愛媛の夏を彩る祭りの歴史

四季折々の愛媛の夏を彩る祭りの歴史と伝統が、昔の映像から鮮やかによみがえる。

愛媛県松山市の土曜夜市が開幕し、県内が夏のイベントシーズンを迎えるなか、郷土色豊かな夏祭りの記憶をたどる。

郷土色豊かな夏祭り
郷土色豊かな夏祭り
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海の安全と豊漁を祈る伝馬船競争

昭和49年、現在の宇和島市、旧津島町の下灘湾で行われた由良神社の夏祭り。

ここで繰り広げられたのは、小型和船「伝馬船」による勇壮な競争だった。若者たちに担がれた御輿が船に乗り込み、海上を清めた後、いよいよレースの開始である。

15隻の伝馬船が真珠イカダの間を縫うように進み、2キロ先のゴールを目指す。

沿道から地元の人々の大きな声援
沿道から地元の人々の大きな声援

船は抜きつ抜かれつの競争を展開

威勢のいいかけ声が海上に響き渡るなか、船は抜きつ抜かれつの競争を展開した。沿岸からは地元の人々が大きな声援を送る光景は、まさに夏の風物詩といえる。

この伝馬船競争は藩政時代から行われてきた伝統行事だが、戦後は一時途絶えていた。

しかし、この年に30年ぶりに復活を果たし、地域の人々の歓喜を呼んだ。

この年に30年ぶりに復活
この年に30年ぶりに復活

無病息災や商売繁盛を祈る行事

現在の宇和島市、旧吉田町・安藤神社の夏祭りは、無病息災や商売繁盛を祈る行事として知られている。昭和51年の映像からは、当時の祭りの熱気が伝わってくる。

境内に設けられた舞台では、婦人会や子どもたちが民謡や踊りを披露し、参拝客を楽しませていた。

夏祭りの醍醐味そのもの
夏祭りの醍醐味そのもの

「みこしの走り込み」

町を流れる横堀川がたいまつの火に照らし出される頃、祭りのクライマックスである「みこしの走り込み」が始まる。

「わっしょいわっしょい」と威勢のいいかけ声をあげながら、御輿が町を練り歩く様子は、夏祭りの醍醐味そのものである。

威勢のいいかけ声とともに
威勢のいいかけ声とともに

130年続いた「どろんこ祭り」

現在の西予市、旧城川町三嶋神社の「御田植祭」は「どろんこ祭り」の名で親しまれてきた。

田植えが終わった喜びを神に感謝し、五穀豊穣と無病息災を祈るこの行事は、昭和50年の映像にその様子が残されている。

別名、どろんこ祭り
別名、どろんこ祭り

ユーモアたっぷりな神楽

祭りの舞台は神社のそばの水田。10頭の牛が一線になって泥をはねながら田んぼをかく「代かき」から始まる。

田んぼに設けられた演台では、えぼし姿の3人の若者がいたずら者の「大番」を交えて、ユーモアたっぷりな神楽を演じていた。

特筆すべきは、演台上のドロドロとした状況だ。泥でつるつるすべる舞台で、文字通りどろんこになりながらの大奮闘は、見物人を爆笑の渦に巻き込んでいた。

130年もの長きにわたって続いたこの祭りだが、残念ながら担い手不足などの理由から現在は休止されている。

泥でつるつるすべる舞台
泥でつるつるすべる舞台

子どもたちのための手づくり夜市

昭和54年、八幡浜の沿岸部・舌田地区の保育所で開かれた「ミニ夜市」も忘れられない光景だ。

市街地から離れた地区で暮らす子どもたちに夜市の楽しさを感じてもらおうと、保護者らが企画した手作りイベントである。

保護者らが企画した手作りイベント
保護者らが企画した手作りイベント

子どもたちは本物さながらの夜市を楽しんでいた

保育所には「金魚すくい」や「かき氷」「焼きとうきび」など夜市の定番露店が並び、子どもたちは本物さながらの夜市を心ゆくまで楽しんでいた。

最後は八幡浜地域のお祭りソング「てやてや音頭」で踊りの輪が広がり、心温まる手づくり夜市は幕を閉じた。

「金魚すくい」や「かき氷」「焼きとうきび」など夜市の定番露店
「金魚すくい」や「かき氷」「焼きとうきび」など夜市の定番露店

愛媛の夏の風物詩

昭和の時代の夏祭りを振り返ると、それぞれの地域が育んできた伝統と文化の豊かさを改めて感じさせられる。

形を変えながらも今に続く祭りもあれば、担い手不足などの理由で途絶えてしまったものもある。

しかし、映像に残されたそれらの記憶は、愛媛の夏の風物詩として人々の心に生き続けている。

祭りの様子に笑顔がこぼれる
祭りの様子に笑顔がこぼれる
テレビ愛媛
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