門・富山商業高校が夏の高校野球富山大会3連覇を目指す。創部107年の伝統を持つ富商は、2023年、24年と2年連続で甲子園出場を果たしてきた。今年も「聖地」を目指す彼らの戦い方とは何か。
守備から流れを作る伝統の野球

富山商業が貫くのは、守備からリズムを作る伝統のスタイルだ。前﨑秀和監督は「失点が少なければ勝つチャンスが増える。トーナメント戦なので、大勝することよりもゲームをコントロールできる力を持っている方が連勝する力がある」と語る。
春の大会では、準々決勝までの4試合で失点はわずか6。少ない失点に抑えながら、得たチャンスを確実にものにして勝ち上がる戦術が富商の武器だ。
変わりゆくチームづくり

チームをまとめる白川湧大主将は、去年の秋と今年の春に決勝進出を逃した経験から、トーナメントを勝ち抜く「総合力」を重視する。
「秋の敗戦からチームを見つめ直して全員で上下関係の壁をなくして、凄いみんなで声をかけながらやっている」と白川主将。指導法も時代に合わせて変化させている。「今は厳しい声をかけるという時代も変わりつつあって、優しい方が伝わるのかなと思っているので、優しい声かけは少し意識しています」
甲子園での課題を克服するために
昨年の夏、全国ベスト4を目標に臨んだ甲子園で、強豪・東海大相模に完封負けを喫した富商。その悔しさをバネに、チームの課題である打撃力強化に取り組んできた。
「考えなくてもプレーができるというか、そこまで練習をやり込めてきているところが強み」と前崎監督は手応えを語る。

チームの中軸を担うのは、2年生ながらエースで4番を任されている藤岡大翔選手だ。「投手としてはストレートと横に曲がるスライダーが武器、バッターを翻弄したい。打者としては長打力が持ち味」と自信を見せる藤岡選手。「3年生が最後の夏なので、エースとしてこのチームを勝たせて、最後の夏、3年生が甲子園に行って笑って終われるように頑張りたい」と決意を語った。
甲子園経験が生む強い思い

昨年の甲子園を経験した3年生の斉藤樹之選手は、「ランナーがいたら絶対帰そうという気持ちで打席に立っている」と話す。「2年連続で次行けば3年連続が懸かっているが、重圧のある中でもう一度甲子園に行けたらなと思う」と意気込みを見せた。

選手たちを支えるのは、OB会と父母会の存在だ。応援用の横断幕を新調し、先月には入魂式も行われた。選手たちの思いを一番近くで見守ってきた白川主将の父で父母会長の白川邦夫さんは「夏の大会に向けてしっかりと実力をつけてきていると思う。3連覇も懸かっているので、いい結果が出るように頑張ってほしい」と期待を寄せる。
甲子園出場24回の歴史と誇りを胸に、富商ナインはまず県大会3連覇を目指す。初戦は今月12日、富山高校との対戦。守備力と総合力で19回目の夏の甲子園出場へ挑戦が始まる。