コロナ禍で生まれた縁が今も続いている。オセアニアの島国パラオの巡視船「ケダム」が、鹿児島市での定期メンテナンスのため寄港し、船長らが松枝岩根副市長を表敬訪問した。「パラオではできない修理がここではできる」と船長が語るように、国境を越えた船舶技術の交流が、静かに太平洋の安全を支えている。
コロナ禍が結んだ意外な縁
パラオの巡視船「ケダム」の乗組員と鹿児島大学水産学部の関係者ら10名が、鹿児島市の松枝岩根副市長を訪問したのは2025年5月末。「ケダム」は2025年4月から鹿児島市七ツ島のドックに寄港し、メンテナンス作業を受けていた。

この巡視船と鹿児島市の関係は、2021年に始まった。世界中がコロナ禍に見舞われる中、メンテナンスの受け入れ先を見つけることが難航する状況下で、鹿児島市の施設が快く受け入れた。この時の縁から、「ケダム」は2年に一度、定期的に鹿児島を訪れるようになり、今回が3回目の寄港となった。

日本からパラオへ、守り継がれる船

「ケダム」は2017年に日本財団からパラオに供与された船舶で、日本の支援によって建造され、パラオの海域警備や漁業資源保護などの任務に就いている。日本とパラオの友好関係を象徴する存在でもある。日本海難防止協会の資料によると船名の「ケダム」はパラオ語で「(現地に生息する)軍艦鳥」を意味し、当時のパラオ共和国大統領が命名した。
パラオは南太平洋に位置する人口約2万人の小さな島国だが、排他的経済水域は日本の国土面積を上回る広大さを持つ。この広大な海域を守るために「ケダム」は重要な役割を担っている。
「パラオではできない修理」日本の技術力に感謝

メイス・ギルメリール船長は表敬訪問の際、「パラオではできない修理がここではできるし、とても素晴らしい修理等をしてもらって、大変うれしく思っている」と感謝の言葉を述べた。
日本の技術力で整備された巡視船「ケダム」は6月17日に鹿児島を離れた。今後沖縄で補給したあとパラオに向かう。
当初予定されていた種子島での交流が天候などの都合で中止になったのが惜しまれるが、「ケダム」はこれからも、パラオの海を守るため、大事な役割を担い続ける。
(鹿児島テレビ)