再びV・ファーレン長崎の指揮を執ることになった高木琢也新監督が就任会見を開いた。「ハードワーク」をキーワードに掲げ、チーム立て直しへの決意を表明。攻撃力を維持しながら失点を減らす戦略と、「ディープワーク」として深く考えてアクションを起こす姿勢を選手に求め、J1昇格への強い思いを語った。
チャレンジしていきたいという気持ちで引き受けた
V・ファーレン長崎は16日に下平前監督を解任し、高木新監督の就任を発表。高木監督は2013年から6年にわたってV・ファーレンの監督を務め、チームをJ1に昇格させた経験がある。

19日に会見に臨んだ高木監督は「チームをしっかり立て直す責任の重さを痛感している。今のチームに変化を与えて、J1を目指してしっかり戦っていきたい」と抱負を語った。
―監督就任の打診があったのはいつか
高木琢也監督:15日の大宮戦の後にお話をいただいた。
―率直な今の気持ちは
高木琢也監督:2023年にV・ファーレン長崎で再びお世話になることになったとき、本当に長崎のためにと思っていたが、今日に至るまで自分の中でうまくできたかというと、全く何もできていないという思いがあった。こういう機会をいただけたのは、長崎のためにまた何かをしたい、それはもう「昇格」しかないので、それをなんとかやっていきたいという気持ち。
今の自分であれば、絶対という数値目標は立てられないが、監督に至るまでの流れの中で、事業のことでお世話になった方もたくさんいる。そういう人たちにも応援していただけるような、より熱く手厚く、V・ファーレン長崎を作っていくきっかけにもなると思う。簡単なことではないが「自分もチャレンジしていきたい」という気持ちで返事をさせてもらった。

―事業担当として外からチームを見ていたのと、監督として練習を間近で見て、チームの課題をどう感じているか
高木琢也監督:今シーズンはアウェイにも帯同し実行委員という立場で見ていて、グラウンドに行くことも何度かあった。外から見ていた選手の技術やスキルは、実際中に入って接してみないと分からないと改めて感じた。今回の発表から就任までの2日間で「この選手たちすごいな」と感じた。
選手たちはいい雰囲気の中で頑張ってくれているし、監督交代という大きな変化があった中でも、自分たちのやることにしっかり向き合えていると思う。スキルの高さも感じている。この選手たちをどういう形で勝利に導いていくのか、それが自分自身の課題になってくると考えている。
今の成績からすると得点32、失点32とイーブンな状態で、得点は取るけど失点も多いという流れが続いている。失点が多い状態を止めていくと、本当にそれでいいのかということもあるし、バランスを見て、練習など等を組み合わせている状況。
―後半戦の戦術やフォーメーションは、これまでの体制を引き継ぐのか、それとも全く新しい高木色を強く出していくのか
高木琢也監督:ハーフシーズンも過ぎ、残りハーフシーズンで全てがいろんな形で動いてきている中で、大きな変化をつける時間は正直ないと思っている。いま選手たちがやっている状況の中に、何かを足していく作業をしたい。それは決して足りないことということよりも、もっとこういうことをするとこれまでやってきたことがもっと良くなるんじゃないか、ということを、いまトライしている段階。
「ハードワーク」=「考えてアクション」
高木監督は、以前指揮を執っていたときには「ハードワーク」をキーワードに掲げていた。このキーワードは今回も健在だと話す。
高木琢也監督:「ハードワーク」という言葉を選手に一番最初に伝えた。皆さんが連想する「ハードワーク」は一生懸命とか泥臭くとか、そういうイメージもあると思うが、ある人から「ハードワークとはディープワーク」だと学んだ。ディープワークとは「考える行動」、つまり深く物事を考えてアクションを起こすこと。日々の練習でも、何が目的でやるのか、どんな意味があるのかを考えずにただ汗をかくだけでは何も生まれない。目的意識を持ってトレーニングするだけで十分意味のある時間を過ごせる。そういう意味での「ハードワーク」という言葉を選手たちに投げかけた。

