夏の訪れとともに高まる熱中症のリスク。2025年6月から「改正労働安全衛生規則」が施行され、事業者には熱中症対策が義務づけられた。この新たな規則では、暑さ指数28以上または気温31度以上の環境で働く従業員の安全確保が求められている。罰則規定もあり、対策を怠った場合は50万円以下の罰金などが科される可能性もある。建設業をはじめとする屋外作業が多い業種では、どのような対応が求められ、現場はどう変わっているのか取材した。
義務化の背景に重症化防止の狙い
6月1日から「改正労働安全衛生規則」が施行され、事業者には熱中症対策が義務づけられた。
暑さ指数28以上、または気温31度以上の環境で連続1時間以上または1日4時間以上の作業が実施される場合が対象となる。

事業者は熱中症の自覚症状がある人や熱中症のおそれがある人を見つけた場合の連絡体制の整備や、体を冷やして医療機関へ運ぶなど重症化を防ぐ手順を定めることが求められている。
対策を怠った場合は6カ月以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金が科される可能性がある。

岩手労働局の漉磯寿健康安全課長は義務化の背景について「(熱中症の)重篤化を防止するため規則の改正が行われている」と説明した。
建設業が28%、屋外発症が57%
岩手労働局のまとめによると、岩手県内で2024年に熱中症で労働災害と認定された人は平年並みの129人。このうち建設業が28%と最も多く、作業場所は屋外での発症が57%で最多となった。

岩手労働局の漉磯寿健康安全課長は「建設業の場合は屋外が多くなる。直射日光を浴びるところが多い。暑さ指数を確認して、それに合わせた対応をとることが必要」と強調する。
建設現場での具体的な対策
八幡平市に整備が進められている市の交流複合施設「8テラス」の建設現場では、市内の岩手松尾で最高気温28.6度を記録した6月9日も作業員たちが工事を進めていた。

市から工事を請け負う市内の建設会社「遠忠」では、屋外で作業にあたる約30人の作業員にファンで外気を取り込み体温を下げるファン付きウェアを支給している。

現場の搬入口付近には暑さ指数の計測器が設置されているほか、6月からは熱中症になった人が出た場合の対応の手順を示すフローチャートが掲示されていた。

遠忠工事部の荒木彩係長は「熱中症の危険性がある人への対応、行動の順番を示して、さらに周知徹底していくところで、いい改正になったと思う」と評価している。
万が一の時は「迷わず119番」
一方で自分が熱中症になったり症状がある人を見つけたりした場合はどう対応すればよいのか、そのポイントを消防に聞いた。

盛岡消防本部の田沼征輝消防司令長は「涼しい場所に移動することが必要。気温が高い中で倒れる場合が多くあると思うので体を早く冷やすことが必要。衣類を緩めてあげることが必要。ボタンを緩めるとかきている服を緩めることで熱を放散させる効果がある」と説明する。

また、脇または足のつけ根を保冷材や氷で冷やし体温を下げることや、スポーツドリンクなどで水分を補給することで熱中症の重症化のリスクを低減させることにつながるという。
田沼消防司令長は「自分の力で水分補給ができない状態であれば迷わず119番してほしい」と呼びかけている。
(岩手めんこいテレビ)