5月中旬に入り、山陰地方では最高気温が25℃を超える日が続出し、季節先取りの熱さとなっている。また17日から19日にかけては30℃前後まで気温が上昇すると予想され、例年より早めの熱中症対策が必要になってる。
こうした中、毎年全国各地で熱戦が繰り広げられる夏の高校野球。猛暑の中で戦う選手たちを守るため、指導者たちが先日、熱中症対策の説明会に参加した。
「2025年だけで17件」という数字が示す切実な現状を前に、鳥取県の高校野球関係者は「熱中症ゼロ」という目標を掲げ対策に乗り出そうとしている。
2025年夏だけで17件――高まる危機感
4月10日、倉吉市で鳥取県高校野球連盟主催の熱中症対策説明会が開催された。県内の高校野球部の監督をはじめとする指導者約50人が参加し、年々深刻化する猛暑のなかでの試合に備えるための知識と対策を学んだ。
県高野連によると、2025年夏の鳥取大会では選手や生徒に熱中症とみられる症状が17件確認されたという。この数字が示す通り、猛暑下での高校野球における選手の健康管理は、もはや個人の注意だけでは対処しきれない段階に入っている。
県高野連はこの説明会を毎年継続的に開催しており、今回は「大会を通して熱中症0」を明確な目標として掲げている。
「その日の栄養はその日のうちに」――食事と水分補給の科学
説明会の講師を務めたのは、大塚製薬の担当者だ。熱中症対策や栄養補給に関する専門的な知見を持ち、今回は日頃の食事と水分補給の重要性を中心に解説した。
大塚製薬の河相吉紀さんは、食事と発汗の関係についてこう説明した。
「とった栄養はその日のうちに使われている。たくさん汗をかいたときには、その分プラスでとらないと脱水になる」
夏場の練習や試合では大量の汗をかくことが避けられない。しかし単に水を飲むだけでは不十分で、失われた栄養分を補うことが脱水症状の予防につながるという。この考え方は一見シンプルに思えるが、実際の現場では見落とされがちな視点でもある。
また、日頃の食事による身体づくりが夏場の疲労感を軽減するという点も強調された。試合当日だけ気をつけるのではなく、平常時からの積み重ねが選手のコンディションを左右するという発想は、指導者にとって改めて意識を促すものとなったはずだ。
さらに、青森県の高野連などがすでに導入している熱中症対策の商品についても紹介があり、先進事例を取り入れる形で対策の幅を広げる試みが共有された。
「科学の力を理解することが大切」――指導者の意識改革へ
説明会に込められた意図は、単なる知識の伝達にとどまらない。鳥取県高校野球連盟の田村嘉庸理事長はこう語る。
「科学の力をしっかり理解していかないといけないというのは、指導者の方皆さん頭に入れていると思うが、具体的に専門の方の話を聞くことで、意識が高くなると思う」
理解しているつもりでも、専門家の言葉を直接聞くことで意識の解像度が上がる。そのような場を継続的につくることが、選手の安全を守る土台になるという考えが、この説明会の根底にある。
大塚製薬米子出張所の梅野聖士所長も同じ方向性を示す。
「指導者に、まずは熱中症対策や栄養補給の大切さを知っていただくことで、学生の方に伝えていただき、熱中症の搬送者を減らすことができればと思う」
指導者が正しい知識を持ち、それを選手に伝えるという連鎖が生まれてこそ、現場での対策が実効性を持つ。「搬送者ゼロ」という目標は、その連鎖の先にある。
(TSKさんいん中央テレビ)