高木監督は「ハードワーク」で、前半の失点の多さも克服できるのではないかと考えている。
高木琢也監督:おそらく失点にちょっと時間を使ってしまうと、得点が減っていくと思う。失点はコントロールできる数字になっていくかもしれないが、僕自身やっぱり今の選手たちのキャラクターを見た時に、やっぱり攻撃力のあるチームであってほしいし、それは継続してやってほしいので、そこに対してのブレーキはあまりかけようと思っていない。
ではどうやって失点を減らすかというと、一番最初に「ハードワーク」という言葉を選手たちに伝えたと。それは当然トレーニングもするし改善もしようと思っているが、まず試合の中で選手たちが積極的に、ディフェンスはネガティブなアクションなので、それをやっぱりポジティブなアクションに持っていけるように、自分たちの中で考えてアクションを起こしてほしいという思いがあったのでそれを伝えた。プラス、しっかりトレーニングで改善点も伝えながらも、そういう選手たちの本当に自主的なアクションにも期待したい。理想論ではあるが、そこがうまく噛み合ったときに本当に失点も減って、自信もつけてまたこれまでの長崎らしさが多分見えてくるのではないかなと思う。V・ファーレン長崎の攻撃力は維持しつつだ。
長崎はサッカーが似合う街になった
2024年10月に本拠地となる「長崎スタジアムシティ」が完成し、以前指揮を執っていたときとは環境が一変したと話す。

高木琢也監督:長崎はサッカーが似合う街になったと思う。本当にユニフォームを着て街を歩く人たちが増えた。当時はどちらかというとアウェイで着る、芸人さんが着ているということが多かったが、今はクラブの方もユニフォームの売れ行きが良すぎて大変な状況なのかなと思っているが、それぐらい本当に浸透しているなと思う。
組織的にも大きく変わったと実感していると話す。
高木琢也監督:当時いたときもジャパネットの子会社として運営されていたので図式はそんなに大きくは変わっていないが、規模感では正直言うと浦島太郎状態。

本当に自分がいた頃とは全くいろんなものがしっかり整理されて、組織化されていて、すごいなと感じた。スタジアムシティが完成したということで、全てにおいて新しく、そういう意味での新鮮さも含めてそういう場を楽しんでいる状況でもあるかなと思う。
―「昇格のためには絶対に勝たなければいけない」という状況だが
高木琢也監督:チームの勝利というところに集中して、結果として「昇格」がついてくる。それを選手たちに伝えることはあまりない。私自身が事業面などを経験してきたので、もっとV・ファーレン長崎を応援していただけるような活動について、事業の方とも十分話ができると思う。これまでの経験をいかしたい。
―前回監督をしていたときに、ファンサポーターへのメッセージを強く発信されていたが、今回はどうか
高木琢也監督:正直言うと、僕自身の中で監督という役割以外は何も変わっていない。なのでこれまでと同じようにファンやサポーターの皆さんとは、どこまで接することができるのか分からないが、それはクラブ次第だと思う。そういう意味では、本当にファンあってのV・ファーレンを、そして選手のみんなもそうだと思って応援していただけるようなこと、楽しんでもらえるようなこと。そのまず一歩になるのが本当に「結果を残す」こと。まずファンサポーターに楽しんでもらいたいということだと思うので、何も変わらずにやっていきたい。

V・ファーレン長崎はクラブ公認の応援団体登録制度「Revive Team」を採用している。サポーターや団体の「熱狂感」がチームを支えていると言っても過言ではない状況を作り上げている。
高木琢也監督:高田社長を中心にサポーターの様々な団体と話し合いを重ね、サポーターの皆さから本当にいろんな意見をいただき、そこから徐々に大きく変化していったということを私自身も感じている。特にスタンド全体の盛り上がり、ここぞという時の声の張り出し、先日のルヴァンカップで延長戦になって太鼓などを使用できない時間帯になった時の熱狂感はすごく感動した。こういう風景を見るのは初めてだったので、クラブとしてもそういう取り組みをして良かったなと思った。そういう場で意識をしていただいているファンや団体の皆さんに感謝しかない。だからこそ、本当に勝たないといけないと思う。
V・ファーレン長崎は8位で前半戦を折り返した。
高木琢也監督:我々にとってはまだチャンスだと思っている。本来であればもっと差が開いている状況がある可能性もあったはずだが、上位も団子状態になっているので、その目標に関しては特にいま私自身も触っていないし、やはり高い目標を設定した中でこれからも戦っていきたい。
高木新体制は、22日のアウエー熊本戦で初陣を迎える。
(テレビ長崎)