クマの活動が活発になる6月。
2021年6月には衝撃的な出来事があった。
札幌市東区でクマが次々に人を襲った。
市街地での猟銃発砲のルールが大きく変わる。
「猟友会が銃を構えました。いま、発砲しました」(鎌田祐輔記者)

2021年、札幌市東区の住宅街にクマが出没。
次々と人を襲い男女4人がケガをした。
その後、クマは猟友会のハンターに駆除されたが、市街地を縦横無尽に移動するクマに大きな衝撃が走った。

2025年もクマは市街地に出没している。
6月11日、千歳市の住宅街を走行中のタクシーがクマと衝突。
車体が大きく壊れた。

2025年のクマの出没について専門家は。
「長期的にみると増加傾向なので、今年は以前より増加する可能性があるとみて対策するのがいいと思う」(酪農学園大学 伊吾田宏正准教授)

市街地に出没したクマの駆除について2025年4月、法律が改正された。
これまでは市街地や夜間の猟銃の使用を原則禁止。
人が襲われる危険性が高い場合などに限り、警察官がハンターに発砲を命じてきた。
それが、自治体の判断で市街地での発砲が可能となるのだ。

ハンターは今回の法改正を、どのように見ているのだろうか。
北海道猟友会の玉木康雄さんは、ヒグマ防除隊の隊長として最前線に立ってきた。
「現場が今まで混乱していた部分を、かなり整理したのではないか。警察官の臨場がなくても、場合によっては発砲できるという条件が整った。より迅速にハンターは動けるようになったのではないか」(北海道猟友会札幌支部理事 玉木康雄さん)

2019年8月、札幌市南区藤野の住宅街でクマが連日にわたり出没。
家庭菜園のトウモロコシを食べあさるなどして、付近住民を不安に陥れた。
駆除までに長い時間がかかったことから、市街地でのクマの駆除のあり方が問題となった。

今回の法改正により、市街地で駆除は果たして速やかに行えるのか。
玉木さんに札幌中心部にクマが出没したら発砲できるか聞いてみると。
「まず、無理だと思います。見てわかる通り、周辺が硬いものでできています。ここで発砲すれば、どんな射角をとっても跳弾のリスクが避けられないと思います」(玉木さん)
例えば札幌市の大通エリアのような繁華街では、発砲した銃弾が地面などで跳ね返り、人や建物に当たる危険性があるという。
「実際にここでクマが出た場合には、発砲は本当に難しいと思います」(玉木さん)

一方で改正された法律には、銃弾が人や建物などに当たった際に自治体が補償する規定が盛り込まれた。
その点は評価できるという。
「執行命令を出した行政がきちんと補償する、セーフティネットが用意されている」(玉木さん)

実際に発砲の判断を下すことになる自治体。
札幌市はどのように考えているのだろうか。
「環境省がガイドラインを整えているところなので、具体的に何が必要というところはまだわからない」(札幌市環境局 坂田一人環境共生担当課長)
発砲の指示を出す具体的な状況については、まだ固まっていないのが現実だ。
その上で。
「市街地で銃を発砲することは、かなり時間を要する。ハードルが高い条件が整わないことには、発砲できないということになっている」(坂田担当課長)

発砲の判断をするには、専門知識や経験を持った職員の存在が不可欠。
そのような人材の育成が急務となるだろう。
また、いま以上に猟友会などとの連携も必要になる。

「これまで出てこなかった場所にも、クマは出てくる可能性があるというのが教訓になった。遭遇したらどうすればいいか、クマと人間の共生について考えてほしい」(伊吾田准教授)
札幌市東区のクマ襲撃から4年。
市街地での駆除のあり方を整備する一方で、クマを市街地に近づけない方策も重要だ。
