「学びたいものを選べる」全国有数の大規模校に見る未来の高校像

この記事の画像(9枚)

千葉県立幕張総合高校では、生徒が200近い選択科目から自分だけの時間割を作り、大学のような自由な学びを実現している。富山県教育委員会が進める「大規模校」構想の参考となるこの学校を取材した。

2200人の生徒が集う"大学のキャンパス”のよう

29年前、3校が統合して誕生した幕張総合高校。総合学科16クラスと看護科1クラスを有し、全校生徒は2200人に上る。学校に一歩足を踏み入れると、その規模の大きさに圧倒される。7階建てのガラス張り教室棟が2つあり、休み時間になると生徒たちが一斉に移動する様子は、まさに大学のキャンパスそのものだ。

「普通の学校なら1から6限までびっしり時間割があるが、選択なので1時間目がない日があるとかそういう場合もある」と山森一輝副校長は説明する。

200近い選択科目から自分だけの時間割を作る

この学校の最大の特徴は「単位制」を導入し、生徒が自分の興味や進路に合わせて科目を選択できることだ。英語以外にもフランス語や中国語を学べる外国語の授業、パソコンを使って作曲を学ぶ「演奏研究」など、多彩な授業が展開されている。

「与えられた時間割のなかで学習するのではなく、本当に学びたいものを選択講座から選んで時間割をつくるというのが2年生3年生の特色。生徒は魅力を感じて入学している」と山森副校長は語る。人気の高さは入試倍率にも表れており、「昨年も1.5倍以上の倍率。ここ数年1.5倍以上を継続的に倍率が出ている」という。

圧巻の施設と42もの部活動

校舎は開校時に新設されたもので、3000人収容のメインアリーナ、温水プール、野球場、400mの陸上トラック、サッカーコートなど充実した施設を備える。特に目を引くのは教室前にそびえる高さ5階建て相当のクライミングウォールだ。全国的にも珍しいこの施設は、ワンダーフォーゲル部が使用している。

運動部と文化部を合わせて42もの部活動と同好会があり、部員数も多く活気にあふれている。「300近くの中学校から全県で入学してくる。仲間づくりも魅力があるのかなと。海外帰国の生徒や外国人の特色化選抜も行っているので、文化の違う同世代の子と学校生活を送ることができ、刺激になっている」と山森副校長は学校の多様性の魅力を語る。

富山県での大規模校構想の行方

県教育委員会は、幕張総合高校のような1学年8クラス以上(320人以上)の大規模校を新設する方針を打ち出している。子どもの数が急減する中での大規模校設置に疑問の声もあるが、教育委員会が行った調査では、高校2年生の間で「学習内容を選択できる仕組みがある学校」への希望が最も多かった。規模を大きくすることで教員配置も増え、授業の選択肢を増やすことができるというメリットがある。

当初は県東部と西部にそれぞれ1校ずつの設置が検討されていたが、最近では「1校に絞り、県内の交通の便のいいところに設置しては」という意見も出ている。今後は1校・2校それぞれの設置を比較し、議論が進められる予定だ。

大規模校の設置には広い敷地も必要となる。現在の県立学校の平均敷地面積は約5万平方メートルだが、幕張総合高校は総合学科の敷地だけでも9万平方メートルに達する。交通の便がよく、十分な広さを持つ場所として、現在の県立高校の跡地利用が現実的だと考えられている。

県教育委員会は9月県議会までに、大規模校の規模・場所・教育内容を盛り込んだ設置方針案を固める方針だ。富山の未来を担う高校生たちにとって、どのような学びの場が用意されるのか、今後の議論が注目される。

富山テレビ
富山テレビ

富山の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。