宮崎県延岡市・延岡学園女子バレーボール部の元監督、甲斐牧人さん(48歳)が、第二の人生を歩み始めた。バレーボールの世界から、全く未経験の農家へ転身。田植え作業はぎこちないが、自然と向き合う仕事に新鮮さと楽しさを感じている。実家の果樹園では、栗きんとんなどの加工品製造も行う。生産から加工・販売まで手掛ける甲斐さんに密着した。

ぎこちない田植え作業

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のどかな田園風景が広がる日之影町岩井川。

1人の男性が、ちょっとぎこちない様子で田植えを行っていた。

甲斐牧人さん48歳。日之影町出身で、2025年4月に就農したばかりの新米農家だ。

藤﨑アナウンサー:
おはようございます。監督、お久しぶりです! 今日は田植えですね。

甲斐牧人さん:
はい、今日は田植えです。

藤﨑アナウンサー:
私が言うのもなんですけど、結構、苗の並び方がガタガタです…。農作業をやるようになって、どうですか?

甲斐牧人さん:
新たな発見というか、楽しい。今までとは全く違う仕事なので、自然と向き合って楽しい。

実は甲斐さん…

新鍋理沙さんや内瀬戸真実さんなど、日本代表も輩出している名門、延岡学園女子バレーボール部の元監督だ。

コーチ時代を含め13年間チームを指導し、春高バレー全国大会に3度導いた。甲斐さんは2025年3月までチームを率いたあと、両親のいる日之影町で、これまで全く経験のない「農家」として、第二の人生をスタートさせた。

指導するのは父の喜夫さん74歳。

父 甲斐喜夫さん:
ここが空きすぎ。もっと寄せて。植えてる状態を見ながら前も見て。

甲斐牧人さん:
もっとですか?いいですか?

父 甲斐喜夫さん:
ちょっとは良くなったかな。

藤﨑アナウンサー:
どうして監督を辞めて農業をやろうと思った?

甲斐牧人さん:
2024年の2月に親父の心臓の手術が決まって、いずれ農家の跡を継がなくちゃいけないという流れから、2024年度いっぱいで学校の教員を終わって、農家を継いだ。

藤﨑アナウンサー:
バレーボールに対しての心残りは?

甲斐牧人さん:
心残りがないかと言われたら心残りはあるけど、でも精いっぱいさせてもらったので、そこまで悔いはない。

藤﨑アナウンサー:
がらっと生活が変わってしまったと思うが、今の農業をしながらの暮らしはどう?

甲斐牧人さん:
まずは一日一日が新鮮。 知らないことだらけで楽しいと思う。充実してる。

農家の先輩・甥の拓人さんに教えてもらうこともあるという。

藤﨑アナウンサー:
機械で植えられなかった部分は手で直接植えるということで、私も手伝いをすることになった!これ、先生(甲斐さん)が下手すぎて隙間がいっぱいできたからじゃないですよね?

甲斐牧人さん:
そういうことですよ。 はい、鋭いツッコミですね。

藤﨑アナウンサー:
私も田んぼに入らせていただきます。かなり足が取られる。…足が抜けない!

甲斐牧人さん:
かかとから抜くようなイメージで…

藤﨑アナウンサー:
苗はどのくらいずつ取るんですか?

甲斐牧人さん:
5、6束ぐらいつかんで、ざっくりと。

藤﨑アナウンサー:
えっ、どのくらい、さすんですか?

甲斐牧人さん:
えっと…、先輩、これ少し差し込めばいいですよね?

田植えの先輩:
ちょっと入れれば良いです。

藤﨑アナウンサー:
先生(甲斐さん)は、田植えは今年が初めて?

甲斐牧人さん:
小さい頃に幼少期に手伝ったことがあるぐらい。でもそれから40年ぐらいしてない。

藤﨑アナウンサー:
先生(甲斐さん)、植えるの遅くないですか?

甲斐牧人さん:
早!なんでアナウンサーが早いんだ!?

午前中の作業を終えて、お昼休憩。

さきほど田植えした田んぼで取れた「棚田米」で作ったおにぎり。

藤﨑アナウンサー:
おいしい。お米がしっかりしてますね。…これはまだ先生(甲斐さん)が育てたお米ではないですね?こういうふうに育つといいですね。

妻に教わる「栗プリン」

甲斐さんの実家は「マロンハウス甲斐果樹園」。

米や栗、梅などの栽培に加え、県の内外で人気の栗きんとん「栗九里」など、果樹園で採れた果物などを使った様々な加工品を製造・販売している。

この日は、果樹園で採れた栗を使ってプリンを作る。教えるのは妻の美穂さん。

妻 甲斐美穂さん:
火加減はいいですか?早くしないとダマにならないかな?ほら、横についてる、ついてる。泡立て器にもついてる。慎重にやるのもいいけど、もうちょっとスピード感を持って。

慣れない仕事に悪戦苦闘する甲斐さん。美穂さんの目にはどう映っているのだろうか。

藤﨑アナウンサー:
一緒に仕事をするようになって、変化はありましたか?

妻 甲斐美穂さん:
自宅からの行き帰りも一緒、仕事も一緒で、ほぼ丸1日一緒。 今までは本当に一緒にいる時間がなかったので、最初は一緒にいれて嬉しい部分もあったけど、ここ最近はイライラしっぱなしで…!本当に…家でも“お父さん”してないし、家事も手伝わないし、ほんと最低の夫だった。 だけど、監督している時は、すっごく魅力的で、本当に尊敬できるところだったので、私はこの人のことは「ああ、もうダメだ」って思った時は、体育館に行って練習姿を見て「あ、やっぱりこの人はすごい人だ!」って思って家に帰ってた。…それがなくなったんで、どうしよう…。

甲斐牧人さん:
聞こえないことにしておきます…。

甲斐さんの父・喜夫さんは、50歳の時に町役場を辞め果樹園を設立。息子があとを継いでくれることに、自然と笑みがこぼれる。

父 甲斐喜夫さん:
どこでもね、跡継ぎがそっくりそのまま入ってくれるというのはあまりないと思う。そういう点では、もう最高に喜んでおります。1年経って2年経って、どんどん徐々になると思う。期待をしております。 

甲斐牧人さん:
うちは生産・加工・販売までするので、生産したものを加工して、そして実際に売り出した時に「この商品おいしいのよね」と言って買っていただける姿を見たら、すごく喜びがある。それが楽しみにもなっている。すごく田舎だけど、この生まれ育った日之影が好きなので、大事にしていきたいなという気持ちはある。いずれは父を超えてみたいけど、簡単には超えられないでしょうね…。超えられるように頑張ります。

監督から農家へ。

家族とともに挑む甲斐さんの挑戦はまだ始まったばかりです。

(テレビ宮崎)

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