茨城で5月、マダニを通じて感染する人獣共通感染症の「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」にかかった飼い猫が確認された。猫の致死率は6〜7割、ヒトは最大3割。三重ではSFTSに感染した猫を治療した獣医師が死亡した。
ペットに迫るマダニ感染症の危機
今や家族同然の存在とも言える犬や猫だが、そのペットを巡る感染症で、死者が出る事態となっている。

真夏のようだった先週と比べ、少し暑さが落ち着いた24日正午ごろ、神奈川県相模原市の公園には多くの人がペットの散歩に訪れていた。
飼い主:
(犬を)11年飼っているんですが、今の時期はこの犬にとってちょうどいい。暑いとだめなので。曇りくらいの方がね。毛皮を着ているような犬だからね。
飼い主:
(名前は)ユキチです。シーズーです。(犬が)子どもの頃からずっと飼っています。家族の一員で、子どもというか、孫みたいな感じです。
ネコを飼っているという家族にも話を聞いた。
飼い主:
家族として、なくてはならない存在になっています。
しかし今、日本で最も飼っている人が多いといわれる猫が、ある感染症にかかり、死ぬケースが増えている。

その原因は公園や庭の草むらなど、ペットが日常的に出入りする場所に潜んでいる「マダニ」だ。

5月、茨城県でマダニを通じて感染する人獣共通感染症の「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」にかかった飼い猫が確認された。
茨城県によると、このネコは1歳のメス猫で室内で飼われていたが、屋外へ脱走後、耳に小さなダニが多数付着していたという。
その後、病院でダニを除去したが、数日後、高熱や食欲低下、嘔吐(おうと)の症状が出た。病院で治療を受けたが、12日に死んでしまったという。
室内飼いの猫にも迫る危険性。ペットを飼っている方は感染症に、どのような対策をしているのか。
猫の飼い主:
なるべく窓を開放しないような感じ。開けても網戸にして出ないように。感染しないような感じで、外に出ない。
犬の飼い主:
マダニの薬を月1回付けて、後は家に帰った後ブラシで。普段歩いている分には犬には付くかもしれないが、人間にはなかなか付かないと思う。犬になるべく付けさせないように。
この感染症はヒトにも感染するウイルスで、その致死率は最大3割に上る。一体どのようなものなのか。獣医師に話を聞いた。

たんぽぽキャットクリニック・椿直哉院長:
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)はマダニが媒介するウイルスの病気で、特に猫だと非常に死亡率が高く、60%〜70%と言われてます。(症状は)発熱、消化器症状、下痢や嘔吐(おうと)などです。
茨城県で死んだネコも同じような症状が出ていて、ペットの感染は関東で初めてとみられている。さらに獣医師は今の時期、特に注意が必要だと指摘する。
たんぽぽキャットクリニック・椿直哉院長:
特に春先から秋口ですね。マダニが活発に動いている時期は特に気を付けないといけない。(猫は)外に出ないが一番だが、ごくまれに人間が靴とかに付けて、自宅に持ち込むこともある。玄関先に猫が行かないようにするとか、そういう対策が家でも必要かなと思う。
イット!は神奈川県の保護猫施設を取材した。代表の石丸さんは、感染症に最大の注意を払っているという。
たんぽぽの里・石丸雅代代表:
最初に保護したら駆虫薬をつける。そのときに全身状態を見てダニがいるときには、ダニに効く薬を先生がチョイスするので言われたものを付ける。
また、犬が感染することもある。その発症数は、猫に比べると低いものの注意が必要だ。
マダニに噛まれる被害は増加傾向
一方、注意すべきなのは人間も同じだ。三重県では、SFTSにかかった猫を治療していた獣医師の男性が呼吸困難などの症状を訴え、病院に運ばれたが数日後に亡くなった。

検査の結果、獣医師はこのウイルスに感染していたことが分かったが、マダニにかまれた痕はなく、感染経路は分かっていない。
国立健康危機管理研究機構によると、2024年の感染報告は120例で、そのうち11人が死亡している。いとう王子神谷内科外科クリニック・伊藤医師に話を聞くと、マダニにかまれるという被害は増加しているという。
いとう王子神谷内科外科クリニック・伊藤博道院長:
本来は地域柄、日本の気候からするとさほど多くなかったが、だんだん地球が暖まってきて、夏の約20℃〜30℃の期間が長くなってきた。これによってマダニの活動する期間が増えて、マダニにかまれて傷を負うという機会が増えている。
万が一、マダニにかまれた場合、どうすればいいのか。

いとう王子神谷内科外科クリニック・伊藤博道院長:
速やかに十分な経過観察と受診、適切な処置。診断がつけば早期治療が望まれると思います。それから、マダニになるべく出会わないように、かまれないように。こういった対策も同時に必要になってくる。今はマダニのその対処方法や、SFTSについて知らない医者は非常に少ない。まず診ていただくという意味では、最も近いお医者さんに飛び込むのもいいのではないか。
ペットだけでなく人間にも感染する場合があるため、夏本番に向けても注意が必要だ。
(「イット!」6月24日放送より)